ソ連の解体から現代ロシアへ至るロシア政治・社会についての概説書 内容:ソ連体制の特徴 ペレストロイカとソ連解体 ロシア連邦の成立 ロシアの憲法、政党・選挙、議会政治、ビジネスと政治、連邦制とチェチェン、ナショナリズムと国民/国家の範囲 冷戦期のソ連外交 現代ロシア外交 日ロ関係 ロシアの軍事力と世界
なお第12章「日ロ関係」は、日本がサンフランシスコ講和条約でいったん南千島(国後島・択捉島)を放棄しているという重要な事実が書かれていないのでお勧めできない。日本がサンフランシスコ講和条約で南千島を放棄していることは、1951年10月19日の国会会議録での西村熊雄外務省条約局長の答弁で確認できる(日本は、後にサンフランシスコ講和条約の「クリル」には南千島は含まれない、日本は南千島を放棄していない、と主張を変更する)。この事実を知っているかどうかで、日ロ関係に対する見方は大きく変わってくるだろう。
また、第5章・第6章で説明されているが、現在のロシアの下院の選挙制度は小選挙区・比例代表並立制(小選挙区225議席・比例代表225議席)である。最新の2021年下院選挙では、プーチン与党「統一ロシア」は49.8%の得票で450議席中324議席(72%)を獲得している。実はロシアはいったん比例代表制を採用したことがあるが、その結果、2011年に「統一ロシア」は450議席中238議席という不振に終わった。当然のことであるが、比例代表制であれば、得票率が50%程度なら50%程度の議席しか取れない。この本ではあまり強調されていないが、小選挙区・比例代表並立制が与党に都合がいい選挙制度であることが明瞭である。この本では指摘されていないが、ロシア下院の選挙制度は、日本の衆議院の選挙制度とよく似ており(日本は小選挙区289・肥大代表176の合計465議席)、与党が約50%程度の得票で圧倒的多数の議席を得るという選挙結果も日本と似ている。
出版社ウェブサイトより紹介を引用
ロシアの政治・社会についての入門書。ソ連の形成・崩壊の歴史を押さえたうえで、現代の政治制度や社会状況、国際関係を学ぶ。世界的に注目される超大国でありながらも、実態がよくわからないロシアという国家を新進気鋭の研究者たちがわかりやすく解説する。
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