ベネズエラの混乱、アルゼンチンの長期的没落を中心にして、南米各国におけるポピュリズムの台頭とそれが引き起こす問題点をわかりやすく描いている。著者は、南米大陸での極端な貧困の格差こそがポピュリズム拡大の原因であると指摘している。ポピュリスト政権は、財政規律を無視して貧困層に現金などをばらまくことによって主に貧困層の支持を拡大した。しかしそのようなやり方は持続可能ではなく、いずれ財政危機等の問題が発生してポピュリストは政権を失う(ベネズエラではポピュリスト政権が軍と手を組んで軍事独裁政権化した)。しかし貧困層を放置するような政治が続くと、再びポピュリストが支持を盛り返してくる。
このように筆者はポピュリストと、それに対抗する側の双方を批判するが、それでは貧困の格差をどうやって解消すべきかは述べていない。なお著者はアメリカにも批判的であり、明確な根拠を示してはいないが、ベネズエラのグアイドを「ワシントンの指示通りに動くことしか許されない立場の人間」と断定している(83p)。アメリカの間違った南米への介入が、現地で反米感情を生み、それがポピュリスト支持の一因になっていると考えているようだ。
出版社ウェブサイトから紹介を引用
元現地特派員による渾身のルポルタージュ!
機会の不平等による格差の再生産、貧困の連鎖で、ポピュリズムへの道を突き進む南米。
南米と日本の「不平等と格差」は“程度の問題”に過ぎない。
南米のリアルから日本の危機をも示す警告の書。
目次
序章
第1章 ベネズエラ 「21世紀の社会主義」の崩壊
第2章 アルゼンチン 落日の大国を覆う投票の呪縛
第3章 ブラジル 怒りが揺らす社会秩序
第4章 チリ、コロンビア、ペルー、ボリビア 格差が招く終わりなき混乱
第5章 ポピュリズム大陸から日本への警告
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