統一教会の(事実上の)教祖である文鮮明の経歴をはじめとして(※現在の統一教会では、韓鶴子が教祖であり文鮮明はその配偶者という位置づけ)、統一教会の教義の形成(その背景にある韓国の民衆宗教)、日本宣教、霊感商法や献金、祝福(合同結婚)と女性信者の韓国での生活、政治との関係、カルト宗教の活動に対する法規制の在り方など、統一教会について多角的に検討している。
この本では、統一教会の教義は、韓国の民衆宗教の教義と、教祖・文鮮明が持っていた強烈な日本の植民地支配に対する反感(恨=ハン)を基盤として形成されたものであることが強調されている。したがってこの本の立場では、統一教会と日本の保守・右翼勢力との間に思想的な共通性はない。
それにもかかわらず、統一教会の創立直後から既に韓国政府(韓国中央情報部KCIA)と何らかの関係があり(44p.)、日本においても1960年代~70年代に勢力を拡大する新左翼学生運動に対抗する保守・右派系の学生運動として統一教会系の原理研究会が利用された。1980年代には、統一教会関連団体の国際勝共連合によって「スパイ防止法制定運動」が展開された(日本における勝共連合の活動は、もともと立正佼成会の信者だった久保木修己が指導した)。信者による選挙の支援なども行われている。しかし、冷戦終結後の1990年代以降、共産主義・左翼勢力が衰退するとともに統一教会の反共政治勢力としての役割も縮小していく。
内容:性・カネ・恨(ハン)から実像に迫る 韓国の民衆宗教とキリスト教 文鮮明の経歴と統一教の形成 統一教の日本宣教 統一原理と学生たち 統一教会による人材と資金調達の戦略 布教・霊感商法・献金の実態 祝福(合同結婚)と韓国の日本人女性信者 政治との関係 法規制 安倍首相銃撃事件
出版社ウェブサイトから紹介を引用
一九五四年、文鮮明によって創設された統一教会。戦後韓国で勃興したキリスト教系新宗教の中でも小規模な教団だったが、日本に渡ったのち教勢を拡大、巨額の献金を原資に財閥としても存在感を強めた。「合同結婚式」と呼ばれる特異な婚姻儀礼、日本政治への関与、霊感商法や高額献金、二世信者――。異形の宗教団体はいかに生まれ、なぜ社会問題と化したのか。歴史的背景、教義、組織構造、法的観点などから多角的に論じる。
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