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2025年7月22日火曜日

【おすすめ度○】吉川祐介『バブルリゾートの現在地』角川新書, 2025年

住戸ごとに区分所有権を設定するリゾートマンション、区分所有権をさらに多数の「会員」が共有する会員制リゾートクラブ、実質的には共同で利用されている土地を零細規模の土地に分筆して分譲する手法など、多数の出資者を集めて投機的なリゾート開発をするさまざまな手法のルポルタージュ。リゾート施設の運営が順調な時はこのような仕組みでも問題が表面化しないが、経営が行き詰った時や、施設が老朽化して大規模修繕・改修が必要になった時に、このような仕組みではうまく対応できず、結果として施設を廃止・解体することもできずに廃墟化している事例が多数紹介されている。不動産に関する法制度、さらに進んで民法に関する関心を高めるための入り口としても有用。なお本書の題名は「バブルリゾートの現在地」になっているが、取り上げられている事例の多くはバブル期(1986年~1991年)より前に開発された事例(つまり、現在では築後40年が経過し、老朽化が進んでいる事例)である。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
バブル期に大量に建設されたリゾートマンション、会員制リゾート――
・アクセス難で苗場のマンションが10万円
・40平米の1Rマンションを見ず知らずの20人で所有
・リゾートホテルの建物が1250分割、ワンフロアが200分割――権利が切り刻まれて身動きが取れない不動産
・東京都湯沢町、バブル期にマンションを建てまくったデベロッパーも多くが倒産、解散
・もはや地面の切れ端…14平米に満たない狭小地で分割され販売された別荘タウン
・権利分割して建てられていたホテルが今や有名な廃墟スポットに
・解体費用は、地方自治体…? 地元の巨大なリスクに

あまりに度を越した濫用が横行したために、今となってはその乱売された「権利」が、購入者にとってなんらの価値も生み出さないどころか、ただ義務と責任ばかり発生するだけのお荷物と化している。電気、水道といった施設の利用に必要なインフラはすべて止められ、一切の修繕が行われない建物は老朽化するばかりだ。当の所有者本人ですら利用が不可能な状況に陥っているのに、他者の権利に阻まれ、解体もできなければ売却もかなわない。なんの解決策も取られないまま、ただ毎年固定資産税が課税され続けている。こんな理不尽な話があるだろうか。(本文より)

1970年代、都心の土地価格の高騰に伴い、ターゲットにされた新潟県湯沢町。バブル期のスキーブームもあり、多くのリゾートマンションや会員制ホテルが建設された。今なおきちんと管理され、人々の生活を潤すマンションがある一方で、大幅に価格が低下したり、法律の濫用により身動きが取れなくなった施設が存在している。千葉県北東部の「限界ニュータウン」に住み、不動産問題を調査報道する著者が、リゾート物件の現状を伝える



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