勝俣恒久・東京電力元会長らに13兆円余りの損害賠償を命じた東京電力株主代表訴訟の原告による解説。かなり予備知識が必要な本だが、株主代表訴訟の仕組みと実態がよくわかる。2002年の地震調査研究推進本部(推本)の「長期評価」で福島第一原発に大津波の危険性があることが指摘されていたにもかかわらず、東京電力が津波対策を怠ったことなどが明らかにされている。13兆円の賠償額の内訳は①廃炉と汚染水対策にかかった費用1兆6150億円、②被災者に対する曽なぎ賠償として支払った費用7兆0834億円、③除染・中間貯蔵対策に要した費用4兆6226億円を合計した13兆3210億円。
なお、著者の一人である河合弘之弁護士は、熱海の土石流事件を扱った『残土の闇』では、土石流の原因となった土地所有者の顧問弁護士として登場する。河合弁護士はそういう「際どい案件」を扱う弁護士でもある。
出版社ページより紹介を引用
福島第一原発事故は防ぐことが可能であった!
原発事業者としての義務を怠った東電役員を断罪した歴史的判決はどのようにして勝ち取ることができたのか。
弁護団による迫真のドキュメント。
「被告らの判断及び対応は、当時の東京電力の内部では、いわば当たり前で合理的ともいい得るような行動であったのかもしれないが、原子力事業者及びその取締役として、本件事故の前後で変わることなく求められている安全意識や責任感が、根本的に欠如していたものといわざるを得ない。」(判決文より)
◆「はしがき」より
東電役員に13兆円3210億円の損害倍書を命じた判決は、あらためて、福島原発事故がいかに大きな被害をもたらしたかを、明らかにしました。そして、東電の旧経営陣がきちんとした津波対策を取っていればこの事故を防ぐことができたこと、東電の役員には根本的な安全意識が欠落していたことを判決は厳しく指弾しています。
また、判決は、原発事故はひとたび起きると「地域の社会的・経済的コミュニティの崩壊ないし喪失を生じさせ、ひいては我が国そのものの崩壊にもつながりかねないものである」とまで述べています。つまり、この判決は、福島原発事故が、とんでもない役員の不注意によって発生した人災であり、まかり間違えば国そのものの崩壊につながりかねないものだったことを明らかにしたものなのです。
私たちは、この判決が事実の認定においても、法律的な論理においても、正当なものであると考えています。本書の出版は、このような素晴らしい判決が、どのような裁判、どのような証拠調べの結果として言い渡されたのかを明らかにし、この判決を東京高裁でも、最高裁でも維持されることを願い、多くの市民の皆さんからの理解を得たいと考え、企画されました。
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