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2024年8月27日火曜日

【おすすめ度☆】佐藤健太郎『世界史を変えた薬』講談社現代新書, 2015年

薬と社会のかかわりに関するエッセイ集。ビタミンCが発見されたことにより、長期間の航海が可能になり世界の植民地化が促進された。世界の植民地化によりマラリア(キニーネ)や梅毒(サルバルサン)のような病気が広がり、それに対する薬の研究も進められた。 取り上げられている薬:ビタミンC キニーネ モルヒネ 麻酔薬 消毒薬 サルバルサン サルファ剤  ペニシリン アスピリン エイズ治療薬

出版社ウェブサイトから紹介を引用
 筆者はかつて、医薬品企業の研究所で新薬の研究に携わり、医薬の可能性と危険性について考える日々を送ってきた。もしこの薬があの時代にあったら、あの薬があの人物を救っていなければ、と考えるのは、歴史の愛好者として必然であった。もしコロンブスがビタミンCを知っていたなら、もし特殊アオカビの胞子が、ロンドンの病院のあるシャーレに飛び込んでいなかったら、間違いなく、現在の世界地図は大きく変わっていたはずだ。
 医薬品というものは、どうにも不思議な代物だ。老若男女を問わず、誰もが薬のお世話になっているにもかかわらず、薬について詳しいことはほとんど何も知られていないに等しい。口から飲み込んだ小さな錠剤が、どのようにして患部に届いて痛みや炎症を鎮めるのか、簡単にでも説明できる人は相当に少ないだろう。
 近年は、医薬品の過剰投与や副作用などネガティブな側面ばかりが強調されがちだが、人類は医薬品の発明によってその寿命を飛躍的に伸ばしていた。「死の病」と恐れてきた感染症は、抗生物質の発明により、ありふれた病気になった。あまり意識されないが、いくつかの医薬品は間違いなく、世界史を変え、人類の運命を変えてきた。
 医薬の科学はなおも発展の途上にあり、今後さらに大きく社会を変えてゆく可能性を秘めている――というより、確実に変えてゆくことだろう。とすれば、医薬と人類の関わりを、歴史の流れに沿って眺めておくのは、意義のある試みであるに違いない。


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