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2023年12月21日木曜日

【おすすめ度○】川上泰徳『イスラムを生きる人々 伝統と「革命」のあいだで』岩波書店, 2012年

著者は(出版当時)朝日新聞記者。2012年のエジプト社会(2013年のクーデターの前で、ムスリム同胞団政権の比較的自由だった時期)の中で、イスラム教徒たちがどのように生きているか、イスラム教が社会の中でどういう役割を果たしているかを取材した好著。クーデター後の現在では状況が異なる点には注意が必要。
途中、多くの人に不快と感じられそうな話題が出てくるが、その部分は読み飛ばしてよい。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
人びとに根差した社会のルールとしてのイスラムの姿を,長年取材を続けてきた記者が鮮やかに描き出す.
民衆によって多くの国で独裁政権が倒された「アラブの春」.今その後の民主化を主導するムスリム同胞団などのイスラム勢力に注目が集まっている.いまだ根強い原理主義的なイメージとは異なる,人びとの生活に根差した社会や生き方のルールとしてのイスラムのあり方を,長年中東での取材を続けてきた新聞記者が鮮やかに描き出す.

■著者からのメッセージ
 本書で扱っている事例は,すべて私の個別の取材とインタビューに基づいている.これまで述べてきたように,私は常に「イスラムとは何か」ではなく,「イスラム教徒とは何か」ということを意識してきた.イスラム教徒とは「イスラムを生きる人びと」である,というのが,私なりの答えである.その理由は,私自身がイスラム社会とイスラム教徒に関わりながら,人びとや社会を理解しようと思って手探りをしてきた経過をまとめた本書から自ずと明らかになると思う.(「はじめに」より)


2023年12月17日日曜日

【おすすめ度☆】岡本哲史・小池洋一 編著『経済学のパラレルワールド』新評論, 2019年

「異端派総合アプローチ」と称して、新古典派以外の経済学派(マルクス経済学、ポストケインジアン、進化経済学、レギュラシオン学派等々)のアプローチを解説している。編者の専門の関係上、貿易と開発に関する章が多い。入門書としてはやや難しい。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
本書は、経済学のちょっと変わった入門書です。なぜ変わっているかと言えば、通常、あまり学ぶことのない経済学の異端派学説ばかりを集めた入門書だからです。21世紀の今日、経済学の世界では、新古典派経済学という、効率や競争や均衡を重視するミクロ経済学系統の経済学が主流派として君臨しています。しかし、新古典派が主流派として君臨しているのは、それが唯一無二の正しい経済理論だからではありません。もっと生臭い、政治的な理由ゆえに主流派なのです。簡単に言うと、1990年代の社会主義体制の崩壊以後、資本主義こそが最も優れた経済制度であるとする「資本主義賛美論」が幅を利かすようになり、この過程で、自由放任型の市場競争がいかに効率的であるかを力説する新古典派経済学が、企業経営者や富裕層や保守政治家などの、いわゆる「上級国民様」のニーズに合致して寵愛を受けたため、大学界でそのような研究が増えたのです。他方、競争の「疲弊効果」や貧困や格差問題など、資本主義の暗黒面を指摘するような経済学説は疎んじられ、大学界から徐々に追放されてしまいます。それゆえ、過去30年の間に、大学における経済学教育は著しく画一化しました。1980年代までは、新古典派を含む近代経済学と並行して、マルクス経済学や現代資本主義論や経済学史や経済史などを必修科目として学ぶスタイルが一般的でしたが、現在では、マクロ経済学にしても、ケインズ的な体系が半ば放棄され、ミクロ経済学の応用学問へと変貌し、経済学教育のほとんどが、主流派=ミクロ経済学系統の数学的な科目によって占められるようになったのです。しかし、経済学の世界には、実は、新古典派以外にもさまざまな異端派理論の系譜が存在しており、どの理論にも強い説得力と魅力があります。本書はそうした「大学で学ばない」異端派学説を集め、分かりやすく解説した書籍です。皆さんもぜひ一度、新古典派とは違う「経済学のパラレルワールド(並行世界)」を覗いてみてください。

(編者)

2023年12月14日木曜日

【おすすめ度☆】デボラ・キャメロン『はじめてのフェミニズム』ちくまプリマ―新書, 2023年

多様で複雑なフェミニズムの論点をわかりやすく解説している。人によっては不快と感じられそうな文章もあるが、その部分は読み飛ばして構わない。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
女性にはどんな権利が必要? 「女の仕事」はどう生まれた? 多様で複雑なフェミニズムの議論の歴史を、多様で複雑なまま、でもわかりやすく伝えます。