最近ではめっきり少なくなったが、数年前まで日本の文化や社会を不自然に礼賛する「日本スゴイ」コンテンツがマスコミなどに氾濫していた。本書は、「日本スゴイ」ブームを読み解くことで、それが政府の政策や、右派運動と密接に結びついていたことを明らかにしている(「日本スゴイ」ブームが退潮したのも、一つの理由は「飽きられたから」であるが、政府の姿勢の変化したことの影響も大きいとされる)。
「日本スゴイ」のように、いわば「煮詰められた」ものになると「これはおかしいんじゃないか」と気が付く人も少なくないだろうが、実は「日本文化論」や「日本社会論」には、単に言葉遣いが高尚なだけで、中身の水準は「日本スゴイ」と大差ないものが少なくない(その中には「大学教授」が書いているものも含まれる)。この本でも、タイの新聞に掲載されたという「日本がアメリカと戦争してくれたおかげでアジア諸国が独立できた」という論説が、実は元の新聞記事の実在を確認できないにもかかわらず、多くの人によってコピーされて喧伝されていることが、調査に基づいて指摘されている。そういったものに騙されないようにするためにも、この本は有用。
出版社ウェブサイトから紹介を引用
「クールジャパン」「観光立国」を始めとする国家的文化政策を筆頭に、書籍・雑誌・ムックからテレビ・ラジオ番組、人材育成セミナーなど、さまざまな媒体を介して社会的に広がっていった「日本スゴイ」コンテンツは、どんな機能をはたしているのか――具体的なエピソードの中から読み解く。
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