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紹介する本が増えてきたのでまとめます。 【テーマ別一覧】 気候変動問題に関する本 公害問題と食の安全に関する本 医療や生命、バイオテクノロジーなどに関する本 地域づくりと地方自治に関する本 水問題(水資源、上下水道、水汚染、治水など)に関する本 原子力と核兵器に関する本 陰謀論、...

2025年12月22日月曜日

【おすすめ度●】西川芳昭『作物遺伝資源の農民参加型管理 経済開発から人間開発へ』農山漁村文化協会, 2002年

農民、NGOやNPO、公的機関が協力しながら遺伝資源(作物の趣旨)を守る方策について考察する良書。内戦後のルワンダでの農業の再生など切実な主題もある。良書だが古いのでおすすめ度●にした。 内容:遺伝資源と参加型開発をめぐる世界の現状 開発における作物遺伝資源 作物遺伝資源管理のシステムを担うNGO・NPO 作物遺伝資源管理における公的研究機関と農民の共同 ジーンバンクの役割 作物遺伝資源管理と技術協力のパラダイム転換

出版社ウェブサイトから紹介を引用
その多くが農民によって作出・継承されてきた作物遺伝資源は、持続的農業を行なっていくための最大の資産である。これを専門家だけの手にゆだねるのでなく、NPOや農民の参加を含む多様な利用・管理のあり方を提唱する。
 作物遺伝資源は持続的農業を行なうための最大の資産であるばかりでなく、緑の革命を実現させるための必要要因でもある。その多くは世界各地の農民によって、それぞれの環境の中でつくりだされ、継承されてきた。
 本書は、これを研究者・専門家だけの手にゆだねるのでなく、NGO、NPOや農民の参加を含む利用・管理の多様なあり方を探求・提言している。それは国際協力における「経済開発」至上主義から地元民の参加を通じて人々の能力を高める「人間開発」主義へという国際的潮流に沿っている。



【おすすめ度☆】東賢一, 水越厚史『事例で読み解く環境汚染と健康リスク』朝倉書店, 2025年

環境汚染の健康影響に関する教科書。科学的エビデンスや予防原則など、この問題を扱う基本的な方法論についても学べる。それと同時に、関連する社会制度についても開設されている。 内容:環境汚染と健康影響の基礎 日本の公害 各種環境汚染による健康影響 環境汚染の評価と対策 科学的エビデンス 予防原則

出版社ウェブサイトから紹介を引用
過去に起きた環境汚染の事例や施策をとりあげ,公衆衛生・予防医学の視点に立って,人々の健康を守るために必要な知識をまとめた1冊.医学・医療分野,環境分野の学生や実務者にお薦め.
世界保健機関(WHO)によると,2016年における世界の全死亡や疾病負荷の約4分の1は,環境リスクに起因すると推算されている。また,世界の疾病負荷研究において,環境および職業関連のリスク因子の占める割合は,2021年の世界の死亡数の約2割,全障害調整生存年の14.4%と推算されている。これらの推計は,環境が人の健康に多大な影響を及ぼしていることを示すと同時に,WHOのメッセージにあるように,環境を改善することで,人の健康を促進できることを示唆している。すなわち,環境汚染による健康リスクを低減する取組みは,人の健康に著しい貢献をする可能性を秘めている。
影響の大きさに加え,社会との関係性の観点から,環境を改善することの重要性と留意点について考える。社会は,豊かで便利な生活を実現するために環境を改変し,その変化が人の健康にさまざまな影響を及ぼしてきた。近年,新たな技術の開発やそれに伴う産業の発達により,社会は加速度を増しながら変化している。同時に,我々の生活を取り巻く環境も急激に変化し,人々の健康に多大な影響を及ぼしている。多くの変化はベネフィットだけではなくリスクを含む。環境に起因する健康リスクを低減することは,利便性を追求して加速する社会の持続性を担保するために必須であり,現代社会における責務といえる。また,環境や社会は,地域や集団としての分布をもつことから,健康影響は,脆弱性の高い地域や感受性の高い集団において,顕著に表れる。そのため,このような分布も考慮して環境を改善していく必要がある。
以上を踏まえ,本書では,環境汚染による健康リスクの低減を目標とし,そのための方法について学ぶ。本書の特徴は,公害や環境汚染などの具体的な事例を読み解いていく点にある。第3章の事例は,原因とその特徴,健康影響,施策といった共通の項目で解説されているため,異なる事例のなかにも通底する課題の構造や力学,対応について気づくことができるような構成となっている。これから取り組むべき環境汚染の課題についても,その構造や力学を類推し,どのように対応していけばよいか考察できるようになることがねらいである。なお,気候変動や新型コロナウイルス感染症はいわゆる環境汚染とは異なるが,類似した構造と力学があり,示唆に富む対応がなされてきたため,環境に起因する健康リスクの事例として本書に含めた。
本書のもう一つの特徴は,健康リスクを軸として議論している点である。健康リスクは,有害性とその確率を考慮した値であり,課題を客観的に表現し,ほかの多種の健康リスクあるいは異なる価値観との比較を可能にする。本書ではすべての事例において,健康リスクに関して,その考え方を適用できるかどうかも含めて言及した。また,事例の後の章では,この健康リスクを軸として,課題の発見から評価,健康リスクに基づいた対応,リスクの認知を考慮したリスクコミュニケーション,不確実性がある場合の予防的取組み(いわゆる予防原則の考え方)に至るまでの一連の流れを網羅的にまとめている。個々の事例を知ったのちに,共通する健康リスクの考え方を学ぶことで,事例を横断的な視点で眺め,理解を深め,より実践的な考え方を身につけることができる。
本書の構成について述べる。第1章「環境汚染と健康影響の基礎」では,本書の基礎となる学問分野の公衆衛生の考え方について解説し,予防医学や環境保健のアプローチを紹介することで,本書における重要項目を要約し,後の章への導入とした。第2章「日本の公害」では,環境汚染の理解の原点となる日本の公害の代表的な事例について,事実の紹介にとどまらず,なぜそうなったのかといった背景や経緯の考察も含めて,法規制や環境対策の現状に至るまでの流れを示す。第3章「各種環境汚染による健康影響」では,現在進行形で課題となっている環境汚染の事例を取り上げ,上述の通り,原因とその特徴,健康影響,施策といった構成で解説している。具体的には,微小粒子状物質等による大気汚染,放射線による環境汚染,アスベスト(石綿)による環境汚染,室内環境汚染,気候変動,食品と容器包装,新型コロナウイルス感染症,マイクロプラスチックによる環境汚染,工業ナノ材料によるヒト健康リスクについて紹介している。また,トピックとしてPFAS(有機フッ素化合物)についても取り上げている。第4章「環境汚染の評価と対策」では,環境汚染物質の有害性の評価と健康リスク評価の一連の流れと具体的な手法を紹介し,化学物質のリスク管理に基づく法規制について解説する。最後に,対策を実行するうえで必要になるリスク認知とリスクコミュニケーションについても詳説する。第5章「科学的エビデンス」では,本書の根幹をなす科学的エビデンスの質の評価方法や根拠に基づく医療(evidence-based medicine:EBM)の実践法について述べる。第6章「予防原則」では,科学的な不確実さを有する問題にどのように対処すべきかの基本的な考え方となる予防原則について解説し,対応の遅れで健康被害が拡大した事例と早期に対応できた事例についてそれぞれ紹介する。なお,各項目はその分野を先導する研究者によって執筆されているため,最新の知見を含む専門性の高い考え方も学ぶことができる。またコラムでは,各著者による深い洞察から新たな視点を得ることもできる。
本書を手にとられているのは,主に,環境の改善や疾病の予防により人の健康や生活をより良くすることを目指している方々であろう。本書が,環境汚染による健康リスクの課題に取り組むための手引書となり,皆様の目標に向けた学びや業務に,実践的に役立つことを期待している。


【おすすめ度●】P.R.ムーニー『種子は誰のもの 地球の遺伝資源を考える』八坂書房, 1991年

国際開発行動連絡会議(ICDA)種子問題WG報告書。良書だが古いのでおすすめ度●にした。 内容:遺伝子の「富める国」と「貧しい国」 遺伝的浸食 遺伝子保存 緑の革命(展望と批判) 種子革命 新たな種子業者 品種規制法の意味 企業育種の偏向性 企業経験からの教訓など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
食糧供給への深刻な影響や第三世界への援助という名の破壊、利益に奔走する種子産業など、地球の遺伝資源をめぐる現状をつぶさに指摘しながら、人類共有の財産である種子の保全を訴える。

2025年12月16日火曜日

【おすすめ度○】ルース・ドフリース『食糧と人類』日本経済新聞出版社, 2016年

急増する世界人口を支える食糧増産技術、特に肥料と品種改良の歴史。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
人類の歴史は「食糧増産→土壌の悪化→ブレイクスルー→人口増→食料危機」の繰り返しだった。人類は再び危機を乗り超えられるのか。

○都市の夜景を彩るライト、地平線まで広がる穀物畑……空から眺めれば、人類の活動の痕跡は至るところにみられる。人間は生息数を何倍にも増やし、生息分布を拡大したという意味において、生物界における極端な成功例である。何十億人もの人々のための食料生産と住宅供給は、地球を変える巨大な力になっている。
 数万年前までは他の動物と同様に野生動植物の狩猟と採取にだけ頼っていた人類が、なぜ食料生産に成功し、爆発的に生息数を増やすことができたのか? 本書は、コロンビア大学教授でマッカーサー・フェローでもある著者が、人類が自然をコントロールし、食料生産を増やしていった過程を歴史的観点から描くもの。

○これまで人類は、大河の恵み、焼畑、鶏糞や屎尿など肥料の工夫、そして近代以降は種や品種の改良と化学肥料、農薬の発明によって、食料危機を何度となく乗り越えてきた。一方でこの100年の急激な食料増産は記録的なペースだった。その結果、人口急増、肉食の横行、土壌の疲弊、水不足、食料供給の不平等といった数々の問題が起きている。私たちはこうした難問をどう解決していくのか? 本書はSDGSの半分以上の項目に関係する内容であり、人類史レベルで持続可能な未来を考えていくうえで必須の本といえる。
(表紙画像は文庫版のもの)


2025年12月6日土曜日

【おすすめ度●】馬場朝子, 尾松亮『原発事故 国家はどう責任を負ったか』東洋書店新社, 2016年

チェルノブイリ原発事故の被害者を救済するための「チェルノブイリ法」の解説と、運用実態のルポルタージュ。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
チェルノブイリ原発事故被災地で、被害補償や健康診断の実施を定め、被災者の生活を守り続けている「チェルノブイリ法」。
この法律を作った政治家たちの理念と、被災地の人びとの声を聞き、この法律の価値を考える。そこには今の日本にはない、人の命と生活を守る高い理想と強い意志がある。
被災者支援について、責任感と当事者意識に欠ける日本政府のあり方に、一石を投じる書。




【おすすめ度●】梶谷懐, 高口康太『幸福な監視国家・中国』NHK出版新書, 2019年

中国では、IT技術やプラットフォームが急速に発展し、それを応用して各種の「信用スコア」によって国民を評価・監視するシステムが構築されつつある。この現象を思想の面から理解しようとしているが、そのような考察が成功しているかどうかはよくわからない。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
習近平体制下で、人々が政府・大企業へと個人情報・行動記録を自ら提供するなど、AI・アルゴリズムを用いた統治が進む「幸福な監視国家」への道をひた走っているかに見える中国。
セサミ・クレジットから新疆ウイグル問題まで、果たしていま何が起きているのか!?
気鋭の経済学者とジャーナリストが多角的に掘り下げる!


2025年12月4日木曜日

【おすすめ度○】本堂毅, 平田光司, 尾内隆之, 中島貴子編『科学の不定性と社会』信山社, 2017年

現実におきている問題(主に法的問題)と科学の関係を検討する良書。 内容:ルンバール事件と科学 科学と防災(地震予知) 医学的診断の社会性(「メタボ」はいかにして作り出されたか) 犯罪捜査と科学 科学と裁判 家族概念の科学と民法 科学の不定性とは何か 理科教育における科学の不定性 東北大学での科学教養教育 法教育における科学リテラシー 科学の不定性と市民参加など。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
私たちは科学的な専門知とどのように向き合っていけばいいのでしょうか?幅広い分野から、信頼の著者が集った科学リテラシー入門。

科学は頼りになりますが、なんでも解決してくれるわけではありません。ときどき暴走もしてそうです。

現代社会の安定と繁栄の根底に,「科学に関する専門知」が重要な役割を果たしてきたこと,いることに疑う余地はありません.しかしながら,「3.11」後の現在,そのあり方や用いられ方に対し様々な批判や疑問の目が向けられていることも,また確かです.では,これから先,私たちは科学的な専門知とどのように向き合ってゆけばよいのでしょうか.これは現代社会が直面する大きな課題です.本書は,この課題に「科学の多様な不定性と意思決定」という観点からアプローチします.