著者は国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を作成した「人権と超国家企業およびその他のビジネス活動の問題に関する国連事務総長特別代表」を勤めた国際政治学者。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の成立までの経緯とその内容が書かれている。良書だがやや古いのでおすすめ度○にした。
出版社ページから紹介を引用
多国籍企業が各地で繰り返す人権侵害に対して,何ができるのか.国連事務総長の特別代表となった著者は,六年にわたる調査や協議を経て,国家の義務,企業の責任,被害者の救済を柱とする「ビジネスと人権に関する指導原則」を取りまとめた.その経緯をたどりながら,ビジネスの「常識」とすべきこのアプローチの意義を説く.
■編集部からのメッセージ
多国籍企業が進出先で人権侵害を行うケースが後を絶ちません.低賃金労働や児童労働,開発に伴う土地の強制収用,環境破壊や公害,政治腐敗や反対運動弾圧への関与などです.こうしたことが起きたとしても,国境を超える企業活動を規制したり,海外の企業に責任をとらせて被害者を救済したりすることは非常に困難です.
こうした問題について,国連のアナン事務総長は,2005年にハーバード大学の政治学者ジョン・ジェラルド・ラギー氏を「ビジネスと人権に関する事務総長特別代表」に任命し,多国籍企業に対する取り組みと被害者救済を目指す枠組みの作成を委託しました.その難しい課題を引き受けたラギー氏は,6年にわたる様々な調査を経て,「ビジネスと人権に関する指導原則」という文書をまとめました.人権を保護する国家の義務,人権を尊重する企業の責任,被害者の救済へのアクセス,という三つの柱から成るものです.
本書は,ラギー氏が,「指導原則」に到達するまでの紆余曲折をたどりながら,この画期的なアプローチの内容や意義,その実効性について解説するものです.
国連という場で,各国政府や企業,人権NGOといった様々なアクターとのやり取りを重ねながら,それらをどのように巻き込んで国際的なルールを作り上げていったのか,そのダイナミズムを感じさせる叙述になっています.プラグマティズムに根差した粘り強い行動にも学ぶことが多いはずです.
これからのビジネスの〈常識〉とは何かを知ることのできる最適の本です.ぜひご一読いただきたく思います
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