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2022年7月30日土曜日

【おすすめ度●】豊田秀樹『瀕死の統計学を救え!』朝倉書店, 2020年

古典的な数理統計学の中心的な手法である有意性検定の問題点を詳しく指摘して、ベイズ的な手法に移行するべきだと結論している。

出版社ページより紹介を引用
「米国統計学会をはじめ科学界で有意性検定の放棄が謳われるいま,統計的結論はいかに語られるべきか?初学者歓迎の軽妙な議論を通じて有意性検定の考え方とp値の問題点を解説,「仮説が正しい確率」に基づく明快な結論の示し方を提示。」



【おすすめ度☆】川上高志『検証 政治改革』岩波新書, 2022年

選挙の「短期決戦」化、総裁・首相への権力の集中、派閥の弱体化、野党の分裂と補完勢力化、国会軽視、忖度官僚の出現、マスコミの退廃、政治不信の拡大等、現在の政治の抱える問題点を指摘し、それが1993年の「政治改革」の結果であることを指摘している。1993年「政治改革」の問題点をおおまかに知ることができる本だが、一つ一つの論点に対する掘り下げは深くない(新聞記者の本にありがち)。特に衆議院の選挙制度(小選挙区・比例代表並立制)の問題点の分析は不十分。著者が新聞記者であるにもかかわらず(新聞記者「だからこそ」というべきか)、マスコミの政治報道に対する広告費の影響力等については何も言及されていない。

出版社ページから紹介を引用
官邸に権力が集中した「一強」政治ゆえの驕り、忖度官僚の出現、進む国会軽視…。平成期の政治改革は当初期待された効果を上げず、権力間のバランスが崩れて、副作用ばかりが目につくようになった。なぜ政治の劣化を招いたのか。ファクトにもとづいて検証、その原因を探り、令和の時代にふさわしい新しい政治改革を提言する。


2022年7月27日水曜日

【おすすめ度●】小林光・岩田一政・日本経済研究センター『カーボンニュートラルの経済学』日本経済新聞出版社, 2021年

2050年の「カーボンニュートラル」(温室効果ガス排出量の実質ゼロ実現)をめざして、今後に起きることを予測し、産業構造・政策・企業や消費者の行動の変化の必要性などを説明している。日本の自動車メーカーは、ハイブリッド車中心の戦略をやめて電気自動車中心に移行すべきであると主張するなど大胆なことも書かれている(日本経済研究センターは、日本経済新聞社関連の機関なので、日本を代表する大企業を批判するのは大胆な行為であるといえる)。

気候変動問題について、基礎知識のある人が次に読む本に良い。
社会の変化を実現するために、政治(政治家)が変わる必要があることは指摘されているが(189ページ)、この本は自民党政権の批判をしていないためぼやけた指摘になっている。

出版社ページより紹介を引用
企業のDXこそが温暖化問題解決の鍵を握る! カーボンニュートラル実現のために必要な制度、政策、企業の選択を提言する改革の書。
おすすめポイント
菅義偉首相は2020年10月26日、国会での所信表明演説の中で、日本政府として初めて2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)にするとの政策目標を表明しました。今年11月に英グラスゴーで開催されるCOP26(2020年度は開催されず延期)ではさらなるカーボンニュートラルの議論がなされると思われますが、この目標を実現するための経済政策の道筋は日本では明確にはなっていません。
日本経済研究センターは、人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながるIoT、ビッグデータが広く深く普及した第4次産業革命後のデジタル経済を想定、2050年度に13年度 比8割削減した場合の経済構造や削減コストを試算しています。現状で想定できるデジタル経済へ全面的に移行すれば、エネルギー消費量は6割減少し、さらに1万円/㌧・CO2(t-CO2)の環境税(炭素税)を課税すれば8割削減は可能、との結果が得られています。1.5℃目標の達成には税率を2.1万円超にするほか、脱原発に移行するならば、CO2を地中埋設するCCS(CO2の回収・貯留)が必要になります。デジタル経済への移行が、生産性向上につながる経済改革だけでなく、結果的に温暖化ガス削減にも貢献し、排出量ゼロも可能性があるのです。
本書は、ここまで日本経済研究センターに蓄積されてきた地球環境問題の知見と長期予測の成果を活用してカーボンニュートラル実現のために必要な制度、政策と企業の選択を明らかにするもの。日経センターでは企業のDXなしにはカーボンニュートラル実現は不可能としており、本書は企業にとっても関心が持たれる分析となります。



2022年7月3日日曜日

【おすすめ度○】布施祐仁『日米同盟・最後のリスク なぜ米軍のミサイルが日本に配備されるのか』創元社, 2022年

台湾が独立宣言をしたら中国は台湾に侵攻すると繰り返し明言している。台湾に中国が侵攻した時、日本は「台湾を守る」ために中国と戦争をするのか? この本を見ると、南西諸島(沖縄県の石垣島、宮古島等)で進められている自衛隊のミサイル配備をはじめとして、「中国との戦争」の準備が急速に進められている事実が書かれている。

 現在のロシアのウクライナ侵攻に対して、アメリカやヨーロッパ諸国はロシアと戦争をしていない。おそらく、中国が台湾に侵攻しても、アメリカやヨーロッパは中国と戦争しない。それでも、日本は「台湾を守る」ために中国と戦争するのか? 戦争の準備は着々と進められており、国民が止めようとしなければ戦争になる。

(詳細内容)南西諸島で進む自衛隊のミサイル配備 三矢研究 日米共同作戦計画 シーレーン防衛 日米軍事一体化 米中対立と核ミサイル戦争 日本を再び「戦場」にしないために

出版社ページより紹介を引用
いま、ほとんどの日本人が知らないうちに、大変な事態が進行している。
米軍が沖縄だけでなく、日本全土に核が搭載可能な新型ミサイルを配備しようとしているのだ。
本双書第9巻で、密約研究の父である新原昭治氏がのべているように、アメリカにとって日本というのは、ずっと「アメリカの核戦争基地」だった。それがいま、ついに最終局面を迎えているのだ。
このままでは、人類史上唯一の戦争被爆国である日本は、他国の軍隊(米軍)に核ミサイルを配備され、中国・ロシアとの「恐怖の均衡」の最前線に立たされてしまう。一方、その核ミサイルを発射する権利をもった米軍の主力部隊は、グアムやハワイなど、安全地帯へ一時撤退する計画だ。
これほど愚かな国が歴史上、かつて存在しただろうか。
情報公開請求による独自の日本政府文書発掘で知られ、ジャーナリストとして第一線で活躍を続ける著者が、その計画の全貌を報告し、警鐘を鳴らす。

【読者へのメッセージ】
アメリカと中国が戦争になれば、米軍が駐留する日本と中国との間で数千発のミサイルが飛び交い、最悪の場合、核戦争にまでエスカレートする可能性があります。日本の国土を再び「焼け野原」としてはならない。この一心で日米同盟のリスクに正面から向き合い、戦争回避の道を真剣に考えました。(布施祐仁/ジャーナリスト)


2022年7月1日金曜日

【おすすめ度●】野村アグリプランニング&アドバイザリー株式会社『2030年のフード&アグリテック』同文舘出版, 2020

バイオテクノロジー・代替食品・IT・ドローン・ロボットなどを応用した新しい農業ビジネス企業(多数)を紹介している。いわゆるコンサルタントによる本なので各社の宣伝の面があり、その点は注意する必要がある。

紀伊國屋書店の紹介を引用
本書は世界的に成長が著しい「フード&アグリテック」をNAPA独自の視点で、次世代ファーム、農業ロボット、生産プラットフォーム、流通プラットフォーム、アグリバイオの5分野に区分けし、各分野の市場動向と先進事例、2030年までの市場規模予測と事業展望を示します。
第II部先進事例では、世界の先進スタートアップ/企業70社の訪問調査に基づき、会社概要や事業概要、ビジネスモデル図、今後の計画、特徴・イノベーションを各社2ページでまとめています。
海外先進事例では、昨年ナスダック市場に上場した植物肉開発のビヨンド・ミートをはじめ、米国のユニコーン企業であるFBN(米国最大規模の農業プラットフォーマー)やギンコ・バイオワークス(MIT発のゲノム編集スタートアップ)、中国を代表するユニコーン企業のDJI(世界シェア7割のドローンメーカー)やメイツァイ(中国最大規模の食材ECプラットフォーマー)、アリババ子会社で次世代スーパー(ニュー・リテール)を展開するフーマネットワーク、イスラエルでデジタル/ロボティクスの技術開発を先駆けるテヴェル(収穫ロボットメーカー)やアフィミルク(酪農プラットフォーマー)、シード(植物工場メーカー)、ハーゴル(昆虫食スタートアップ)、欧州のフードテックを体現するモサ・ミート(培養肉開発)やノヴァ・ミート(3Dフードプリンタ開発)などを取り上げています。
筆者は、フード&アグリテックの2019年の国内市場規模を2,526億円と推計していますが、2030年には1兆6,351億円に拡がるものと予想しています(今後10ヵ年の年平均成長率(CAGR)は16.7%)。その意味では、本書は食に携わる企業関係者はもちろんのこと、異業種企業での「新規事業」の検討に役立つ内容となっています。




【おすすめ度○】的場信敬・平岡俊一・上園昌武編著『エネルギー自立と持続可能な地域づくり』昭和堂, 2021年

環境先進国オーストリアに学ぶエネルギー自立と持続可能な地域づくりの工夫 学部生にはちょっと大変かもしれないが、オーストリア(オーストラリアではない)に関心がある人にはぜひおすすめ (詳細内容)オーストリアの気候エネルギー政策のフレームワーク オーストリアの持続可能な社会づくり 匡・州の気候エネルギー政策 ドイツ語圏におけるエネルギー自立地域を目指す社会運動 農山村を支える林業と木質バイオマスエネルギー 気候エネルギー政策における自治体支援の仕組み 自治体・地域を対象にした中間支援活動の推進 持続可能な地域づくりにおける住民参加・共同促進の仕組み 地域づくりと統合された気候エネルギー政策 エネルギー大転換を後押しするエネルギー事業体 生活の質を高める実効的な省エネ支援 地域交通の維持とモビリティの潮流 オーストリアのエネルギー需給構造と温室効果ガス排出量

出版社ページより紹介を引用
原子力発電にNOを打ち出し再生可能エネルギーの導入を進めるオーストリア。政治・行政が明確なビジョンを持ち市民参画とパートナーシップを前提として自治体をベースに持続可能な地域づくりに包括的に取り組む。6年にわたる現地調査をもとにその仕組みを徹底解明。



【おすすめ度◎】北原克宣・安藤光義 編著『多国籍アグリビジネスと農業・食料支配』明石書店, 2016年

やや古い本だが、グローバル化のもとでの農業経済学の論点を鋭く取り上げている。(詳細内容)米国におけるアグロフュエル・ブーム下のコーンエタノール・ビジネスと穀作農業構造の現局面 ブラジルにおける多国籍アグリビジネスの展開と農業構造の変化 多国籍アグリビジネスの事業展開と日本農業の変化 新自由主義的制度改革とレジスタンス バイオテクノロジーと知的財産権 植物遺伝資源の利用と独占の現段階 農業・食料の「金融化」と対抗軸構築上の課題 資本による農業包摂の現段階

出版社ページより紹介を引用
本書は、農業におけるグローバリゼーションの進展に伴う「多国籍アグリビジネス」の諸相を種々の角度から分析した意欲的論考を集めた。今日の農業問題は食糧、エネルギー、環境、遺伝子技術などかつてない広がりをもっており、その学術的究明を試みる。

【おすすめ度○】水口剛『ESG投資 新しい資本主義のかたち』日本経済新聞出版, 2017年

やや古いがESG投資について網羅的に理解できる。

詳細内容:ESG投資は誰がしているのか PRI原則とGPIF ESG投資とは何か 気候変動とESG投資 注目集まるグリーンボンド 人権問題 奴隷的な労働の排除 サプライチェーンマネジメント 経済的不平等とESG投資 社会的インパクト投資の試み 森林問題 持続可能なシーフード 工場的畜産 クラスター爆弾 ESG情報の開示に企業はどう対応すべきか 投資家の役割 ESG投資の未来と資本主義の再定義 など

出版社ページより紹介を引用
内容紹介
社会の安定や自然環境を守ることが将来にわたる経済の繁栄を守る―世界的に関心高まるESG投資が変える社会システムを展望する。
おすすめポイント
ESGによる企業の選別が始まる!
世界の新しい潮流を第一人者が解説。

◆日本でも本格化するESG
2017年初の日経ヴェリタスの巻頭は「ESG投資の号砲」でした。投資家の間でE(環境)、S(社会)、G(企業統治)を通じて社会的存在としての企業の価値を探り投資先を選別する動きが強まり、収益一辺倒の企業はやがて市場からの退場を求められることになるという新しい時代の始まりを、投資家、企業、それぞれの動きから探ったものでした。
ESG(投資)は、既に欧米の資産運用会社や機関投資家の間では「洗練された株主価値」として投資における重要な指標となっています。日本でも2015年9月、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が責任投資原則(PRI)に署名、2017年には、多くの機関投資家も重視する指標としてあげ、一方の上場企業でも、ESGを専門にする部署の設置が急増。まさに「ESG元年」を迎えました。

◆第一人者が全貌を解説するはじめての一冊
ESG投資は、コーポレートガバナンス改革の柱でもあるエンゲージメントを通して、世界の持続的・安定的な成長に寄与できるかで企業を選別、それによって将来の世界全体の繁栄を守るという新しい社会システム(資本主義)を生み出そうとするグローバルな動きで、単に「ESGを考慮して投資すれば儲かる」ということではありません。そういう企業に投資して支えることで、社会全体が豊かになっていき、その富が自分たちにも返ってくるという、格差や資源の問題を抱えた世界全体のことを長期的に考える、誰もが求めるきわめて合理的な行動という点で、支持が急速に広がっているのです。
本書は、欧州など海外での研究も重ねてきた第一人者が、これまで断片的にしか伝えられてこなかったESGをめぐる様々な動きを整理、上場企業、機関投資家双方に必須の知識を提供するものです。


【おすすめ度☆】山崎雅弘『歴史戦と思想戦』集英社新書, 2019年

「歴史戦」や「思想戦」について基本的なことから説明している。「歴史戦」や「思想戦」という言葉を聞いたことがない人が、最初に読む本のにいい本。

出版社ページより紹介を引用
今、出版界と言論界で一つの「戦い」が繰り広げられています。

南京虐殺や慰安婦問題など、歴史問題に起因する中国や韓国からの批判を「不当な日本攻撃」と解釈し、日本人は積極的にそうした「侵略」に反撃すべきだという歴史問題を戦場とする戦い、すなわち「歴史戦」です。
近年、そうしたスタンスの書籍が次々と刊行され、中にはベストセラーとなる本も出ています。
実は戦中にも、それと酷似するプロパガンダ政策が存在しました。
しかし、政府主導の「思想戦」は、国民の現実認識を歪ませ、日本を破滅的な敗戦へと導く一翼を担いました。
同じ轍を踏まないために、歴史問題にまつわる欺瞞とトリックをどう見抜くか。豊富な具体例を挙げて読み解きます。

【主な内容】
◆産経新聞が2014年から本格的に開始した「歴史戦」
◆「歴史戦」のひとつ目の主戦場:戦時中の慰安婦問題
◆「歴史戦」ふたつ目の主戦場:日本軍による南京での虐殺
◆なぜ大日本帝国の否定的側面を批判する行為を「自虐」と呼ぶのか
◆第一次世界大戦後の日本軍人が着目した「総力戦」と「思想戦」
◆思想戦の武器は「紙の弾丸、声の弾丸、光の弾丸」
◆「歴史戦」の論客の頭の中では今も生き続ける「コミンテルン」
◆「戦後の日本人はGHQのWGIPに洗脳された」という「ストーリー」
◆児玉誉志夫は「思想戦」の独善的側面に警鐘を鳴らしていた


【おすすめ度◎】小泉達治『バイオエネルギー大国 ブラジルの挑戦』日本経済新聞出版, 2012年 

やや古い本だが重要な内容 (内容)バイオエネルギーとは何か ブラジルのバイオエネルギー政策 バイオエタノール・バイオディーゼル・バイオ電力 バイオエネルギーの将来と食料需給・環境に与える影響

出版社ページより紹介を引用
ブラジルはバイオエタノール、バイオディーゼル、バイオ電力を3本柱とする再生可能エネルギー大国。東日本大震災と福島原発の事故以降、電力供給に不安を抱える日本が学ぶべきはブラジルの政策だ。その実態に迫る!
ブラジルの国家戦略を分析するとともに、バイオ電力産業の育成方法やバイオ燃料の普及方法などについても解説します。

【おすすめ度●】グレゴワール・シャマユー『統治不能社会』明石書店, 2022年

学部生にはやや難しいかもしれないが、いわゆる「新自由主義」批判の面白い本

詳細内容:権威主義的ネオリベラル主義の系譜学 労働者の不服従 自由企業への攻撃とその反撃 多国籍企業規制のハードローとソフトロー 民主主義の統治性の危機 民営化のミクロ政治学 など

出版社ページより紹介を引用
すべての権力を市場の統治下に取り戻せ! フーコー、マルクス、ハイエクから対労組マニュアル、企業CM、経営理論まで、ネオリベラリズムの権力関係とその卑しい侵食の歴史を鮮やかに描き出し、現代の社会構造と市場の問題をえぐり出す名著、待望の刊行。