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紹介する本が増えてきたのでまとめます。 【おすすめ度◎】の本(特におすすめする本、このページの下の方に) 【おすすめ度☆】の本の一覧はこちら (教科書あるいは入門書的な本) 【おすすめ度○】の本の一覧はこちら (読むことをおすすめする本) 【おすすめ度●】の本の一覧はこちら (専...

2023年7月31日月曜日

【おすすめ度●】藤原聖子 編著『日本人無宗教説』筑摩選書, 2023年

明治時代からの新聞上の論説を主な分析材料にして、「日本人は無宗教」という言説を検討している。「日本人は無宗教」言説を①「日本人は無宗教なので、日本人の精神には重要な要素が欠けている」という「欠落説」、②「日本人は無宗教だが、それで特に問題はない」という「充足説」、③「日本人は実は無宗教ではなく、独自の宗教を持っている」という独自宗教説の3つに分類して考察している。
 この本の限界として、考察の対象が宗教そのものではなく新聞の論説であるため、宗教に関して本格的に深遠な議論が展開されているわけではない。また、宗教は人の人生のさまざまな側面を取り上げあるが、この本では論じられていることが頻繁に変わってしまっている(これも考察対象が一般には短文である新聞の論説であるため)。
 キリスト教において、最後の晩餐(ユダによる裏切りとイエス自身の死の予告)・ペトロによるイエスの否認(使徒集団の崩壊)・イエスの「復活」による使徒集団の再建・使徒による宣教と殉教という一連の福音書の物語の中に、「正しい人間の生き方とはどういうものか」という一般的な倫理的基準に加えて、「自分の死に直面した人間はどう生きるべきか」「身近な人間(イエス)の死を経験したときにどうするべきか」という、人間の人生における危機的局面における「救い」が示されている。仏教をはじめとする他の宗教でも、一般的な倫理的基準と、人生の危機的局面(自分の死や身近な人の死など)における救いなどさまざまな要素を持っているが、この本では宗教のどの面について議論しているのかには注意が払われていないので散漫に感じる。この本の著者は若い研究者たちなので、おそらく「自分の死」や「身近な人の死」などの宗教が切実に求められる危機的経験をしたことがないのではないか。(念のため、私はキリスト教徒ではない)

出版社ウェブサイトから紹介を引用
「日本人は無宗教だ」とする言説の明治以来の系譜をたどり、各時代の日本人のアイデンティティ意識の変遷を解明する。宗教意識を裏側から見る日本近現代宗教史。
「日本人は無宗教だ」とする言説は明治初期から、しかもreligionの訳語としての「宗教」という言葉が定着する前から存在していた。「日本人は無宗教だから、大切な○○が欠けている」という“欠落説”が主だったのが、一九六〇年代になると「日本人は実は無宗教ではない」「無宗教だと思っていたものは“日本教”のことだった」「自然と共生する独自の宗教伝統があるのだ」との説が拡大。言説分析の手法により、宗教をめぐる日本人のアイデンティティ意識の変遷を解明する、裏側から見た近現代宗教史。


2023年7月23日日曜日

【おすすめ度●】小川寛大『神社本庁とは何か』K&Kプレス, 2018年

いま、「神社」が直面する問題点 日本から神社が消える日 金持ち神社と貧乏神社の格差拡大 知られざる国家神道の実態 明治初期の国家神道の形成 天皇のための宗教 反米思想と戦前回帰願望 神社本庁は安倍政権を操っているか 神社会の政治的実力 幸福の科学よりも小さい集票力

紀伊國屋書店ウェブサイトから紹介を引用
このままでは、日本の神社が消えていく。季刊『宗教問題』編集長が、ついに暴いた真実!日本全国の神社を統括する「神社本庁」だが、神道信仰者は、今ではわずかに二・七%。なのに、戦前回帰願望、安倍政権支持等々、参拝者の幸せよりも政治的活動にご熱心。それは、多様な内紛の原因ともなっている。


【おすすめ度●】リテラ神社問題取材班『ニュースが報じない神社の闇』花伝社, 2019年

「神社」をめぐるスキャンダルを追及する本 取り上げられている事例:靖国神社の不穏な動き 神社本庁職員宿舎用地不正取引疑惑 富岡八幡宮殺傷事件 宇佐神宮の女性宮司問題 神社本庁、日本会議と改憲運動 戦前会議と差別、ヘイト

出版社ウェブサイトから紹介を引用
靖国神社宮司による前代未聞の天皇批判、神社本庁の不正土地取引疑惑、そして惨劇となった富岡八幡宮の跡目争い…… 神社界がいま、おかしい
次々と噴出する神職たちの不穏な動きの背景には何があるのか?
タブーに挑み続ける記者チームが深層に迫る!
いま「神社」に何が起きているのか!?
新聞やテレビが報じない神社本庁・神社の「闇」に切り込みます。

【おすすめ度☆】安斎育郎『騙される人 騙されない人』かもがわ出版, 2008年

ちょっと古い本だが、「超自然的」な現象やカルトのインチキを暴く本 取り上げられている事例:ノストラダムスの大予言 ライフスペース(生きているミイラ)事件 パナウェーブ 霊感商法 NHK「奇跡の詩人」など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
これでもう騙されない!
人はなぜ騙されるのか、どうすれば騙されずに済むのか。霊、オカルトから様々な詐欺に至るまで、騙されない極意と合理的思考の勧め。

2023年7月22日土曜日

【おすすめ度●】全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団『集団予防接種によるB型肝炎感染被害の真相』明石書店, 2023年

かつて、学校等で行われた集団予防接種の際、注射針を交換せずに同じ注射器で多数の子供たちに予防接種をしたため、注射器を媒介にしてB型肝炎ウイルスがひろがった。この本は、被害者たちが国を訴えたB型肝炎訴訟の原告団・弁護団による裁判の記録。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
1989年(平成元年)、5人のB型肝炎患者・感染者が国を相手に損害賠償請求訴訟を提起し、2006年最高裁で全面勝訴の判決を勝ち取った。その後の2011年、原告・弁護団は国との間で基本合意を締結し、2013年には「検証会議」による提言がまとめられた。
本書ではさらに踏み込み、国や自治体、また医療従事者等の責任および問題の所在は一様ではないとの視点に基づき、10年ごとに年代を区切り各時代背景や社会情勢とともに医学知見の程度や感染事例等を検討したうえで、各年代における問題点を検証する。「検証会議」の弁護士、原告を含むメンバーによる「真相究明再発防止班」が、検証会議の提言をはじめ膨大な資料を基に、B型肝炎感染被害の歴史と真相を解明した一冊。

2023年7月21日金曜日

【おすすめ度○】小山堅『戦略物資の未来地図』あさ出版, 2023年

サブタイトルに「地政学から読み解く!」と付けられているけど、実際の本の中身はいわゆる地政学的な空論ではなくて、現実主義に基づいている。特に中国との関係では、中国と「全面的に衝突すべきでない」「協力してプラスになる効果が期待できそうな分野では協力し、進めていくことも必要」(268~270p.)としている。「中国と全面的に衝突しない」ということは、もし中国が台湾に侵攻したとしても中国と戦争しないということであるが、日本の経済の現実を踏まえれば、そういう結論になることは当然。 内容:資源を豊富に持つのはどの国なのか 国家の命運を左右する世界の分断と戦略物資 政治化する気候変動問題 脱炭素化からみた戦略物資 日本の戦略物資

出版社ウェブサイトから紹介を引用
米中対立が激化し、世界情勢が激変するなかで戦略物資への各国の眼差しが大きく変わってきている。
経済効率の追求から、自国または同盟国の安全保障を重視する方向へと向かうことで、資源エネルギーなどを中心とした戦略物資の確保が重要になってきているためだ。とくに近年は2020年に新型コロナが世界中で流行し、2022年にロシアによるウクライナ侵攻が起きたことで、半導体や化石燃料などの資源を巡る各国の政治的な動きが活発化。さらに、グローバル経済によるサプライチェーンの崩壊や再生エネルギーへの転換なども複雑に絡まっており、戦略物資への理解は一筋縄ではいかない。
本書籍は戦略物資の現在地と未来の状況を地政学的な観点から読み解いた上で、それが国際情勢や各国の利害にどのような影響を与えるのかまでを丁寧に紐解く。戦略物資から世界を俯瞰することで、国家の盛衰までもが理解できるようになる1冊!



【おすすめ度☆】羽生雄毅『夢の細胞農業』さくら舎, 2023年

著者は培養肉ベンチャー「インテグリカルチャー」代表。細胞農業の歴史から始まり、細胞と培養の基礎知識や細胞農業の未来について述べている。社会的受容や経済性(コスト)の問題についても考察されている。面白いのは、「楽しいシチズンサイエンス」として、自宅でDIY細胞培養にチャレンジするノウハウを詳しく紹介しているところ。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
食料安全保障(とくにタンパク質)に対する切り札といわれる「培養肉」は、いま世界各国で開発が進んでいます。日本でも2023年2月に若き著者が代表を務めるスタートアップ企業・インテグリカルチャーが「世界初の食べられる培養フォアグラ」を独自技術で開発し、ニュースになりました。この培養肉をつくる技術が「細胞農業」。細胞を培養して食品をつくる新しい生産方法で、お肉だけでなく、魚、野菜、果物、コーヒー、木材など様々なものがつくれるのです。高効率・サステナブルな生産で、SFの定番ネタだった培養肉の社会実装は目前です(2025年大阪・関西万博で培養肉の試食という話題も)。日本の培養肉開発・細胞農業研究のトップランナーが培養肉のつくり方から、細胞農業がもたらすワクワクする未来まで、楽しく面白くわかりやすく解説しました!


2023年7月17日月曜日

【おすすめ度○】上西充子『国会をみよう』集英社, 2020年

大型スクリーンを使って国会審議状況を路上で映写する「国会パブリックビューイング」活動の紹介。「国会ってどういうことをやってるんだろう」と思ってる人はこの本を読んでみるとよい。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
街頭に国会審議映像を持ちこんでスクリーンに映しだし、その横で自らマイクを握り、ライブ解説を加え、国会で起きていることを人々に知らせる。これが「国会パブリックビューイング」である。2019年6月15日に生まれた、政党や労働団体と組まない独自の活動だ。
「国会をみよう。そして考えよう」と主宰する上西充子教授は呼びかける。本書はそのようにして誕生した「国会パブリックビューイング」という、小さいが新しいメディアによる1年間の活動記録である。

【帯コメント】
こんな伝えかたがあったのか! 市民メディアの知恵とスキルが痛快。
永井愛さん(劇作家・演出家)
政府が逃げるなら。メディアが報じないなら。私たちがストリートから民主主義を作り直す――。
荻上チキさん(ジャーナリスト)

●本文
国会パブリックビューイングの街頭上映は、夕方から始まる。スクリーンを組み立ててプロジェクターから映像を映し出すので、あたりが暗くないと映像が見えにくいからだ。(中略)
活動を始めたきっかけは、マスメディアや既存の市民運動・労働運動の力だけでは、いま国会で起きている問題について、広く市民に共有されていないと感じたからだ。このままでは、さらに状況が悪化するという危機感があった。自分の思うように街頭行動をやってみると、反応が返ってくる面白さがあった。自分たちで街頭行動をおこなう経験を通して、自分たちが主権者であり、政治を変える主体なのだという自覚も芽生えてきた。
従来の市民運動・労働運動に便乗するかたちで新しい要素を付け加えるのではなく、自分たちで独自に団体を作って、自分たちが考えるスタイルで街頭行動を実施してきたからこそ、従来の街頭行動には足をとめなかった人が足をとめてくれていると感じる。また、自分たちでやってみるという行動を私たちが示しているからこそ、自分もなにかやってみようと動く人たちが、各地で生まれてきていると感じる。
──「はじめに」より


2023年7月16日日曜日

【おすすめ度◎】原田正純『水俣病』岩波新書, 1972年

水俣病に関するもはや古典といってよいが、日本の公害問題を考えるときに、この本は絶対に欠かすことができない本といってよい。

出版社ページ


続編に『水俣病は終わっていない』(1985年)がある。


【おすすめ度☆】尾河眞樹『本当にわかる為替相場』日本実業出版社, 2023年

為替相場の概説書。この本はかなりの頻度で改訂されているようなので、最新版(2023年7月現在では2023年版が出版されたばかり)を読まないといけない。 内容:そもそも為替レートとは 為替レートを動かしている人たち 国によって異なる外国為替市場の特徴 相場予測の立て方 経済統計はここをチェック 要人発言の重要性 通貨ごとのクセ ドル以外の通貨にも興味を広げよう 為替相場のテクニカル分析 相場予測ツールの最新トレンド

出版社ウェブサイトから紹介を引用
政府・日銀による24年ぶりの円買い・ドル売り介入などで為替相場が激動するなか、テレビ東京のレギュラーとして人気の著者が為替市場のしくみから相場が動く背景や予測法までをやさしく解説。2012年刊行の定番教科書を大幅に拡充した待望の一冊です!



【おすすめ度○】北海道放送報道部『ヤジと民主主義』ころから, 2022年

2019年7月に北海道・札幌で発生した、安倍首相(当時)の街頭演説に対してヤジを飛ばした人が北海道警察によって排除された事件の記録。「言論の自由」や「表現の自由」についてまじめに考えたい人は読んでおくとよい。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
「おかしいことは、おかしいと言う」ーーそんな当たり前のことができない社会になってはいないか?
札幌で街頭演説する安倍晋三元首相に向けて、複数の聴衆が異議申し立てをしました。しかし、警備する北海道警はヤジやプラカードで「声」をあげた聴衆のうち少なくとも9人を強制的に排除したのです。
この”小さな”事件を、しつこく、丹念に追った北海道放送は2020年にドキュメンタリーを2回放送し、特に4月放送の『ヤジと民主主義〜小さな自由が排除された先に』はYouTubeでも公開され、36万回再生を記録。さらに、日本ジャーナリスト会議による第63回JCJ賞をはじめ第57回ギャラクシー賞などを受賞しました。そして排除されたうち2人が北海道を訴え、2022年3月に札幌地裁は北海道に対して計88万円を原告に賠償するようにとの判決を下したのです。
同番組の書籍化に際して、この画期的な判決にいたる経緯を追加取材し、『ヤジと民主主義』として刊行します。


【おすすめ度○】櫻井義秀『統一教会』中公新書, 2023年

統一教会の(事実上の)教祖である文鮮明の経歴をはじめとして(※現在の統一教会では、韓鶴子が教祖であり文鮮明はその配偶者という位置づけ)、統一教会の教義の形成(その背景にある韓国の民衆宗教)、日本宣教、霊感商法や献金、祝福(合同結婚)と女性信者の韓国での生活、政治との関係、カルト宗教の活動に対する法規制の在り方など、統一教会について多角的に検討している。
 この本では、統一教会の教義は、韓国の民衆宗教の教義と、教祖・文鮮明が持っていた強烈な日本の植民地支配に対する反感(恨=ハン)を基盤として形成されたものであることが強調されている。したがってこの本の立場では、統一教会と日本の保守・右翼勢力との間に思想的な共通性はない。
 それにもかかわらず、統一教会の創立直後から既に韓国政府(韓国中央情報部KCIA)と何らかの関係があり(44p.)、日本においても1960年代~70年代に勢力を拡大する新左翼学生運動に対抗する保守・右派系の学生運動として統一教会系の原理研究会が利用された。1980年代には、統一教会関連団体の国際勝共連合によって「スパイ防止法制定運動」が展開された(日本における勝共連合の活動は、もともと立正佼成会の信者だった久保木修己が指導した)。信者による選挙の支援なども行われている。しかし、冷戦終結後の1990年代以降、共産主義・左翼勢力が衰退するとともに統一教会の反共政治勢力としての役割も縮小していく。
内容:性・カネ・恨(ハン)から実像に迫る 韓国の民衆宗教とキリスト教 文鮮明の経歴と統一教の形成 統一教の日本宣教 統一原理と学生たち 統一教会による人材と資金調達の戦略 布教・霊感商法・献金の実態 祝福(合同結婚)と韓国の日本人女性信者 政治との関係 法規制 安倍首相銃撃事件

出版社ウェブサイトから紹介を引用
一九五四年、文鮮明によって創設された統一教会。戦後韓国で勃興したキリスト教系新宗教の中でも小規模な教団だったが、日本に渡ったのち教勢を拡大、巨額の献金を原資に財閥としても存在感を強めた。「合同結婚式」と呼ばれる特異な婚姻儀礼、日本政治への関与、霊感商法や高額献金、二世信者――。異形の宗教団体はいかに生まれ、なぜ社会問題と化したのか。歴史的背景、教義、組織構造、法的観点などから多角的に論じる。


2023年7月15日土曜日

【おすすめ度○】安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』平凡社ライブラリー, 1999年

日本の民衆思想を、通俗道徳の面と権力への反抗(一揆、世直し)の面に注目して分析する面白い本。二宮尊徳に代表される「勤勉、節約」を旨とする通俗道徳は、権力者が「上から」押し付けようとしただけではなく、それが実際に成果を挙げたから説得力を持った(勤勉、節約にいそしむものは豊かになり、勤勉、節約を怠る者は没落する)。その一方で、この通俗道徳は、貧困の原因を個人の勤勉や節約の不足にしてしまい、社会構造の問題点を隠蔽してしまう。
 通俗道徳が説得力を持つのは、勤勉や節約にいそしむことによって豊かになれる状況下であって、社会全体の貧困化が進み、勤勉や節約にいそしんでも貧困化から逃れられない状況では、通俗道徳の説得力はなくなる。今後の日本もそうなっていくと思われるが、その時にどのような「世直し」の思想が現れてくるのだろうか。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
幕末から明治期の新興宗教や百姓一揆の史料をさぐることにより、民衆の生き方と意識の在り方を歴史的にとらえ直す。著者一流の歴史探求から日本の近代化を追究した名著。解説=タカシ・フジタニ



【連絡】古い韓国語の本を200冊程度処分することにしました。

古い韓国語の本を200冊程度処分することにしました。まとめて引き取っていただける方がいたら連絡をください。主に1990年代~2000年代の韓国の環境問題と開発に関連する本です。写真に写っているのは半分程度です。




【おすすめ度○】山岡淳一郎『ルポ副反応疑い死』ちくま新書, 2022年

新型コロナワクチン副反応疑い死という、重要だが難しいテーマに真摯に取り組んだ良書。内容:ワクチン政策と薬害を問い直す ワクチン健康被害救済制度 副反応疑いの実例 中日・木下選手の例 因果関係認定の困難 mRNAワクチン開発など

この本の本題からは外れる私の意見だけど、まともなワクチン開発プロジェクトに対する国の支援が打ち切られる一方で、成功の見込みがほとんどなかったアンジェスのプロジェクトや、まして効果の乏しいアベノマスク配布には数百億円の税金がつぎこまれる(165ページ「幻に終わった日本発mRNAワクチン」)のには暗然とさせられる。
 なぜそんな情けないことが起きるかというと、現在の政策を決めている政治家や官僚に科学的知識が無さすぎることが根本的な原因。科学的な知識がないから、まともな研究プロジェクトと、金をどぶに捨てることの区別ができない。現代では、社会において科学技術が重要な意義を持っているのだから、科学技術が理解できる人が政策決定をやるべきだと思う。
 現在の国会議員の中で、PCR検査とはどういう検査なのか、おおざっぱでも説明できる人がいったい何人いるだろうか。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
因果関係を示す主治医や解剖医、遺伝医学者、製薬メーカー、制度を仕切る厚労官僚などを綿密に取材。副反応と死の間の真実、制度の闇、構造的要因を白日の下にさらす。


2023年7月10日月曜日

【おすすめ度●】劣化ウラン研究会『放射能兵器 劣化ウラン』技術と人間, 2003年

原子力発電の燃料として使用されるウランには、核分裂を起こしやすいウラン235と、起こしにくいウラン238が存在する。現在、地球上に存在しているウランのうち、約99.3%がウラン238で、約0.7%がウラン235である。この「天然ウラン」を燃料として使用できるタイプの原子力発電所も存在するが、日本の原子力発電所はウラン235の濃度を約3%まで高めた濃縮ウランを使用している。
 天然ウランから濃縮ウランを作る際に、分離して不要となったウラン238が捨てられる。これが劣化ウランと呼ばれる(天然ウランの70%以上が劣化ウランとして捨てられる)。
 劣化ウランは、あまり強力ではないが放射線を出す有害物質である。これが兵器として使用され、環境中にばらまかれて様々な問題を引き起こした。この本は、この劣化ウラン問題に関する問題提起の本である。
内容:危険な劣化ウラン弾 劣化ウラン弾とはどういう兵器か 核燃料サイクルと劣化ウラン 身近な劣化ウラン 劣化ウラン兵器廃絶運動など

紀伊國屋書店ウェブサイトから紹介を引用
「ボクは、死ぬんだ。死んでしまうのだ。」イラクの小児病棟では連日、血を吐きながら子供たちが死んでゆく。劣化ウラン弾は史上最悪の大量殺りく兵器である。

2023年7月8日土曜日

【おすすめ度●】アンドリュー・キンブレル『すばらしい人間部品産業』講談社, 2011年

やや古い本だが、「人間の体」そのものが売買される商品になりつつあることを取材して明らかにする良書。だたし、著者はキリスト教の思想に基づいて「人間部品産業」に反対しているが、その点はキリスト教徒でない読者は必ずしも賛同しなくてもよい。 内容:臓器移植ビジネス 胎児マーケット 代理母・生殖技術 遺伝子ビジネス 遺伝子特許 クローン 人間部品産業との闘いなど

出版社ウェブサイトから紹介を引用
「私の問題意識はこの本から始まった」 福岡伸一
★臓器や組織の効率的な売買のために、胎児の生体解剖が行われている?
★凍結されたままの胚(受精卵)に、人権や遺産相続権はあるのか?
★ある調査で、「生まれる子供が肥満体とわかれば中絶したい」と答えた人が11%
★ヒトの遺伝子をもつように改良された「動物」に次々と特許が与えられる
★「背が高くなるように」と、毎日ヒト成長ホルモンを注射する少年
★クローン技術によって生まれた生物には、なぜ「異常体」が多いのか?
血液、臓器から、胎児、遺伝子、はては新種生物やクローン人間までもが効率的に生産され、市場で売買される時代。その萌芽はすでに半世紀前から始まっていた……。
人間部品産業(ヒューマンボディショップ)のリアルな実態に警告を発した歴史的名著に、新エピソードを加筆した改訂&決定版! 福岡ハカセの“原点”が名訳とともに甦る。
人間は「人間部品の商品化」に答えを出せるのだろうか?


2023年7月7日金曜日

【おすすめ度○】入江智子『公民連携エージェント』学芸出版社, 2023年

著者は元大東市職員で、民間に転身して「もりねき」再開発プロジェクトを成功させた。「もりねき」成功の経験を生かして、まちづくりプロジェクトの成功事例(著者が関わったものではないが、岩手県紫波町のオガールが詳しく紹介されいる)とノウハウが書かれている。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
公民連携で住み続けたくなるまちづくりを
「コンクリートの大きな箱はもう要らない」「外から”この地域に住みたい”と言われるまちを」そんな声に応えるために、市役所を退職。地域の価値を上げる公営住宅+商業施設事業「morinekiプロジェクト」、メディア・マーケット事業などを実現した公民連携エージェントが語る、住み続けたくなるまちをつくる方法。


2023年7月6日木曜日

【おすすめ度☆】定野司『自治体予算の基本が1冊でしっかりわかる本』学陽書房, 2023年

1テーマ2ページ形式で自治体予算をめぐる様々なトピックを紹介している。 内容:自治体予算をめぐる最新情報 自治体の予算とは何か 歳入歳出予算だけが予算じゃない 予算の仕組みと新たな試み 自治体予算の姿を知る 予算の作られ方(予算編成) 知っておきたい予算の問題点 自治体財政を正常化させる9つのヒント

出版社ウェブサイトから紹介を引用
自治体予算の理解に必要な知識をカバー。
自治体の現場をよく知り、数々の講演に呼ばれる「予算のプロ」が、大事なポイントを凝縮して解説。
「予算編成に携わることになったから、手早く予算のことを知っておきたい」「基礎知識として予算の知識をひととおり身につけたい」「難しそうな予算をとにかくやさしく学びたい」など、はじめて学ぶ人や、スピーディ-に学びたい人におすすめの1冊。
予算の基本的な制度や仕組みはもちろん、「コロナ禍の影響」「公会計の活用」「新しい予算編成の手法」など、今押さえておくべき重要な最新情報も収録。
※本書は『一番やさしい自治体予算の本』の改題新版です


2023年7月5日水曜日

【おすすめ度○】諸永裕司『消された水汚染 「永遠の化学物質」PFOS・PFOAの死角』平凡社新書, 2021年

多摩地区と沖縄のPFOS/PFAS汚染問題、日米地域協定の問題点など。地下水汚染の原因究明は困難であり、この本では在日米軍の横田基地が多摩地区の地下水汚染の汚染原因である可能性を示しているが、立証はできていない。

出版社ページより紹介を引用
「永遠の化学物質」有機フッ素化合物によって東京の地下水が汚染されていた。健康被害は、汚染源は。その真相に迫る執念の調査報道。
フライパンや防水スプレー、半導体、泡消火剤など、多岐にわたる用途で使われる有機フッ素化合物。発がん性が指摘され、世界では規制の波が押し寄せる。
そんな便利で厄介な物質によって、東京・多摩地区の一部の地下水と飲み水が汚染されていた。
住民に健康影響はあるのか。見えざる汚染源を追跡する過程で露わになったこの国の姿とは。