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このブログで紹介する本が増えてきたのでまとめます。 【テーマ別一覧】 陰謀論、マスコミ、科学的認識論/科学方法論などに関する本 公害問題と食の安全に関する本 医療や生命、バイオテクノロジーなどに関する本 気候変動とエネルギー・資源問題に関する本の一覧 原子力と核兵器に関する本 地...

2024年3月20日水曜日

【おすすめ度●】林公則『農業を市場から取りもどす』日本経済評論社, 2024年

ドイツの有機農業の研究。ドイツの有機農業が、狭義の農業生産だけでなく、生産資材(土地・種苗)から金融まで包括したプロジェクトであることを明らかにしている。
 ただし、率直に言って農業の現実的条件よりも思想が優先されすぎているのではないかという印象は感じた。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
有機農産品を食べるには、高いお金を払うしかないのか。社会への貢献度が高いほどままならない「みんなのための農業」を地域で実現していくために。ヨーロッパを中心に先進的な取り組みを紹介。

2024年3月19日火曜日

【おすすめ度●】烏賀陽弘道『ALPS水・海洋排水の12のウソ』三和書籍, 2023年

爆発事故で損傷した福島第一原発から排出されるいわゆる「処理水」(汚染水)の海洋放出問題をめぐって、論点を体系的に述べた本。全ての論点で著者に賛同するわけではないので、おすすめ度は●にした。12の「ウソ」とは別に、最後の「まとめ」で指摘されている点も重大。「12のウソ」は以下の通り:①国内問題だった放射性物質汚染を国際問題に拡大した ②海洋排水しか方法はない ③タンクの置き場はもうない ④ALPS水排水は被災地の復興に必要だ ⑤ALPS水の海洋排水は廃炉を進めるために必要だ ⑥ALPS水を海洋排水すればタンクはなくなる ⑦風評被害をなくすことが必要だ ⑧ALPS水に放射性物質はトリチウムしか残っていない ⑨福島第一原発のような原発からの海洋排水は世界中でやっている ⑩日本政府の基準を満たしているから安全だ ⑪希釈して排水するから安全だ ⑫環境への影響は長期的に見ても無視できる

出版社ウェブサイトから紹介を引用
★日本政府の12のウソを徹底的に指摘!
★福島第一原発を震災直後から取材し続ける著者による告発
★公開直後から17万再生された動画をもとに緊急出版
 「海洋排水しか方法はない」、「タンクの置き場はもうない」、「ALPS水排水は被災地の復興に必要」、「ALPS水に放射性物質はトリチウムしか残っていない」、「福島第一原発のような原発からの海洋排水は世界中でやっている」、「日本政府の基準を満たしているから安全だ」などなど……
2 023年8月24日、日本政府は福島第一原発からでた汚染水を「ALPS」で浄化した、いわゆる「ALPS処理水」を海洋放出した。ALPSで処理した水は安全で、環境に対する影響はないと発信している。
 「真っ赤なウソです。信じないでください」
 著者は、政府が発信する情報にはウソがあるとして、海洋放出の翌々日、動画を公開した。動画は反響を呼び、1か月経つころには17万回再生された。
 本書は、動画で話した内容に大幅な加筆修正を施し、一冊にまとめあげた。


2024年3月16日土曜日

【おすすめ度○】半田滋『台湾侵攻に巻き込まれる日本』あけび書房, 2023年

防衛費」が約2倍(約5兆円→約10兆円)に増やされるなど、急激に戦争国家化が進む現在の日本の状況をわかりやすく描いている。 内容:与那国島の基地化の進行と地元の反応(ルポルタージュ) 中国の台湾侵攻の可能性 防衛費対GDP比2%の正体 安倍政権の憲法無視とそれを継承する岸田首相 自衛隊教育が抱える問題など
 現在、政府は中国との戦争に備えて宮古諸島で住民避難用のシェルターを建設しているが、今の政府は、中国と戦争になってもなぜか中国軍は先島諸島しか攻撃してこないと想定しているようだ。なぜ、他の目標、例えば原子力発電所に対する攻撃はないと考えるのだろうか。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
安倍政治の「継承者」、岸田首相による敵基地攻撃・防衛費倍増の真実
台湾有事は2027年までに起きる?
米中が軍事衝突すれば日本が攻撃対象になり、沖縄が「捨て石」にされる!
「敵基地攻撃能力の保有」で「専守防衛」を投げ捨て「新しい戦前」に向かう岸田政権の危険性を問う。


2024年3月14日木曜日

【その他の情報】一覧

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【おすすめ度○】巽直樹『カーボンニュートラル』日本経済新聞出版, 2021年

カーボンニュートラルをはじめとする気候変動をめぐる国際金融業界の動きを紹介する本。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
「脱炭素社会」「グリーン成長」へと舵を切る世界経済。ビジネスからファイナンスまで、来たるべき「新しい日常」を展望する。
おすすめポイント
・気候問題への対応が“経済"の主導権を左右する!
・2050年に向け動きを加速する世界で何がどう変わるのか?
・最先端の動きを整理し、やさしく解説する。
 本書は、カーボンニュートラルという、もうひとつの「新しい日常」の全体像をザックリと把握し、現在何が起こっているのか、課題は何か、2050年に向けて今後どのようなことが起こり得るのか、ビジネスにはどのような影響があるのかを、これまでの脱炭素政策の動向も踏まえ理解できるようにすることを目指すもの。著者は、海外での再エネ発電投資・事業運営、排出権取引などに関わる政府のフィージビリティスタディに多数関与したほか、現在は国内企業向けにエネルギー・環境関連のコンサルティングを提供。各種学会・研究機関などとの共同研究にも携わっている。

日経BPウェブサイトに掲載されている書評

2024年3月13日水曜日

【おすすめ度●】川崎修・杉田敦 編著『新版補訂版 現代政治理論』有斐閣アルマ, 2023年

2006年に初版が出た本の新版補訂版。主にリベラリズムとデモクラシーに関する思想諸潮流を紹介している。この本では、おそらく意図的に、現実の政治問題と政治思想・理論との関係があまり書かれていないので、この本を読んだ人は「政治理論・思想とは、現実の政治とはあまり関係が無いものだ」という感想を持つだろう。そのためこの本は初めて学ぶ人向けとは言えず、おすすめ度も☆(教科書)ではなく●にした。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
自由とは何か、公正な社会とは何か―われわれが直面しつつあるさまざまな政治課題は、政治的価値、理念、規範に関わる問題を含んでいる。
リベラリズムとデモクラシーに関係するテーマを軸に,現代の政治理論の重要な主題や概念をとりあげて,わかりやすく解説した好評テキスト。新版刊行後の政治理論研究の進展をふまえ全体を見直すとともに,文献情報もアップデート。より深く政治を考えたい人に最適。

【おすすめ度☆】橳島(ぬでしま)次郎『科学技術の軍事利用』平凡社新書, 2023年

科学と軍事の関係について、現代的なトピックを取り上げて問題提起する良書。著者は、科学者の軍事への協力には、「越えてはならない線」があるという考え方。 内容:科学・技術と戦争の結びつき 軍民両用(デュアルユース)技術 人工知能兵器 兵士の強化改造 軍による人体実験の現状と課題

出版社ウェブサイトから紹介を引用
人工知能兵器、兵士の強化改造、人体実験の是非を問う
科学技術の発展と軍事研究の表裏一体の歴史を振り返り、AI兵器やゲノム編集、人体実験など喫緊の倫理的課題を第一人者と考える。

2024年3月5日火曜日

【おすすめ度●】川名晋史『在日米軍基地』中公新書, 2024年

在日米軍基地が、米軍基地だけでなく、国連軍基地を兼ねていることを重視した本。在日国連軍に関する本はこの本が事実上初めてといってよいのではないか。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
世界で最も多くの米軍基地を抱え、米兵が駐留する日本。米軍のみならず、終戦後一貫して友軍の「国連軍」も駐留する。なぜ、いつから基地大国になったのか。米軍の裏の顔である国連軍とは。本書は新発見の史料をふまえ、占領期から朝鮮戦争、安保改定、沖縄返還、冷戦終結、現代の普天間移設問題まで、基地と日米関係の軌跡を追う。「日本は基地を提供し、米国は防衛する」という通説を覆し、特異な実態を解明。戦後史を描き直す。




2024年2月10日土曜日

【おすすめ度○】マクシム・シュワルツ『なぜ牛は狂ったのか』紀伊國屋書店, 2002年

著者はパスツール研究所・元所長。プリオン病が発見されるまで、伝染性の病気はDNAまたはRNAを持った病原体によって引き起こされるものであると考えられていた。「たんぱく質の一種であるプリオンが伝達性の重篤な病気を引き起こす」という、それまでの常識を覆す説が通説になるまでの研究の歴史をわかりやすく描いている。良書だが内容が古くなっているので◎ではなく○とした。
 なお、フランスでは、低身長症治療用の脳下垂体ホルモンが異常(病原性)プリオンで汚染されていたことが明らかになっている。そのため脳下垂体ホルモンの治療を受けた数万人から100人強の新型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者が発生したが、著者は脳下垂体ホルモン治療を停止しなかった判断は正しかったとしている(著者はパスツール研究所の元所長なのでこの件の当事者)。一方、イギリス・アメリカではフランスとは異なり人の遺体から抽出した脳下垂体ホルモンによる治療はいったん中断し、遺伝子組み換えによるホルモン生産が実用化された段階で治療を再開した。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
“狂牛病パニック”のさなかフランスで出版され、「真実と嘘を見究めるのに不可欠」と評された本。三世紀におよぶ姿なきウィルスの正体を追跡する人間の物語を、ミステリー仕立てで描く。牛肉や牛乳を口にしても平気なのか?予防と治療の可能性は?いま何をなすべきか…といった問題にも真摯に答える。


【おすすめ度○】クリストファー・プレストン『合成テクノロジーが世界をつくり変える』インターシフト, 2020年

化学・生物分野での最新テクノロジーが未来にどういう影響を及ぼすか考察する本 主な内容:生命・物質地球の未来と人類の選択 新次元の物質をつくる 原子の位置を動かす DNAオンデマンド 人工生物 種の移転と復元 大気の改造など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
生命・物質・地球をつくり変える合成テクノロジー。
人類が神の領域に迫りつつあるいま、
「変成新世」における未来への選択が問われる。

【おすすめ度☆】竹内昌治・日比野愛子『培養肉とは何か?』岩波ブックレット, 2022年

培養肉の超入門書。内容:なぜ今培養肉が注目を集めているのか 培養肉の種類と作り方 培養肉の期待と不安 立ちはだかるハードル

出版社ウェブサイトから紹介を引用
期待の一方、不安もある培養肉。作製に必要な先端技術と、社会における課題をまとめた超入門書。
2022年3月、培養ステーキ肉が日本で試食された! 食料不足などを背景に登場、期待の一方、不安もある培養肉は、種類がいろいろ、作製技術も異なる。ウシのステーキ様肉作製に成功した著者が、用いられた先端技術と将来の可能性を、社会の受け入れを検証する著者が課題を、最低限の基礎知識としてまとめた超入門書。

2024年1月31日水曜日

【おすすめ度○】青野利彦『冷戦史(上)(下)』中公新書, 2023年

第二次世界大戦終結からソ連崩壊までの通史。入門書とは言えない内容なので「おすすめ度○」にした。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
【上巻】
1945年に第二次世界大戦が終わると大国の協調は崩壊し、アメリカ中心の西側陣営とソ連中心の東側陣営による冷戦が始まった。ヨーロッパではドイツが東西に分断され、東アジアでは中国の国共内戦、朝鮮戦争という「熱戦」が勃発。さらに脱植民地化の潮流に米ソが介入し、冷戦は第三世界にも拡大した。上巻では、1962年のキューバ・ミサイル危機で核戦争寸前に至るまでを描く。世界的な視野から冷戦を俯瞰する通史。
【下巻】
キューバ・ミサイル危機後、泥沼化するベトナム戦争が世界に衝撃を与えた。1960年代末から米中ソはデタント(緊張緩和)へ向かうものの、70年代末には再び対立が深まり「新冷戦」と呼ばれた。だが、その背後では西側経済の優位と東アジア経済の躍進により、第三世界の国々が社会主義を放棄しつつあった。そしてソ連にゴルバチョフが登場し、冷戦は終焉を迎えるが――。戦争と対立が続く現代に、冷戦は何を遺したのか。



2024年1月30日火曜日

【おすすめ度◎】手塚洋輔『戦後行政の構造とディレンマ』藤原書店, 2010年

予防接種は、有害物を注射して免疫をつくるものなので、少数例とはいえ被害が発生するのは不可避である。その一方で予防接種をしなければ、防げるはずの病気の蔓延という事態を招く。このようなジレンマに直面した行政はどう対応すべきか、日本の予防接種行政の実態と変遷を踏まえて深く考察した良書。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
保護者、医療関係者、行政関係者、メディア関係者、必読!
占領期に由来する強力な予防接種行政はなぜ「国民任せ」というほど弱体化したのか? 安易な行政理解に基づく「小さな政府」論、「行政改革」論は「行政の責任分担の縮小」という逆説をもたらしかねない。現代の官僚制を捉える最重要の視角。


【おすすめ度○】宮脇良二『クライメートテック 』日本経済新聞出版, 2023年

気候変動対策に関わるベンチャーの紹介が中心で、クライメートテックの概要とメカニズムや現在のブームとオバマ政権グリーン・ニューディールとの違い、日本がとるべき政策についても述べられている。
 ただし、SMR建設計画が中止になったNuScaleも「注目企業」の一つとしてあげられており(215ページ)、この本の性格上仕方ないとは思うが紹介されている企業は「玉石混交」と思われる。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
脱炭素の潮流が生み出す巨大市場!
 世界の投資はGAFAやSaaS系企業を中心とするIT企業から、カーボンニュートラルを目指すスタートアップ企業群である「クライメートテック」に向かいつつあります。
 しかし、クライメートテックにはこれまでの経済とは異なる力学があり、それを正しく理解しなければ、この波を捉えることは難しいのが実情です。
 本書は日本企業のビジネスマン、投資家、起業家が、クライメートテックの背景と力学を本質から理解した上で、クライメートテックの最新のトレンドを把握することを目的とします。

2024年1月28日日曜日

【おすすめ度☆】三輪泰史『フードテック入門』日刊工業新聞社, 2022年

1テーマ2ページ形式で食料・農業をめぐる新しい動向を解説している本。代替肉・藻類の利用・昆虫食・植物工場・スマート育種・陸上養殖・フードテックを取り巻く政策など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
人口増に伴う食糧・栄養不足への処方箋として注目集まる「フードテック」の全容と、それを支える基盤システムや要素技術、市場性をまるっと紹介。大豆ミートや食用藻類など代替素材の開発動向や、ITを駆使した生産体系を詳述。食の安心と安全を守る仕組みにも迫る。

2024年1月21日日曜日

【おすすめ度○】将基面貴巳『言論抑圧 矢内原事件の構図』中公新書, 2014年

日本の侵略戦争と植民地支配を批判していた矢内原忠雄・東大教授が攻撃され、東大教授退職に追い込まれた「矢内原事件」を中心にして、いわゆる「平賀粛学」や「人民戦線事件」など、日本の日中戦争~第二次世界大戦期の言論抑圧事件・大学の自由侵害事件の歴史。

Hontoから紹介を引用
戦時下日本における言論抑圧事件の一つ、矢内原事件は、なぜどのようにして発生したのか。そして、それはいかなる出来事として当時の日本社会において理解されたのか。矢内原事件の全体像を歴史的に「復元」する。


【おすすめ度☆】菅原宏太・松本睦・加藤秀弥『地方財政の見取り図』有斐閣ストゥディア, 2023年

標準的な地方財政の入門書。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
身近であるけれども取っつきにくい地方財政について,コンパクトにかみ砕いて解説する入門テキスト。地方財政の役割や仕組み,地方公共団体の歳出・歳入にかかわる諸制度,そして制度の背景にある理論について,バランスよく説明していきます。


【おすすめ度☆】笹尾俊明『循環経済入門』岩波新書, 2023年

環境経済学に基づいた循環経済や廃棄物問題に関する教科書的な本。内容:循環型社会から循環経済へ 廃棄物処理・資源循環はタダではない 廃棄物処理・資源循環の効率性と公平性 経済的インセンティブが生み出す循環 拡大生産者責任(動脈産業と静脈産業の連携) 食品廃棄物・食品ロス問題 プラスチック問題 循環経済に向けた多様なアプローチなど

出版社ウェブサイトから紹介を引用
「サーキュラーエコノミー(循環経済)」とは何か。持続可能な生産・消費、廃棄物処理・資源循環のあり方を経済学から展望する。
ごみ問題が社会問題化してから半世紀以上が過ぎた。これまでの廃棄物処理政策の延長線上での「循環型社会」にとどまらない「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への転換が世界では進む。持続可能な生産・消費そして廃棄物処理・資源循環のあり方を経済学から考えて、新しい経済の形、成長戦略を展望する。


【おすすめ度○】内藤正典『トルコ 建国100年の自画像』岩波新書, 2023年

「イスラム教」と「世俗主義」という2つの性格を持つトルコという国の独自性がわかって面白い本だが、ややエルドアン政権に好意的すぎるような気がしなくもない。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
欧米のフィルター抜きでこの国の実像を見る。
オスマン帝国の崩壊と過酷な独立戦争を経て、世俗主義の国家原則をイスラム信仰と整合させる困難な道を歩んできたトルコ。様々な政治的危機に直面しつつ新たな自画像を模索した波乱の過程を、トルコ研究の第一人者が繙く。


【おすすめ度○】東海林智『15歳からの労働組合入門』毎日新聞社, 2013年

過労死、若者の就職難、労働者の尊厳を損なう働かせ方などをめぐるルポルタージュ集。および首都圏青年ユニオンの取り組みの紹介など。本の題名とは異なり高校生向けの入門書ではない。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
いま労働に尊厳はあるか?若年労働者が置かれた「貧困の現場」を告発しつつ、労働組合を通じて働く希望を取り戻す道を呈示する画期的ルポルタージュ。

書評


2024年1月20日土曜日

【おすすめ度☆】将基面貴巳『従順さのどこがいけないのか』ちくまプリマ―新書, 2021年

権力者に服従することの問題点と、服従から脱すること(不服従)とは何かが書かれている。「政治」の本質にかかわる重要な内容。ただし、(おそらく意図的に)政治制度の話をせず、人々の心理の話におおむね限定されている。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
「みんな、そうしているよ」「ルールだから、しかたがない」「先生がいってるんだから」この発想がいかに危険なものなのか、政治、思想、歴史から解明します。
理不尽な出来事に見てみぬふりをしていませんか?誰かのいうことに従っていても、世の中は解決しない問題だらけ。打開するには自分で声をあげるしかありません。そうしたあなたに勇気と思考を与えます。


2024年1月15日月曜日

【おすすめ度◎】外山尚之『ポピュリズム大陸南米』日本経済新聞出版, 2023年

ベネズエラの混乱、アルゼンチンの長期的没落を中心にして、南米各国におけるポピュリズムの台頭とそれが引き起こす問題点をわかりやすく描いている。著者は、南米大陸での極端な貧困の格差こそがポピュリズム拡大の原因であると指摘している。ポピュリスト政権は、財政規律を無視して貧困層に現金などをばらまくことによって主に貧困層の支持を拡大した。しかしそのようなやり方は持続可能ではなく、いずれ財政危機等の問題が発生してポピュリストは政権を失う(ベネズエラではポピュリスト政権が軍と手を組んで軍事独裁政権化した)。しかし貧困層を放置するような政治が続くと、再びポピュリストが支持を盛り返してくる。
 このように筆者はポピュリストと、それに対抗する側の双方を批判するが、それでは貧困の格差をどうやって解消すべきかは述べていない。なお著者はアメリカにも批判的であり、明確な根拠を示してはいないが、ベネズエラのグアイドを「ワシントンの指示通りに動くことしか許されない立場の人間」と断定している(83p)。アメリカの間違った南米への介入が、現地で反米感情を生み、それがポピュリスト支持の一因になっていると考えているようだ。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
元現地特派員による渾身のルポルタージュ!
機会の不平等による格差の再生産、貧困の連鎖で、ポピュリズムへの道を突き進む南米。
南米と日本の「不平等と格差」は“程度の問題”に過ぎない。
南米のリアルから日本の危機をも示す警告の書。
目次
序章
第1章 ベネズエラ 「21世紀の社会主義」の崩壊
第2章 アルゼンチン 落日の大国を覆う投票の呪縛
第3章 ブラジル 怒りが揺らす社会秩序
第4章 チリ、コロンビア、ペルー、ボリビア 格差が招く終わりなき混乱
第5章 ポピュリズム大陸から日本への警告


【おすすめ度●】塩川伸明 編『ロシア・ウクライナ戦争 歴史・民族・政治から考える』東京堂出版, 2023年

塩川氏による「ロシア・ウクライナ戦争の背景と展開」をはじめとして、実力ある研究者による力作論考を収録している。 他の内容:ルーシの歴史とウクライナ 現代ウクライナの政治(脆弱な中央政府・強靭な地方政府) 「歴史認識」をめぐるロシアとウクライナの対立 自由主義的国際秩序とロシア・ウクライナ戦争

出版社ウェブサイトから紹介を引用
ルーシの歴史や宗教・民族、ウクライナ現代政治、ナチズムを巡る歴史認識問題、新世界秩序など第一級の専門家が戦争の背景を読み解く。
ウクライナ情勢が泥沼化している。なぜ戦争は始まり、そしていつ終わるのか。様々な情報が飛び交う中、本書は、古代ルーシの歴史からこの地域の民族・宗教的背景、ウクライナ独立以降の現代政治、ナチズムをめぐり政治化する歴史認識問題、冷戦後の新世界秩序の問題など、それぞれの分野を代表する専門家が幅広い視野で戦争の背景を冷静に読み解く。第一線の専門家が叡智を集結して届ける渾身の一作は、この戦争について多角的な視点から考えるために欠かせない作品である。


2024年1月14日日曜日

【おすすめ度○】ダニエル・ヤーギン『新しい世界の資源地図』東洋経済新報社, 2022年

エネルギーをめぐる世界的な変動について詳しく述べられている。内容の例:シェールガスとシェールオイル パイプラインの戦い ロシアの資源戦略 中国の資源戦略 中東における石油と紛争の歴史 自動車の未来 気候変動とエネルギー
なお原子力についてはほとんど述べられていない。環境保護運動を過剰に敵視する記述があるのは気になる。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
原油価格はなぜ激しく変動するのか?
米中関係はどうなるのか?
地政学とエネルギー分野の劇的な変化によって、どのような新しい世界地図が形作られようとしているのか?
地政学リスクから第一人者が読み解く『ウォール・ストリート・ジャーナル』ベストセラー

エネルギー問題の世界的権威で、ピューリッツァー賞受賞者の著者が、エネルギー革命と気候変動との闘い、ダイナミックに変化し続ける国際政治の地図を読み解く衝撃の書。最新情報が満載!

日本人が知らない資源戦争の裏側とは?
米国vsロシア・中国の新冷戦、エネルギー転換の未来を描く!

[米国]「シェール革命」で中東と距離を置く
[ロシア]市場を求めて中国と急接近
[中国]「一帯一路」で中東・欧州にも影響大
[中東]石油需要枯渇への危機感が増す
[自動車]石油の地位を脅かす自動運転車と電気自動車
[気候変動]再生可能エネルギーや政策の役割の比重が増大




【おすすめ度○】成蹊大学法学部 編『教養としての政治学入門』ちくま新書, 2019年

題名は「入門書」となっているが、実際には入門書ではなく論文集。面白い内容だが、(おそらく意図的に)各章の著者がどの政党を支持しているか表に出ないテーマが選択されているので、政府を批判するような内容はない。内容:日本の政治システム(議院内閣制と政党政治) 公務員制度批判について考える 権限と財源から見た地方自治 現代世界における戦争と暴力 官僚制の思想史 敗戦の経験とデモクラシー 戦後日本外交史入門 ロシアにおける第二次世界大戦の記憶と国民意識 生活保障システムを比較する アメリカ政治における政治不信の高まりと政治的分極化 変貌するドイツ政治 中国の政治史と政治思想史(古代から帝政の終焉まで)

出版社ウェブサイトから紹介を引用
いま政治学では何が問題になっているのか。政治史・政治理論・国際政治・福祉・行政学・地方自治などの専門研究者が12のテーマで初学者を導く政治学への道案内。


【おすすめ度◎】大西康之『電機メーカーが消える日』講談社現代新書, 2017年

日本の電機メーカーの経営危機の原因を深く探る良書。電力各社およびNTTへの過度の売上依存(「電力ファミリー」と「NTTファミリー」)が、グローバル化と電力自由化・通信自由化によって支えられなくなったことが日本の電機メーカー危機の最も重要な原因だとしている。利益が出ない原発に執着しつづけたこと(このため東芝はウェスチングハウス買収で巨額損失を出した)がその典型的な例だが、問題は原発だけではない。日本の電機メーカーのスマホ進出が遅れ、結局はスマホ市場で敗退することになったのも、NTTがiモード(いわゆるガラケー)を維持しようとしたからだと指摘している。かつて日本の電機メーカーが世界一になったのも、電力各社やNTTといった「国策」企業が高い値段で買ってくれていたからであり、そのような「ぬるま湯」環境に慣れきってしまった日本の電機メーカーは、グローバル化と自由化の時代には世界のメーカーとの競争に負けて衰退した。
 本書ではここまで書かれていないが、実はこのような「ぬるま湯につかり切った産業の衰退」は電機産業だけで起きたことではない。バブル崩壊後の日本は、自動車など少数の例外を除いてあらゆる産業で同じことが起こって世界の中での競争力を失っていった。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
 巨大な負債を抱え、会社解体の危機に喘ぐ東芝――いや、東芝だけではない。かつて日本企業を代表する存在だった総合電機が軒並み苦境に陥っている。東芝・ソニー・日立ほか大手8社の歴史や経営を詳細に分析することで日本の総合電機がはまった巨大な陥穽を描く。名著『失敗の本質』総合電機版とも言える1冊。

【担当者挨拶】
本書が生まれたきっかけは、著者となるジャーナリストの大西康之氏が語った次のセリフでした。
「東芝をはじめとする日本の大手電機メーカーは、国内に築かれた、ある二つの巨大な『ファミリー』に所属することで、これまで計り知れぬほどの恩恵を受けてきました。そしてそのファミリーというシステムそのものが、結果的に総合電機を衰退させる大きな原因にもなりました。その構造を知らずに、昨今の総合電機の凋落を真に理解することは難しいんです」
日本の電機メーカーが属していた二つの「ファミリー」とは何か。そのファミリーがなぜ、電機メーカーを育て、そして衰退させる原因になったのか――本書の序章はその「謎解き」「種明かし」。ファミリーの正体について大胆に迫っていきます。

続く第1章~第8章では、日本を代表する大手電機メーカー8社を詳細に分析し、日本の電機が負け続けた「本当の原因」「失敗の本質」に迫っています。目次を一部抜粋してみます。
東芝・・・      待ち受ける”廃炉会社”への道
NEC・・・      通信自由化時代30年を無策で過ごした
シャープ・・・    台湾・ホンハイ傘下で再浮上
ソニー・・・     脱エレクトロニクスで見えてきた光明
パナソニック・・・ 「車載電池」「住宅」の次に目指すもの
日立製作所・・・ 「技術の日立」を過信し、消費者を軽んじた
三菱電機・・・   実は構造改革の優等生?
富士通・・・    進取の気性を失い、既得権にしがみつく

表現に最新の注意を払いつつも、本書では「次に危ないのはどこ?」「生き残る会社は?」といった点にも触れています。大西氏の言葉を借りるならば、そのヒントは「適者生存」「恐竜は滅ぶ。生き残るのは哺乳類」といったあたりにありそうです。(HA)

【内容紹介】
 巨大な負債を抱え、会社解体の危機に喘ぐ東芝――かつて日本企業を代表する存在だった総合電機が軒並み苦境に陥っている。東芝・ソニー・日立ほか大手8社の歴史や経営を詳細に分析することで日本の総合電機がはまった巨大な陥穽を描く。名著『失敗の本質』総合電機版とも言える1冊。


2024年1月8日月曜日

【おすすめ度☆】荻原和樹『データ思考入門』講談社現代新書, 2023年

データ可視化の多様な方法を紹介する良書。ちなみに著者は萩原(はぎわら)ではなくて荻原(おぎわら)。

出版社ウェブサイトによる紹介を引用
統計や数字に強くなる!
現代人必修の「データを使いこなす力」を、GoogleやSmartNewsなどで教えるエキスパートが分かりやすく解説。
真実を見抜き、正確に伝えるための「データ思考」入門。

◇◇◇◇◇◇◇◇
「データ可視化」は現代人必修!
「この本では、データ可視化を効果的に行うために必要な「データ思考」とでも呼ぶべき思考法を丁寧に解説していきます。この本を読むことで、データを正しく読めるようになるのはもちろん、実際に皆さんがデータを使いこなし、効果的に情報を伝えるための「データ可視化のための考え方」を身につけることができます。数字や統計に苦手意識がある方でも、ほんとうの意味で「データに強く」なれるでしょう。」(「はじめに」より)

【本書の内容】
・人はデータを「読む」ことはできない
・コロナの感染状況を最も的確に表現したグラフ
・ナイチンゲールが作った「データ可視化」の名作
・みんな騙される「詐欺グラフ」の見分け方
・年収が上がるほど血圧が高くなる?
・分かりやすいグラフに不可欠な「データの絞り方」
・「データの軸」を見定めよ
・甲子園投手の「過剰投球」を一目で理解させるには
・「台風の進路予想図」の大いなる誤解   ……ほか



2023年12月21日木曜日

【おすすめ度○】川上泰徳『イスラムを生きる人々 伝統と「革命」のあいだで』岩波書店, 2012年

著者は(出版当時)朝日新聞記者。2012年のエジプト社会(2013年のクーデターの前で、ムスリム同胞団政権の比較的自由だった時期)の中で、イスラム教徒たちがどのように生きているか、イスラム教が社会の中でどういう役割を果たしているかを取材した好著。クーデター後の現在では状況が異なる点には注意が必要。
途中、多くの人に不快と感じられそうな話題が出てくるが、その部分は読み飛ばしてよい。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
人びとに根差した社会のルールとしてのイスラムの姿を,長年取材を続けてきた記者が鮮やかに描き出す.
民衆によって多くの国で独裁政権が倒された「アラブの春」.今その後の民主化を主導するムスリム同胞団などのイスラム勢力に注目が集まっている.いまだ根強い原理主義的なイメージとは異なる,人びとの生活に根差した社会や生き方のルールとしてのイスラムのあり方を,長年中東での取材を続けてきた新聞記者が鮮やかに描き出す.

■著者からのメッセージ
 本書で扱っている事例は,すべて私の個別の取材とインタビューに基づいている.これまで述べてきたように,私は常に「イスラムとは何か」ではなく,「イスラム教徒とは何か」ということを意識してきた.イスラム教徒とは「イスラムを生きる人びと」である,というのが,私なりの答えである.その理由は,私自身がイスラム社会とイスラム教徒に関わりながら,人びとや社会を理解しようと思って手探りをしてきた経過をまとめた本書から自ずと明らかになると思う.(「はじめに」より)


2023年12月17日日曜日

【おすすめ度☆】岡本哲史・小池洋一 編著『経済学のパラレルワールド』新評論, 2019年

「異端派総合アプローチ」と称して、新古典派以外の経済学派(マルクス経済学、ポストケインジアン、進化経済学、レギュラシオン学派等々)のアプローチを解説している。編者の専門の関係上、貿易と開発に関する章が多い。入門書としてはやや難しい。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
本書は、経済学のちょっと変わった入門書です。なぜ変わっているかと言えば、通常、あまり学ぶことのない経済学の異端派学説ばかりを集めた入門書だからです。21世紀の今日、経済学の世界では、新古典派経済学という、効率や競争や均衡を重視するミクロ経済学系統の経済学が主流派として君臨しています。しかし、新古典派が主流派として君臨しているのは、それが唯一無二の正しい経済理論だからではありません。もっと生臭い、政治的な理由ゆえに主流派なのです。簡単に言うと、1990年代の社会主義体制の崩壊以後、資本主義こそが最も優れた経済制度であるとする「資本主義賛美論」が幅を利かすようになり、この過程で、自由放任型の市場競争がいかに効率的であるかを力説する新古典派経済学が、企業経営者や富裕層や保守政治家などの、いわゆる「上級国民様」のニーズに合致して寵愛を受けたため、大学界でそのような研究が増えたのです。他方、競争の「疲弊効果」や貧困や格差問題など、資本主義の暗黒面を指摘するような経済学説は疎んじられ、大学界から徐々に追放されてしまいます。それゆえ、過去30年の間に、大学における経済学教育は著しく画一化しました。1980年代までは、新古典派を含む近代経済学と並行して、マルクス経済学や現代資本主義論や経済学史や経済史などを必修科目として学ぶスタイルが一般的でしたが、現在では、マクロ経済学にしても、ケインズ的な体系が半ば放棄され、ミクロ経済学の応用学問へと変貌し、経済学教育のほとんどが、主流派=ミクロ経済学系統の数学的な科目によって占められるようになったのです。しかし、経済学の世界には、実は、新古典派以外にもさまざまな異端派理論の系譜が存在しており、どの理論にも強い説得力と魅力があります。本書はそうした「大学で学ばない」異端派学説を集め、分かりやすく解説した書籍です。皆さんもぜひ一度、新古典派とは違う「経済学のパラレルワールド(並行世界)」を覗いてみてください。

(編者)

2023年12月14日木曜日

【おすすめ度☆】デボラ・キャメロン『はじめてのフェミニズム』ちくまプリマ―新書, 2023年

多様で複雑なフェミニズムの論点をわかりやすく解説している。人によっては不快と感じられそうな文章もあるが、その部分は読み飛ばして構わない。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
女性にはどんな権利が必要? 「女の仕事」はどう生まれた? 多様で複雑なフェミニズムの議論の歴史を、多様で複雑なまま、でもわかりやすく伝えます。