著者の本業はノーベル賞を受賞した物理学者。著者は、過去の自然科学に関する研究を、現代的な「科学的研究方法」に従っていたかという観点から検討する。この本は、科学の歴史の本というより、近代以前の自然研究を題材にして「科学研究とはどういう行為か」を考えるための本である。著者によれば、古代ギリシアの哲学者のうち、デモクリトスの原子論やアリストテレスの自然哲学は「科学的研究方法」に全く従っていないので、彼らの主張がたまたま現代の科学と似ていても、本質的に科学とは無関係である。ただし著者は古代の研究をすべて否定しているわけではなく、(一例を挙げれば)アルキメデスは現代の科学と共通する面があることを指摘している。なお著者は数学と自然科学の違いも強調している。
また著者は、アリストテレスに代表される非科学的な思考方式が近代初期まで強い影響力を維持し続け、科学研究の発展を妨害されてきた一つの原因として、キリスト教やイスラム教などの宗教を挙げている。科学的研究によって明らかにされた事実が宗教の教義の誤りを明らかにするものであったため、宗教は、時には陰湿な方法で科学研究を妨害し、時には公然と科学者を弾圧していた(ガリレオの場合など)。
出版社ページより紹介を引用「1979年のノーベル物理学賞を受賞した著者が、テキサス大学の教養課程の学部生にむけて行っていた講義のノートをもとに綴られた本書は、欧米で科学者、歴史学者、哲学者をも巻きこんだ大論争の書となった。「美しくあれかし」というイデアから論理を打ち立てたギリシャの時代の哲学がいかに科学ではないか。アリストテレスやプラトンは、今日の基準からすればいかに誤っていたか。容赦なく現代の科学者の目で過去を裁くことで、「観察」「実験」「実証」をもとにした「科学」が成立するまでの歴史が姿を現す。」
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