タワーマンションの問題点をわかりやすく説明している。都市計画の考え方の入門書としてもよい。この本のような本で問題意識を持った後で、本格的な教科書を読むと理解が深まるだろう。具体的には15年おきに大規模改修が必要な構造になっていること、大規模改修のたびに巨額の費用がかかること、災害に弱いこと、停電するとエレベーター停止、水道停止、水洗トイレが使えなくなるなど生活に支障をきたすことなど。
本のおすすめを中心にして、学生のみなさんに役立ちそうな情報を書きます。※このブログで紹介している本はいずれも良書ですが、ここで紹介していない良書もたくさんありますので、これから順次増やしていきます。 【おすすめ度】 ◎=特におすすめ ☆=初学者向けに良い本(教科書や入門書) ○=読む価値が高い本 ●=そのテーマに関心が高い人向け。専門性が高く一般向けではない本と、良書だけど内容が古くなっている本。
注目の投稿
【まとめ】このブログ全体のまとめです。
紹介する本が増えてきたのでまとめます。 【おすすめ度◎】の本(特におすすめする本、このページの下の方に) 【おすすめ度☆】の本の一覧はこちら (教科書あるいは入門書的な本) 【おすすめ度○】の本の一覧はこちら (読むことをおすすめする本) 【おすすめ度●】の本の一覧はこちら (専...
2024年8月29日木曜日
【おすすめ度○】榊淳司『限界のタワーマンション』集英社新書, 2019年
2024年8月27日火曜日
【おすすめ度☆】佐藤健太郎『世界史を変えた薬』講談社現代新書, 2015年
薬と社会のかかわりに関するエッセイ集。ビタミンCが発見されたことにより、長期間の航海が可能になり世界の植民地化が促進された。世界の植民地化によりマラリア(キニーネ)や梅毒(サルバルサン)のような病気が広がり、それに対する薬の研究も進められた。 取り上げられている薬:ビタミンC キニーネ モルヒネ 麻酔薬 消毒薬 サルバルサン サルファ剤 ペニシリン アスピリン エイズ治療薬
2024年8月26日月曜日
【おすすめ度○】辻村英之『おいしいコーヒーの経済論』太田出版, 2009年
コーヒーを通じて世界経済システムの問題点を解明する良書。良書だがやや古いのでおすすめ度は◎でなく○にした。 内容:タンザニアのコーヒー農業 農民と農村の生活 コーヒーのサプライチェーン 先物市場と価格決定 輸出国際カルテルの崩壊など
2024年8月24日土曜日
【おすすめ度●】松本充郎『日米の流域管理法制における持続可能性への挑戦』ナカニシヤ出版, 2021年
アメリカの水関連法制およびその法哲学的基礎であるコモンズ論に関する詳しい考察。カリフォルニアの水取引制度など。著者の死去後に友人たちが集まって論文を整理して本をつくったという驚くべき経緯で作られた本。
洪水による被害を抑制しながら、水資源の利用と流域環境の持続的利用とをどのような法的手段によって実現できるのか。日米水法の比較研究から明らかにする。
【おすすめ度☆】山下真一『資源カオスと脱炭素危機』日経プレミアシリーズ, 2022年
ロシアのウクライナ侵攻後、石油どころか石炭さえも復活の兆しがみられる「カオス」的状況の説明。他にも金属鉱物、食料、肥料などの状況や、環境破壊的ビジネスから投資資金を引き上げる動き(ダイベストメント)も説明されている。あまり深い議論はされていないが、「入り口」の議論としては読みやすい。
【おすすめ度○】ジョン・マコーミック『地球環境運動全史』岩波書店, 1998年
1992年のリオ会議(国連環境開発会議)までの地球規模の環境保護運動の歴史、特に1970年代の動きに詳しい。良書だが古いのでおすすめ度は◎でなく○にした。
2024年8月21日水曜日
【おすすめ度●】山本忠通・内藤正典『アフガニスタンの教訓 挑戦される国際秩序』集英社新書, 2022年
2024年8月16日金曜日
【おすすめ度☆】佐原隆幸・徳永達巳『国際協力アクティブラーニング』弘文堂, 2024年
国際協力の各側面をワークブック形式で体験しながら学ぶ本 安全な水の確保 母子手帳 初等教育 インフラ整備 国際協力プロジェクトとは何か ロジカル・フレームワーク手法 PCM手法 PLA手法 ODAと国際平和協力 組織制度作り 小規模融資 新しい国際協力の取り組み 地球規模の課題 貧困削減 財務分析論 ジェンダー 援助者のふるまい
【おすすめ度●】有馬純『地球温暖化交渉の真実 国益をかけた経済戦争』中央公論新社, 2015年
著者は経済産業省官僚。日本が京都議定書第二約束期間から離脱した時の交渉の中心人物で、日本政府がどのような考え方に基づいて京都議定書から離脱したのかがわかる。
2024年8月14日水曜日
【おすすめ度●】宮田律『ガザ紛争の正体 暴走するイスラエル極右思想と修正シオニズム』平凡社新書, 2024年
ヨーロッパや中東での反ユダヤ主義、イスラエルの歴史、ガザ紛争など様々な考察が書かれていて参考になるが、「緊急出版」であって体系的ではない。
2024年8月13日火曜日
【おすすめ度☆】朝日新聞取材チーム『野生生物は「やさしさ」だけで守れるか? 命と向きあう現場から』岩波ジュニア新書, 2024年
獣害を引き起こす動物や外来生物の駆除に関わる問題。ただし、外来生物問題の一因になっているペット産業や、開発による自然破壊の問題は一切取り上げられていない。「駆除すべきかどうか」という点に限定して考えていたら、「難しい問題ですね、簡単に答えは出せませんね」というところから議論を進めることは難しい。
2024年8月12日月曜日
【おすすめ度●】文藝春秋 編『統一教会 何が問題なのか』文春新書, 2022年
安倍元首相殺害事件の後で、文藝春秋に掲載された統一教会に関する記事を集めた本。「原理講論」の分析などもあるが、かなり古い記事も収録されている。保守の立場からだと、統一教会がどう見えるのかがわかる。統一教会の教義が「反日的」で、自民党への統一教会の教義の影響力は小さい(逆に、統一教会が自民党から影響を受けている)と主張している。
2024年8月11日日曜日
【おすすめ度○】須田桃子『捏造の科学者』文藝春秋, 2014年
著者は毎日新聞化学環境部の有能な科学記者。日本の科学界をゆるがし、自殺者も出してしまったSTAP細胞事件に関する取材の記録。
【おすすめ度☆】尾林芳匡『公園の木はなぜ切られるのか 都市公園とPPP/PFI』自治体問題研究所, 2024年
都市公園のPPP/PFIに関する入門書的な本。外苑再開発の問題などを取り上げている。PPP/PFIって何だろうと思った人が最初に読んでみるのに適した本。
【おすすめ度●】菅原出『民間軍事会社』平凡社新書, 2024年
近年、急速に規模が拡大し、問題を多発させている民間軍事会社の現状と機能に関する本。エグゼクティブ・アウトカムズ(南アフリカ) ブラックウォーター(アメリカ) ワグネル(ロシア)の事例など。なおこの3社はいずれも自国政府と対立して潰された。
2024年8月10日土曜日
【おすすめ度●】坪郷實『脱原発とエネルギー政策の転換』明石書店, 2013年
福島原発事故後のドイツの原子力・エネルギー政策の転換の分析。良書だが内容が古くなっているのでおすすめ度は●にした。 内容:ドイツの反原発運動 シュレーダー政権の原子力合意 市民主導のエネルギー転換 自治体、州政府のエネルギー政策 再生可能エネルギーの普及 メルケル政権による脱原発の再決定 市民意識と環境団体の政策提言活動 原子力ルネッサンスはあったのか 電気料金は上がるのか 日本とヨーロッパ
2024年8月9日金曜日
【おすすめ度●】共同通信社会部移植取材班『凍れる心臓 封印された和田心臓移植』共同通信社, 1998年
日本における臓器移植を何十年間も停滞させる原因になった札幌医大「和田心臓移植」に関する多数の関係者への取材。この本を読む限り、心臓を摘出するためにドナーに対する救命治療が放棄され、またレシピエントも移植に適した状態ではなかったと判断せざるを得ない。良書だが古いのでおすすめ度●にした。
2024年8月8日木曜日
【おすすめ度○】ジャン=ピエール・ボリス『コーヒー、カカオ、コメ、綿花、コショウの暗黒物語』作品社, 2005年
発展途上国におけるコーヒー、カカオ、コメ、綿花、コショウ生産者を犠牲にすることで先進国が反映するグローバル経済=「世界システム」の仕組みを描いている。古い本だが、この本で指摘された問題は今でも本質的には変わっておらず、価値を失っていない。
【おすすめ度●】益田実・齋藤嘉臣 編著『冷戦史』法律文化社, 2024年
超大国米ソの出現からソ連崩壊までの通史。論文集ではなく高度な教科書として使用することを想定して書かれていると思われる。
2024年8月7日水曜日
【おすすめ度○】ピーター・ピオット『エイズは終わっていない』慶応義塾大学出版会, 2019年
エイズ薬の開発により先進国においては「治る病気」になったエイズだが、エイズ薬は高価であり発展途上国においては決して終わっていない。エイズの問題を世界的な経済格差と関係づけて理解する良書。 内容:地球規模のAIDS拡大 HIV感染者数の推計 社会的立場とAIDS アフリカ南部の高度地域流行 女性の権利とAIDS 国際政治課題としてのAIDS 国境を超えた新たな市民社会の運動 治療を受ける権利 エイズ治療薬と特許 コンビネーション予防 エイズの経済学 人権の重要性 長期的な展望
【おすすめ度○】ジョン・ミッチェル『追跡 日米地位協定と基地公害 「太平洋のゴミ捨て場」と呼ばれて』岩波書店, 2018年
米軍の汚染事件、特に沖縄での事例と、日本における米軍活動を制限する(実際には制限が緩すぎてやりたい放題になっている)日米地位協定の問題点。FOIA(アメリカ情報公開法)を活用した公文書の公開の取り組みなど。
【おすすめ度○】ジェイシー・リース『肉食の終わり』原書房, 2021年
非動物性食品システム実現へのロードマップ ビーガニズムの思想 植物性食品や培養肉の技術 変革への戦略など
【おすすめ度●】アンドレ・アンドニアンほか『マッキンゼーが読み解く食と農の未来』日本経済新聞社, 2021年
ビジネスコンサルタントによる農業と食糧産業の分析。農業の専門家ではないが、それだけに専門家とは違った視点で書かれている。 内容:日本農業を取り巻く環境変化を読み解く 農業を取り巻くマクロエコノミクスの変化 技術革新 政策・規制の変化 食習慣・食生活の変化 農業ビジネスの上流プレイヤー 消費者ニーズの変化 代替品・代替手法 新規プレイヤーの参入 日本農業の新しい挑戦
【おすすめ度○】尾林芳匡・渡辺卓也 編著『水道の民営化・広域化を考える』自治体研究社, 2020年
水道の「民営化」を題材にして、公共物の管理・ガバナンスのあり方を考察する本 内容:2018年水道法改正とは 事例(香川県 宮城県 浜松市下水道コンセッション 京都府簡易水道と上水道の統合 奈良市中山間地域 小鹿野町と秩父広域 大阪市の水道民営化反対 大津市のガス事業コンセッション) 上水道インフラの更新における広域性と効率性 水道の民営化・広域化の問題点
2024年8月5日月曜日
【おすすめ度○】石原理『ゲノムの子 世界と日本の生殖最前線』集英社新書, 2022年
生命科学の進歩が医療にもタラいている問題を取り扱っている。 内容:賀建奎によるゲノム編集人体実験問題 胚保存をめぐる動向 体外受精と卵子・精子の譲渡 ミトコンドリア遺伝子の制御 生殖あるいはセックスとは 命の選別 「生命倫理」という弁解あるいは虚構・幻想 各国の動向など
2024年8月2日金曜日
【おすすめ度○】諸富徹 編著『電力システム改革と再生可能エネルギー』日本評論社, 2015年
福島原発事故以降の再エネ大量導入に向けて、制度度技術的課題を解明し、同様の課題を抱えるヨーロッパ諸国での対応を分析した良書。内容がやや古くなっているので、おすすめ度は◎ではなく○にした。 内容:電力システム改革と分散型電力システム 電力システムの計画経済型から市場経済型への移行のための技術と制度設計 再エネ大量導入時代の送電網のあり方 分散型電源大量導入の技術的問題と対策 ドイツにおけるキャパシティーメカニズムの制度設計 欧米における容量市場の制度設計 電力系統の再構築とその費用負担原理 電力システム改革は電力業のパフォーマンスを改善するか
【おすすめ度☆】黒栁正典『人の暮らしを変えた植物の化学戦略』築地書館, 2020年
香り、辛味物質、甘味物質、色素、植物基原食品の機能性物質、生薬など植物が清算する化学物質の概要を説明
【おすすめ度○】岩瀬昇『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか』文春新書, 2014年
著者は元三井物産常務執行役。石油ビジネスの実態について、当事者の立場から解説した良書。なお出版社ウェブサイトでの本書の紹介には「エネルギー界の池上彰」云々と書かれているが、著者は池上彰のような子供向けの解説者とは全く異なる石油業界のプロフェッショナルである。
2024年8月1日木曜日
【おすすめ度○】蓮見雄・高屋定美 編著『欧州グリーンディールとEU経済の復興』文眞堂, 2023年
欧州グリーンディールについて、多角的に分析する良書。やや難しい。 主要内容:欧州グリーンディールの射程 欧州グリーンディールの法的基盤 ウクライナ戦争と脱ロシア依存 産業戦略としての欧州グリーンディール グリーンディールと欧州中央銀行の役割 サステナブル・ファイナンスの拡大に向けたEUの金融制度改革 EUタクソノミーが与えるEU域内の金融・経済活動への影響 グリーンディールの前提としての再エネ政策 経済安全保障としてのグリーンディール
【おすすめ度☆】木下理仁『チョコレートを食べたことがないカカオ農園の子どもにきみはチョコレートをあげるか?』旬報社, 2024年
開発援助について、子どもたちに問題を投げかけて考えさせる本。子ども向けで踏み込んだ考察はされておらず、この本のような問題を子どもたちに投げかけても「貧しい人たちはかわいそう」という程度の感想になってしまうのではないかと思うけど、そういう本の方が読みやすいという人もいるだろう。