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2023年10月18日水曜日

【おすすめ度○】竹内康雄『環境覇権 欧州発、激化するパワーゲーム』日本経済新聞出版, 2023年

欧州グリーンディール、カーボンプライシングなど最新のEUの気候変動への取り組みを詳しく取材した良書。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻のなか、環境問題対応を加速し、世界をリードする欧州。「安全保障色を強めるグリーンニューディール」「欧州に世界が追随するカーボンプライシング」「排出削減の切り札・水素をめぐる技術開発と世界標準化競争」「1京円のカーボンゼロ・マネー争奪」など、対立とルールづくりのパワーゲームを活写する。
著者はパリ、ブリュッセルで長年このテーマを取材してきた日経記者。


2023年10月16日月曜日

【おすすめ度●】油本真理・溝口修平 編『現代ロシア政治』法律文化社, 2023年

ソ連の解体から現代ロシアへ至るロシア政治・社会についての概説書 内容:ソ連体制の特徴 ペレストロイカとソ連解体 ロシア連邦の成立 ロシアの憲法、政党・選挙、議会政治、ビジネスと政治、連邦制とチェチェン、ナショナリズムと国民/国家の範囲 冷戦期のソ連外交 現代ロシア外交 日ロ関係 ロシアの軍事力と世界
 なお第12章「日ロ関係」は、日本がサンフランシスコ講和条約でいったん南千島(国後島・択捉島)を放棄しているという重要な事実が書かれていないのでお勧めできない。日本がサンフランシスコ講和条約で南千島を放棄していることは、1951年10月19日の国会会議録での西村熊雄外務省条約局長の答弁で確認できる(日本は、後にサンフランシスコ講和条約の「クリル」には南千島は含まれない、日本は南千島を放棄していない、と主張を変更する)。この事実を知っているかどうかで、日ロ関係に対する見方は大きく変わってくるだろう。

 また、第5章・第6章で説明されているが、現在のロシアの下院の選挙制度は小選挙区・比例代表並立制(小選挙区225議席・比例代表225議席)である。最新の2021年下院選挙では、プーチン与党「統一ロシア」は49.8%の得票で450議席中324議席(72%)を獲得している。実はロシアはいったん比例代表制を採用したことがあるが、その結果、2011年に「統一ロシア」は450議席中238議席という不振に終わった。当然のことであるが、比例代表制であれば、得票率が50%程度なら50%程度の議席しか取れない。この本ではあまり強調されていないが、小選挙区・比例代表並立制が与党に都合がいい選挙制度であることが明瞭である。この本では指摘されていないが、ロシア下院の選挙制度は、日本の衆議院の選挙制度とよく似ており(日本は小選挙区289・肥大代表176の合計465議席)、与党が約50%程度の得票で圧倒的多数の議席を得るという選挙結果も日本と似ている。

出版社ウェブサイトより紹介を引用
ロシアの政治・社会についての入門書。ソ連の形成・崩壊の歴史を押さえたうえで、現代の政治制度や社会状況、国際関係を学ぶ。世界的に注目される超大国でありながらも、実態がよくわからないロシアという国家を新進気鋭の研究者たちがわかりやすく解説する。



2023年10月15日日曜日

【おすすめ度○】山口智美・斉藤正美 ポリタスTV編『宗教右派とフェミニズム』青弓社, 2023年

選択的夫婦別姓反対、「女性活躍」、官製婚活、プロライフ(妊娠中絶禁止運動)、自民党改憲案、性的マイノリティ、「歴史戦」など、安倍政権下で進められた政策と宗教右派(右翼的な新興宗教)の関係を明らかにしている。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
2022年7月8日に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件。
これを受けて企画・配信された『ポリタスTV』の「宗教右派と自民党の関係――ジェンダーと宗教」(前篇・後篇)は、5日間限定の無料公開で10万回以上再生され、大きな反響を巻き起こした。
この配信コンテンツをもとに、全編書き下ろしでジェンダーやセクシュアリティ、家族をめぐる政治、それと宗教右派との関わりをまとめるのが本書である。
1990年代から2000年代初頭のバックラッシュから、安倍政権以後の家族や女性やLGBTをめぐる政策と右派・宗教との関係までを、具体的な政策や運動、テーマにフォーカスして解説し、フェミニズムの立場・視点から問題点を検証する。
知られざる宗教右派の実像と1990年代から現在まで続く苛烈なバックラッシュの実態を明らかにする問題提起の書。




2023年10月13日金曜日

【おすすめ度○】野口俊邦『森林・林業はよみがえるか』新日本出版社, 2016年

「緑のオーナー制度」は、国(林野庁)が国民から広く資金を集めて国有林経営に投資する制度だったが、結果として経営に失敗し大幅な元本割れとなった。この本は、この「緑のオーナー制度」に関する裁判を通して、国有林経営の問題点を分析している。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
林業人口の中の若年者率の増加、防災やエネルギー面での期待……近年、注目を集める森林。その再生には、林業の採算性を悪化させてきた外材依存政策、失政を重ねてきた国有林政策など負の遺産を乗りこえる必要がある。国有林をめぐる国家的詐欺ともいうべきある事件の検証を通じ、「負の遺産」を知り打開の道を探る!

【おすすめ度○】山岡淳一郎『ドキュメント感染症利権 医療を蝕む闇の構造』ちくま新書, 2020年

北里柴三郎の評伝(東京大学関係者との対立など)、731部隊の成立から関係者の戦後まで、日本の結核・ハンセン病隔離対策の誤り、世界的なエイズ・SARS対策の問題点など。北里柴三郎の評伝についてはともかく、それ以外の部分では率直に言って著者自身の取材はあまりされておらず、既存の本の要約のような内容が大部分を占めている。いろいろな本の要約が新書で手軽に読めるという点で「便利な本」ではあるのでおすすめ度○にしておく。
なお、題名や副題(『ドキュメント感染症利権 医療を蝕む闇の構造』)と内容があまり関係がない。本の中身が薄いと、かえって題名や副題が過激になるのかもしれない。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
医療に巣喰う利権の闇。情報統制、医学界の学閥、縦割り行政、731部隊人脈、……新型コロナ感染爆発はじめ感染症のウラで蠢く邪悪な構造を白日の下に暴く。
救命か、金儲けか。新型コロナ感染爆発に際して露わになった、危機下における医療と政治のせめぎ合い。政官財学の構造的絡まりによる邪悪な「利権の闇」「見えない壁」が立ち現れ、救命のための公平な医療を阻む。明治・大正期の公衆衛生の草創期、「七三一部隊」にみる医学の暴走と悪用、戦後医療界に残った細菌戦人脈、官僚主義と隔離政策の誤謬、グローバル化する薬の特許とバイオテロ…。近現代日本とともにあった感染症のウラで蠢く黒い構造を、白日の下に暴く。


2023年10月9日月曜日

【おすすめ度○】十市勉『再生可能エネルギーの地政学』エネルギーフォーラム, 2023年

再生可能エネルギーに関する世界各国の政策の紹介。関連する重要鉱物に関する考察も書かれている。

出版社ウェブサイトから目次の紹介
ウクライナ戦争で加速するクリーンエネルギー移行!
どうする日本!?

はじめに
第1章 なぜ再生可能エネルギーの地政学が重要か
1―1 「パリ協定」で加速する世界の脱炭素化
1―2 相次ぐ世界主要国のカーボンニュートラル宣言
1―3 世界で急拡大する再エネ開発と躍進する中国
1―4 再エネ投資が急増する背景
1―5 ウクライナ戦争で加速するクリーンエネルギー移行
1―6 エネルギー移行で浮上する新たな地政学リスク
1―7 新旧のエネルギー地政学リスクが連動する時代
1―8 資源輸出国で期待が高まる水素・アンモニア
第2章 再生可能エネルギーの地政学リスク
2―1 化石燃料と比較した再エネの地政学リスクの特徴
2―2 再エネ開発に欠かせない重要鉱物
2―3 高まる重要鉱物の供給不安と中国の影響力
2―4 重要鉱物の地政学リスクとその軽減対策
2―5 再エネ技術を巡る新たな地政学リスク
2―6 脱炭素化で誘発される保護貿易主義のリスク
2―7 再エネの「スーパーグリッド」構想と地政学リスク
第3章 石炭大国の中国はエネルギー移行の「勝ち組」に
3―1 今や中国は低炭素技術のトップランナー
3―2 中国の脱炭素化の「3060目標」とその狙い
3―3 脱炭素化と電力安定供給のジレンマに直面
3―4 石炭大国である中国の弱みが強みに
3―5 中国にとって石油・天然ガス市場で影響力拡大の好機
3―6 エネルギー移行で「勝ち組」の中国と「負け組」のロシア
第4章 脱炭素・脱ロシアを目指すEUのエネルギー政策
4―1 際立った違いをみせるフランスとドイツの電源選択
4―2 欧州グリーンディールと高まる再エネへの期待
4―3 ドイツが先導する国家水素戦略とEUタクソノミー
4―4 ウクライナ危機で脱炭素・脱ロシアを目指す「リパワーEU」
4―5 EUの炭素国境調整措置とグリーン貿易摩擦リスク
4―6 英国の脱炭素化とエネルギー安全保障戦略
第5章 始動する米国のクリーンエネルギー戦略
5―1 バイデン政権発足で一変する気候変動政策
5―2 2つの重要法案を成立させたバイデン政権
5―3 インフレ抑制法における主要な気候変動対策
5―4 導入支援策で急増する太陽光発電と風力発電
5―5 期待が高まる水素の導入拡大とCCS関連プロジェクト
5―6 気候変動対策に不可欠な原子力発電
5―7 EVを巡り表面化するグリーン貿易摩擦
第6章 中東産油国は水素・アンモニアの輸出大国に
6―1 世界の脱炭素化と中東産油国
6―2 エネルギー移行と中東産油国のリスクとチャンス
6―3 サウジアラビアの再エネと水素・アンモニア開発
6―4 クリーンエネルギー開発で中東をリードするUAE
6―5 グリーン水素ハブを目指すエジプトとオマーン
第7章 インド太平洋地域のクリーンエネルギー開発
7―1 急務となるインドのクリーンエネルギー開発
7―2 経済発展が続くASEANの脱炭素政策
7―3 豪州は再エネと重要鉱物資源の豊富な国
7―4 グリーン水素・アンモニア大国を目指す南米のチリ
7―5 韓国の尹政権は脱・脱原発政策へ転換
第8章 脱炭素電源の原子力を巡る地政学
8―1 なぜ原子力を巡る地政学が重要なのか
8―2 原子力は脱炭素化とエネルギー安全保障の両立に不可欠
8―3 ウクライナ戦争で強まる欧州の原子力利用拡大の動き
8―4 ロシアと中国の原子力輸出を巡る地政学
第9章 新たなエネルギー地政学と日本の国家戦略
9―1 日本のエネルギー政策の変遷と脱炭素化が最優先課題に
9―2 再エネの地政学と国家エネルギー戦略を考える視点
9―3 アジアの脱炭素化と日本の国際戦略
9―4 GX投資と低炭素技術の産業競争力の強化
9―5 再エネの主力電源化と克服すべき課題
9―6 再エネVS原子力の「二項対立」からの脱却を
あとがき

【おすすめ度●】松里公孝『ウクライナ動乱』ちくま新書, 2023

本書の内容は、「ウクライナの問題は、第一義次的にはウクライナの問題だということである」(484p)という文章にまとめることができる。ロシアのウクライナ侵攻を招いたウクライナ政治の問題点を分析した本。著者は、ロシアとウクライナの対立のエスカレーションを防ぐ可能性があった6つのチャンスがあったことを挙げているが(336p)、いずれも生かすことはできなかった。
 日本が、中国との戦争を避けようと思ったら、中国との対立がエスカレーションしないようにしないといけない。そのために何をすべきか、この本の内容は参考になる。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
冷戦終了後、ユーラシア世界はいったん安定したというイメージは誤りだ。ソ連末期以来の社会変動が続いてきた結果としていまのウクライナ情勢がある。世界的に有名なウクライナ研究者が、命がけの現地調査と一〇〇人を超える政治家・活動家へのインタビューに基づき、ウクライナ、クリミア、ドンバスの現代史を深層分析。ユーロマイダン革命、ロシアのクリミア併合、ドンバスの分離政権と戦争、ロシアの対ウクライナ開戦準備など、その知られざる実態を内側から徹底解明する。

2023年10月4日水曜日

【おすすめ度○】大野輝之『自治体のエネルギー戦略』岩波新書, 2013年

著者は東京都庁の幹部職員。題名は「自治体のエネルギー戦略」であるが、内容は気候変動対応について書かれている(そもそも都内にエネルギー資源がほぼ皆無であり、エネルギー自給率がゼロの東京都で文字通りの「エネルギー戦略」を論じてもほとんど意味がない)。アメリカ自治体の気候変動対策(ニューヨーク市、RGGI、カリフォルニア州など)を踏まえて、東京都キャップアンドトレード制度の形成過程を説明している。
私の個人的な意見であるが、実は東京都庁そのものには東京都キャップアンドトレード制度が適用されていない。だから東京オリンピックのような排出量を増やす事業が自由にできる。都民には排出抑制を要求する一方で、東京都庁が排出量を増やすことをやっているのはいかがなものかと感じる。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
待ったなしのエネルギー問題をどうするか.そのヒントが東京都の実践にある.都庁政策担当者の報告と提言.
待ったなしのエネルギー問題をどうするか.そのヒントが,「気候変動対策」で国家に先んじCO2排出総量削減制度を導入した,東京都の実践にある.経済界,電力会社等の反発をどう合意へと変え,エネルギー大量消費型都市からの転換に挑んだか.アメリカの都市・州の事例も紹介しつつ,自治体での可能性を都庁政策担当者が語る.


【おすすめ度●】粟屋剛『人体部品ビジネス』講談社, 1999年

アメリカの人体部品取引、フィリピン・インドの臓器売買の実態、人体部品ビジネスの法哲学など。良書だが古いのでおすすめ度は●にした。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
すでに事態はここまできている!
このレポートを前に、あなたはいったい何を考えるか。
心臓弁が6950ドル、アキレス腱は2500ドル。提供された人体組織を加工して急成長するアメリカ産業。刑務所や病院を舞台にしたフィリピン、インドの腎臓売買。いまや臓器が「商品」となり、脳死体は「医療資源」と化す。テクノロジーと資本主義の行き着く果てを見つめ、倫理を問う。


【おすすめ度●】岩崎俊博 編『地方創生に挑む地域金融』金融財政事情研究会, 2015年

著者は野村資本市場研究所関係者。地方行政に関わる地域金融機関の最新の取り組みに関する論文集。アメリカの事例が多い。 内容:人口減少から財政破綻に至ったデトロイト市の教訓 米国の地域教育資金形成制度 ヘルスケアREIT 空き家有効活用 ソーシャルインパクトボンド 地方債改革など


出版社ウェブサイトから紹介を引用
「まち・ひと・しごと創生」のために金融・資本市場ができる貢献は何か   
急激な地方人口の減少に警鐘を鳴らした増田レポートの提言実現に向けて、わが国を代表する金融専門政策シンクタンクが総力をあげて、以下の4つの枠組みから現状を分析し、具体的なソリューションを提示する。   
(1) 個人金融資産の動きとライフ・プランニング
(2) 地域金融機関のビジネスモデル改革
(3) 地域活性化への金融ソリューション
(4) 産業関連の地方創生施策