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紹介する本が増えてきたのでまとめます。 【おすすめ度◎】の本(特におすすめする本、このページの下の方に) 【おすすめ度☆】の本の一覧はこちら (教科書あるいは入門書的な本) 【おすすめ度○】の本の一覧はこちら (読むことをおすすめする本) 【おすすめ度●】の本の一覧はこちら (専...

2024年8月29日木曜日

【おすすめ度○】榊淳司『限界のタワーマンション』集英社新書, 2019年

タワーマンションの問題点をわかりやすく説明している。都市計画の考え方の入門書としてもよい。この本のような本で問題意識を持った後で、本格的な教科書を読むと理解が深まるだろう。具体的には15年おきに大規模改修が必要な構造になっていること、大規模改修のたびに巨額の費用がかかること、災害に弱いこと、停電するとエレベーター停止、水道停止、水洗トイレが使えなくなるなど生活に支障をきたすことなど。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
大規模修繕は? 災害リスクは? 子育て環境は? 健康影響は? 資産価値は?
  ――あらゆる意味で、タワマンは限界にきている!
◆迷惑施設化するタワマン
武蔵小杉や湾岸エリアのタワマンなど、地元の自治体や住民を取材。
実際の暮らしぶりや、タワマン住民と非タワマン住民の間の溝、交通・保育園・学校の整備状況などを調査。
果たして、タワマンは人間の住み家としてふさわしいのか?
◆「タワマンの子どもは成績が伸びない」!?
教育熱心な住民が多いと言われるタワーマンション。
しかしタワマンで子育てをすることに警鐘を鳴らす専門家もいる。その真意は――?
◆2037年、いくつかのタワマンが廃墟化する
多額の費用と、合意形成の難しさで、大規模修繕は困難を極める。
なぜ、2037年なのか? その理由は本書で!
◆タワマン居住で失うもの
眺望の良さや豪華な共用施設に目を奪われるが、災害時のリスクや、
子どもや健康への影響など、見落とされている点があまりにも多すぎる!


2024年8月27日火曜日

【おすすめ度☆】佐藤健太郎『世界史を変えた薬』講談社現代新書, 2015年

薬と社会のかかわりに関するエッセイ集。ビタミンCが発見されたことにより、長期間の航海が可能になり世界の植民地化が促進された。世界の植民地化によりマラリア(キニーネ)や梅毒(サルバルサン)のような病気が広がり、それに対する薬の研究も進められた。 取り上げられている薬:ビタミンC キニーネ モルヒネ 麻酔薬 消毒薬 サルバルサン サルファ剤  ペニシリン アスピリン エイズ治療薬

出版社ウェブサイトから紹介を引用
 筆者はかつて、医薬品企業の研究所で新薬の研究に携わり、医薬の可能性と危険性について考える日々を送ってきた。もしこの薬があの時代にあったら、あの薬があの人物を救っていなければ、と考えるのは、歴史の愛好者として必然であった。もしコロンブスがビタミンCを知っていたなら、もし特殊アオカビの胞子が、ロンドンの病院のあるシャーレに飛び込んでいなかったら、間違いなく、現在の世界地図は大きく変わっていたはずだ。
 医薬品というものは、どうにも不思議な代物だ。老若男女を問わず、誰もが薬のお世話になっているにもかかわらず、薬について詳しいことはほとんど何も知られていないに等しい。口から飲み込んだ小さな錠剤が、どのようにして患部に届いて痛みや炎症を鎮めるのか、簡単にでも説明できる人は相当に少ないだろう。
 近年は、医薬品の過剰投与や副作用などネガティブな側面ばかりが強調されがちだが、人類は医薬品の発明によってその寿命を飛躍的に伸ばしていた。「死の病」と恐れてきた感染症は、抗生物質の発明により、ありふれた病気になった。あまり意識されないが、いくつかの医薬品は間違いなく、世界史を変え、人類の運命を変えてきた。
 医薬の科学はなおも発展の途上にあり、今後さらに大きく社会を変えてゆく可能性を秘めている――というより、確実に変えてゆくことだろう。とすれば、医薬と人類の関わりを、歴史の流れに沿って眺めておくのは、意義のある試みであるに違いない。


2024年8月26日月曜日

【おすすめ度○】辻村英之『おいしいコーヒーの経済論』太田出版, 2009年

コーヒーを通じて世界経済システムの問題点を解明する良書。良書だがやや古いのでおすすめ度は◎でなく○にした。 内容:タンザニアのコーヒー農業 農民と農村の生活 コーヒーのサプライチェーン 先物市場と価格決定 輸出国際カルテルの崩壊など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
コーヒーの経済研究の第一人者による画期的な業績!
コーヒー好きの人はもちろん、
南北問題や農業問題、フェアトレードに
関心ある方々にも必読の一冊です。

不公正な貿易を変えるために!

この本には、次のような知識と提案が満載です。
◎一杯のコーヒーをおいしく飲むために知っておいた方がいいこと
◎コーヒーをおいしく飲んで、世界の仕組みを少しはマシにする方法
◎コーヒーを飲みながら、コーヒー豆を作る人々の暮らしを想像する
◎コーヒー一杯の価格が、生産者から見て数百倍になっている理由
◎フェアトレードがなかなかのスグレモノである理由について、等々

◆コーヒーをめぐる情報をよく知ればその味わいがもっと深くなります◆


2024年8月24日土曜日

【おすすめ度●】松本充郎『日米の流域管理法制における持続可能性への挑戦』ナカニシヤ出版, 2021年

アメリカの水関連法制およびその法哲学的基礎であるコモンズ論に関する詳しい考察。カリフォルニアの水取引制度など。著者の死去後に友人たちが集まって論文を整理して本をつくったという驚くべき経緯で作られた本。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
治水・利水・環境を総合的に管理する流域管理法制の日米比較
洪水による被害を抑制しながら、水資源の利用と流域環境の持続的利用とをどのような法的手段によって実現できるのか。日米水法の比較研究から明らかにする。



【おすすめ度☆】山下真一『資源カオスと脱炭素危機』日経プレミアシリーズ, 2022年

ロシアのウクライナ侵攻後、石油どころか石炭さえも復活の兆しがみられる「カオス」的状況の説明。他にも金属鉱物、食料、肥料などの状況や、環境破壊的ビジネスから投資資金を引き上げる動き(ダイベストメント)も説明されている。あまり深い議論はされていないが、「入り口」の議論としては読みやすい。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
「時代遅れ」と切り捨てたはずの化石燃料が、ロシアのウクライナ侵攻で改めて脚光を浴びている。
何が起こっているのか。出口はあるのか。
日経の専門記者が、疑問に答える!

脱炭素/カーボンニュートラルが話題になる昨今、もはや化石燃料は時代遅れになったはずだった。
しかし原油や石炭の価格は一向に下がらず、2月末からのロシアのウクライナ侵攻を受けて、
さらに需要拡大の兆しを見せる。
また、EV(電気自動車)や再生可能エネルギーへの転換には多量の金属を必要とするため、
各地で資源争奪の様相を呈している。

時代は逆流し、グローバルな環境重視と脱炭素への取り組みは後退するのか。
本書では、エネルギーを中心にカオス=混迷状態に陥った資源の動きを追う。
「石油・シェールガス」「石炭・天然ガス」「金属」「食料」「ESG・環境投資」などについていま世界で何が起きているのかをわかりやすく解説する。


【おすすめ度○】ジョン・マコーミック『地球環境運動全史』岩波書店, 1998年

1992年のリオ会議(国連環境開発会議)までの地球規模の環境保護運動の歴史、特に1970年代の動きに詳しい。良書だが古いのでおすすめ度は◎でなく○にした。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
森林消滅,野生生物の減少,大気・海洋汚染,原発事故,化学物質の氾濫-人類による終わりなき環境破壊に対して,多様な環境保護運動がなされてきた.世界各地での国内の,そして国際的な100年以上におよぶNGO,国連等による試行錯誤を再現し,人類に残された可能性を提示する.詳細な年表・文献等も収録.

2024年8月21日水曜日

【おすすめ度●】山本忠通・内藤正典『アフガニスタンの教訓 挑戦される国際秩序』集英社新書, 2022年

山本忠通氏は元国連アフガニスタン支援ミッション代表、内藤正典氏はトルコを中心とするイスラム圏の研究者。どちらも主流とは言えない立場の人だが、興味深い対談なので、国際政治、イスラム圏、開発援助などに関心がある人は読んでみるとよい。
ただし、「挑戦される国際秩序」というこの本の副題は内容を適切に反映していない。この本のいいたいことはむしろ逆で、アフガニスタンのタリバンは「国際秩序」に「挑戦」しているのではない、と著者たちは考えている。
また、この本の問題点として、内藤氏の東アジアに関する見解はおかしいといわざるを得ない。おそらく、東アジア地域(中国、韓国、北朝鮮)では現地調査をした経験がなく、日本の新聞やテレビだけを見て思い込みで発言しているのだろう。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
ー国連事務総長前特別代表と中東学者の対話ー

タリバンはなぜ復権したのか?

タリバンの勝利、ウクライナ戦争という冷戦後秩序のゆらぎに迫る

2021年8月、アフガニスタンの首都カブールはタリバンに制圧された。
9・11事件に端を発する2001年のアメリカを中心とする多国籍軍の侵攻でタリバンが政権を追われ20年。
国連、欧米の支援下、自由と民主主義を掲げた共和国政府はなぜ支持を得られず、イスラーム主義勢力が政権奪回できたのか?
アフガニスタン情勢のみならず、ロシアのウクライナ侵攻など、国際秩序への挑戦が相次ぐ中、国連事務総長特別代表を務め、国連アフガニスタン支援ミッションを率いて諸勢力と交渉をしてきた山本氏と中東学者が問題の深層と教訓、日本のあるべき外交姿勢を語る。
揺らぐ世界情勢を読み解くための必読書。

◆推薦◆
「山本忠通、内藤正典両氏はアフガニスタン研究の双璧。
一人は国連における権威、もう一人は国内学会の第一人者。
この二人のタリバンの本質、I.S.やアルカイダとの関係などに肉薄する追及は、読者の興味を引かないはずはない」
明石康氏(元国連事務次長)

「国際社会がおのれと立場を異にする人々の言葉に耳を傾け、そこに”一理ある”ことを受け入れない限り、イスラームをめぐる問題は絶対に解決しない」
内田樹氏(思想家)




2024年8月16日金曜日

【おすすめ度☆】佐原隆幸・徳永達巳『国際協力アクティブラーニング』弘文堂, 2024年

国際協力の各側面をワークブック形式で体験しながら学ぶ本 安全な水の確保 母子手帳 初等教育 インフラ整備 国際協力プロジェクトとは何か ロジカル・フレームワーク手法 PCM手法 PLA手法 ODAと国際平和協力 組織制度作り 小規模融資 新しい国際協力の取り組み 地球規模の課題 貧困削減 財務分析論 ジェンダー 援助者のふるまい

出版社ウェブサイトから紹介を引用
 コロナ禍に続く戦争の勃発で世界的な混乱が長引いています。SDGsの実現には日本の協力が欠かせません。海外ボランティアへの期待はもちろん、海外との業務提携や技術輸出、アジア圏での商業網は日本経済の生命線です。
 しかし、途上国で現地の人たちと一緒に働き、成功を収めるには情熱だけでは足りません。次々と発生するトラブルを解決する現場力を身に付けるためには、多くの先人の知恵を学び、事前にトレーニングする機会が必要です。
 本書は各章末と巻末に掲載された多数のアクティブ・ラーニング用教材で学習内容を確認しながら、現地でのコミュニケーション力と実践力を身に付けることができる画期的教材です。


【おすすめ度●】有馬純『地球温暖化交渉の真実 国益をかけた経済戦争』中央公論新社, 2015年

著者は経済産業省官僚。日本が京都議定書第二約束期間から離脱した時の交渉の中心人物で、日本政府がどのような考え方に基づいて京都議定書から離脱したのかがわかる。

紀伊國屋書店ウェブサイトから紹介を引用
地球温暖化交渉はどう動き、日本は何を目指し戦い、何がCOP21で交渉されるのかをまとめ、今後の日本の課題を示す。
温暖化交渉は国益が冷徹にぶつかる武器なき経済戦争だ!京都議定書延長に「ノー」を突きつけた交渉官が語る交渉の舞台裏。


2024年8月14日水曜日

【おすすめ度●】宮田律『ガザ紛争の正体 暴走するイスラエル極右思想と修正シオニズム』平凡社新書, 2024年

ヨーロッパや中東での反ユダヤ主義、イスラエルの歴史、ガザ紛争など様々な考察が書かれていて参考になるが、「緊急出版」であって体系的ではない。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
2023年10月からのイスラエルとハマスの対立は、イスラエル極右勢力の非人道的な行為が発端となる。真実を知るための緊急出版!
 二〇二三年一〇月七日、ハマスのガザ攻撃により、多数の犠牲者が出たイスラエル。一見すれば、パレスチナ側の暴挙とも受け止められるが、ガザ地区やその周辺地域でのパレスチナ人が置かれる、「アパルトヘイト」に通じる差別・虐待の実態からは、起こるべくして起きた、ガザ紛争の正体が見えてくる。現在もイスラエルのラファ侵攻が懸念されるなど、停戦・終結への道は厳しい状況下にあると言える中東情勢について、現代イスラム研究センター理事長である著者が、極右政党によって暴走するイスラエル政府の非人道的支配の実態を明らかしつつ、解説する。

2024年8月13日火曜日

【おすすめ度☆】朝日新聞取材チーム『野生生物は「やさしさ」だけで守れるか? 命と向きあう現場から』岩波ジュニア新書, 2024年

獣害を引き起こす動物や外来生物の駆除に関わる問題。ただし、外来生物問題の一因になっているペット産業や、開発による自然破壊の問題は一切取り上げられていない。「駆除すべきかどうか」という点に限定して考えていたら、「難しい問題ですね、簡単に答えは出せませんね」というところから議論を進めることは難しい。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
多様な生物がいる豊かな自然環境を保つために、ときにはつらい選択をすることも……。悩みながら命と向きあう現場を取材します。
野生生物を守るのは簡単ではありません。複雑な生態系のバランスを保ち、多様な生きものがいる豊かな自然環境を維持するために、ときには外来生物などを駆除するという、つらい選択をしなければならないこともあります。日々悩みながら命と向きあう現場の人たちを取材し、人と生きものとの共生のあり方を問いかけます。


2024年8月12日月曜日

【おすすめ度●】文藝春秋 編『統一教会 何が問題なのか』文春新書, 2022年

安倍元首相殺害事件の後で、文藝春秋に掲載された統一教会に関する記事を集めた本。「原理講論」の分析などもあるが、かなり古い記事も収録されている。保守の立場からだと、統一教会がどう見えるのかがわかる。統一教会の教義が「反日的」で、自民党への統一教会の教義の影響力は小さい(逆に、統一教会が自民党から影響を受けている)と主張している。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
鈴木エイト氏、宮崎哲弥氏、島田裕已氏ら第一線のジャーナリスト、論者がいま、教団の実態に迫る!
信者からの巨額の献金、霊感商法、合同結婚式、政治家との癒着など、多くの社会問題を引き起こしてきた統一教会。文藝春秋は、30年あまりの間、その問題点を追及してきた。
宗教とカルトの境はどこにあるのか? 政治家と宗教の関係は? 信者家族はどのような被害を受けてきたか? この一冊ですべてがわかる!


2024年8月11日日曜日

【おすすめ度○】須田桃子『捏造の科学者』文藝春秋, 2014年

著者は毎日新聞化学環境部の有能な科学記者。日本の科学界をゆるがし、自殺者も出してしまったSTAP細胞事件に関する取材の記録。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
iPS細胞を超える夢の万能細胞として、華々しく発表されたSTAP細胞。
そのニュースに日本中が熱狂したのも束の間、論文には次々と疑義が浮上する。
一流科学者が揃いながら、なぜ捏造が起きたのか。そしてSTAP細胞の正体とは。
独自取材を重ねた記者が掴んだ全貌。

【おすすめ度☆】尾林芳匡『公園の木はなぜ切られるのか 都市公園とPPP/PFI』自治体問題研究所, 2024年

都市公園のPPP/PFIに関する入門書的な本。外苑再開発の問題などを取り上げている。PPP/PFIって何だろうと思った人が最初に読んでみるのに適した本。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
市民の拠り所で木が切られ、稼ぐ場所への変容
公園の木が切られ、スタジアム、アリーナが起立する! 明治神宮外苑に再開発計画が持ち上がっています。再開発により、外苑の樹木の大量伐採につながるのではないかと、各方面から批判の声があがっています。故・坂本龍一を初め、桑田佳祐、村上春樹らも反対意見を表明しています。実は、このように、「公園の木が切られる」事態は日本全国で起こっています。それは、自治体、公共が市民のために公園を維持するよりも、「稼ぐ公園」へとシフトしているからなのです。そこには、「公園PFI」という手法を用いて、民間企業を取り込み、都市公園の民間化、産業化の動きがあります。大阪、埼玉、東京、静岡、長野、兵庫の実例を取り上げて、いちはやく「なぜ」をつきつけて、都市の拠り所である緑、公園への市民の注目を喚起します。

【おすすめ度●】菅原出『民間軍事会社』平凡社新書, 2024年

近年、急速に規模が拡大し、問題を多発させている民間軍事会社の現状と機能に関する本。エグゼクティブ・アウトカムズ(南アフリカ) ブラックウォーター(アメリカ) ワグネル(ロシア)の事例など。なおこの3社はいずれも自国政府と対立して潰された。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
「戦争サービス業」の変遷と現在地 「プリコジンの乱」で注目されたワグネルから中国の新興企業まで、謎のベールに包まれている「戦争請負産業」の実態と最新情報に迫る。

ロシアによるウクライナ侵攻以降、ワグネルやそのワグネルを率いていたプリゴジンの動向に関する報道がなされる中でその存在が広く知れわたるようになった「民間軍事会社」。世界各国の政府や軍、グローバル企業などからの要請を受けて軍事や安全保障サービスを提供する、れっきとした民間企業の一業態である。戦闘員の訓練、戦略アドバイスから要人の警護に至るまで活動範囲は多岐におよぶが、秘匿性が極めて高い業務実態のため、実態が明らかになることは少ない。本書は民間軍事会社を長きにわたって取材し続けている安全保障の専門家を著者に迎え、民間軍事会社の内容や成立背景、そして転機になった戦争や事件、さらに現状や課題などをまとめた一冊。


2024年8月10日土曜日

【おすすめ度●】坪郷實『脱原発とエネルギー政策の転換』明石書店, 2013年

福島原発事故後のドイツの原子力・エネルギー政策の転換の分析。良書だが内容が古くなっているのでおすすめ度は●にした。 内容:ドイツの反原発運動 シュレーダー政権の原子力合意 市民主導のエネルギー転換 自治体、州政府のエネルギー政策 再生可能エネルギーの普及 メルケル政権による脱原発の再決定 市民意識と環境団体の政策提言活動 原子力ルネッサンスはあったのか 電気料金は上がるのか 日本とヨーロッパ

出版社ウェブサイトから紹介を引用
脱原発の政治的決定を行ったドイツのエネルギー政策と環境政策統合の歩みを歴史的に辿り、3.11後の日本におけるエネルギー政策転換のための課題を整理、脱原発の実現と新たなエネルギー政策展開のための具体的シナリオを提示する。図版・資料も多数掲載。


2024年8月9日金曜日

【おすすめ度●】共同通信社会部移植取材班『凍れる心臓 封印された和田心臓移植』共同通信社, 1998年

日本における臓器移植を何十年間も停滞させる原因になった札幌医大「和田心臓移植」に関する多数の関係者への取材。この本を読む限り、心臓を摘出するためにドナーに対する救命治療が放棄され、またレシピエントも移植に適した状態ではなかったと判断せざるを得ない。良書だが古いのでおすすめ度●にした。

「版元ドットコム」から紹介を引用
封印された和田心臓移植。札幌地検の捜査報告書を基に、社会部記者が数々の疑惑を解き明かし、将来の医療を問う渾身のルポルタージュ。和田心臓移植30年目の真実。

2024年8月8日木曜日

【おすすめ度○】ジャン=ピエール・ボリス『コーヒー、カカオ、コメ、綿花、コショウの暗黒物語』作品社, 2005年

発展途上国におけるコーヒー、カカオ、コメ、綿花、コショウ生産者を犠牲にすることで先進国が反映するグローバル経済=「世界システム」の仕組みを描いている。古い本だが、この本で指摘された問題は今でも本質的には変わっておらず、価値を失っていない。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
なぜ途上国の農民は、死に追い込まれているのか? 欧州で大論争を巻き起こした衝撃の書。
グローバル経済の裏側では、多国籍企業・投機ファンドが空前の利益をあげる一方で、一次産品の生産者たちは極度の貧困に陥っている。

【おすすめ度●】益田実・齋藤嘉臣 編著『冷戦史』法律文化社, 2024年

超大国米ソの出現からソ連崩壊までの通史。論文集ではなく高度な教科書として使用することを想定して書かれていると思われる。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
第2次世界大戦後に冷戦によって引き裂かれた世界はいかなる歴史を歩んだのか。本書では、脱植民地化や欧州統合などとの関わり、さらには地域ごとの冷戦という視点も入れつつ、米ソが超大国として台頭する過程からソ連崩壊に至るまでの全体像を解き明かす。


2024年8月7日水曜日

【おすすめ度○】ピーター・ピオット『エイズは終わっていない』慶応義塾大学出版会, 2019年

エイズ薬の開発により先進国においては「治る病気」になったエイズだが、エイズ薬は高価であり発展途上国においては決して終わっていない。エイズの問題を世界的な経済格差と関係づけて理解する良書。 内容:地球規模のAIDS拡大 HIV感染者数の推計 社会的立場とAIDS アフリカ南部の高度地域流行 女性の権利とAIDS 国際政治課題としてのAIDS 国境を超えた新たな市民社会の運動 治療を受ける権利 エイズ治療薬と特許 コンビネーション予防 エイズの経済学 人権の重要性 長期的な展望

出版社ウェブサイトから紹介を引用
▼元UNAIDS事務局長による、エイズ終結への道筋を語る講義録。
▼科学と政治は、グローバルな課題であるエイズにどう対処すべきか。

いまも毎日約5,000人がHIV に感染し、約3,000人が死亡しているエイズ。その終結に向けて、科学と政治はどう関わり、どう向き合うべきなのか。流行初期からエイズ問題と対峙してきた、科学者・臨床医・元UNAIDS 事務局長でもある著者が、パリのコレージュ・ド・フランスで行った講義録の邦訳。

【おすすめ度○】ジョン・ミッチェル『追跡 日米地位協定と基地公害 「太平洋のゴミ捨て場」と呼ばれて』岩波書店, 2018年

米軍の汚染事件、特に沖縄での事例と、日本における米軍活動を制限する(実際には制限が緩すぎてやりたい放題になっている)日米地位協定の問題点。FOIA(アメリカ情報公開法)を活用した公文書の公開の取り組みなど。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
地球最大の環境破壊者,米軍.沖縄や横須賀基地などの知られざる汚染を暴く,衝撃のルポ.
地球最大の環境破壊者,米軍.その基地はダイオキシンや核物質で高濃度に汚染されている.環境意識の高まりから米国内や他国では浄化に乗り出す一方,日本では地位協定が基地公害を隠蔽する.沖縄や横須賀基地などの知られざる汚染を暴く,衝撃のルポ.

【おすすめ度○】ジェイシー・リース『肉食の終わり』原書房, 2021年

非動物性食品システム実現へのロードマップ ビーガニズムの思想 植物性食品や培養肉の技術 変革への戦略など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
地球環境への多大な負荷、肥満・糖尿病等の要因、劣悪な環境の畜産「工場」…肉食の限界に直面する人類はいま何をすべきか。個人の努力に終わりがちだった脱肉食化を、社会全体として実現するロードマップを具体的に示す。


【おすすめ度●】アンドレ・アンドニアンほか『マッキンゼーが読み解く食と農の未来』日本経済新聞社, 2021年

ビジネスコンサルタントによる農業と食糧産業の分析。農業の専門家ではないが、それだけに専門家とは違った視点で書かれている。 内容:日本農業を取り巻く環境変化を読み解く 農業を取り巻くマクロエコノミクスの変化 技術革新 政策・規制の変化 食習慣・食生活の変化 農業ビジネスの上流プレイヤー 消費者ニーズの変化 代替品・代替手法 新規プレイヤーの参入 日本農業の新しい挑戦


出版社ウェブサイトから紹介を引用
 世界の農業が大きく変わりつつあります。しかしながら、日本国内の農業に関する論調の多くは、国内の農業組織への批判や、既存の農業のやり方、国内企業への批評といった「内向きの議論」に費やされているように見えます。本書は、そうした内向きの枠を飛び越えて、日本農業をマッキンゼーならではの二つの視点から捉え、そこから進むべき将来像および今後期待されるビジネス領域について展望したものです。

【おすすめ度○】尾林芳匡・渡辺卓也 編著『水道の民営化・広域化を考える』自治体研究社, 2020年

水道の「民営化」を題材にして、公共物の管理・ガバナンスのあり方を考察する本 内容:2018年水道法改正とは 事例(香川県 宮城県 浜松市下水道コンセッション 京都府簡易水道と上水道の統合 奈良市中山間地域 小鹿野町と秩父広域 大阪市の水道民営化反対 大津市のガス事業コンセッション) 上水道インフラの更新における広域性と効率性 水道の民営化・広域化の問題点

出版社ウェブサイトから紹介を引用
政府は改正水道法を成立させて、民営化と広域化を推し進めている。新たな版を重ね、全県一元化の広域水道を開始した香川県、民営化を推進する宮城県の現状等を追う。また、埼玉県秩父郡小鹿野町の広域化による水道料金の値上げを初め、全国的な値上げ傾向を捉えて「水道料金の考え方」を新しく設けるとともに、水道法改正を受けた規則改正とそのガイドラインを読み直す。


2024年8月5日月曜日

【おすすめ度○】石原理『ゲノムの子 世界と日本の生殖最前線』集英社新書, 2022年

生命科学の進歩が医療にもタラいている問題を取り扱っている。 内容:賀建奎によるゲノム編集人体実験問題 胚保存をめぐる動向 体外受精と卵子・精子の譲渡 ミトコンドリア遺伝子の制御 生殖あるいはセックスとは 命の選別 「生命倫理」という弁解あるいは虚構・幻想 各国の動向など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
いま、私たちが語るべき“希望”とは――。
30年以上にわたり「命」を見つめてきた産婦人科医が問う、真の多様性。

2020年のノーベル化学賞受賞により改めて注目された「ゲノム編集」。
とくに、医療面における治療技術の開発は現実的かつ切実な願いであることは間違いありません。
しかし、ゲノムについて臨床現場から発信されている一般書はほとんどなく、なかでも生殖医療とゲノム編集のかかわりについては議論が避けられがちというのが実情です。

本書では、生殖医療の最前線に携わる産婦人科医であり生殖内分泌学者の著者が、今、私たちに問われている「ゲノム」の意味を思索。
これまでの研究やデータを紐解くとともに、自ら世界中の専門家にインタビューし、その対話をヒントにゲノム編集と私たちの未来をどう理解すべきか、エッセイ調の筆致でわかりやすく解説します。
「子どもを持つ意味」「家族とは」「生命倫理について」など、みなさんに他人事としてではなく考え、議論することを呼びかける一冊です。


2024年8月2日金曜日

【おすすめ度○】諸富徹 編著『電力システム改革と再生可能エネルギー』日本評論社, 2015年

福島原発事故以降の再エネ大量導入に向けて、制度度技術的課題を解明し、同様の課題を抱えるヨーロッパ諸国での対応を分析した良書。内容がやや古くなっているので、おすすめ度は◎ではなく○にした。 内容:電力システム改革と分散型電力システム 電力システムの計画経済型から市場経済型への移行のための技術と制度設計 再エネ大量導入時代の送電網のあり方 分散型電源大量導入の技術的問題と対策 ドイツにおけるキャパシティーメカニズムの制度設計 欧米における容量市場の制度設計 電力系統の再構築とその費用負担原理 電力システム改革は電力業のパフォーマンスを改善するか

出版社ウェブサイトから紹介を引用
再生可能エネルギーを中心とする分散型電源の大量導入を可能にする電力システム改革は、どのようにして実現可能であるのか。

【おすすめ度☆】黒栁正典『人の暮らしを変えた植物の化学戦略』築地書館, 2020年

香り、辛味物質、甘味物質、色素、植物基原食品の機能性物質、生薬など植物が清算する化学物質の概要を説明

出版社ウェブサイトから紹介を引用
トウガラシはなぜ辛い?
日本三大民間薬とは?
植物由来の物質が、抗がん薬に使われる?

人間が有史以前から、生活のために利用してきた植物由来の化学物質。
それは植物が自身の生存のために作り出した二次代謝による産物であり、我々はその多様な物質から、香り、味、色、そして薬効などさまざまな恩恵を受けてきた。

人の暮らしを支える植物の恵みを、化学の視点で解き明かす。



【おすすめ度○】岩瀬昇『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか』文春新書, 2014年

著者は元三井物産常務執行役。石油ビジネスの実態について、当事者の立場から解説した良書。なお出版社ウェブサイトでの本書の紹介には「エネルギー界の池上彰」云々と書かれているが、著者は池上彰のような子供向けの解説者とは全く異なる石油業界のプロフェッショナルである。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
エネルギーがわかれば世界が見える。
安全保障、世界経済、ナショナリズム、環境問題、新技術と、あらゆる問題に絡むエネルギーの基礎知識をこの一冊で。

第1章 日本の輸入ガスはなぜ高いか?
第2章 進化するシェール革命
第3章 「埋蔵量」のナゾ
第4章 戦略物資から商品へ
第5章 もう一度エネルギー問題を考える
第6章 日本のエネルギー政策

HONZ成毛眞氏から「エネルギー界の池上彰さん誕生!」と太鼓判を押された著者は、商社マンとしてエネルギー関連事業に40年以上携わり、訪れた国は60カ国を超える経歴の持ち主。これまで誰も言わなかった石油埋蔵量のカラクリ、中国の資源戦略、日本のLNG価格が高い理由など、日々のニュースをより深く理解するための基礎知識が身につきます。駐在国でのエピソードも読みどころ。未来を考えるための複眼思考をこの一冊で。

2024年8月1日木曜日

【おすすめ度○】蓮見雄・高屋定美 編著『欧州グリーンディールとEU経済の復興』文眞堂, 2023年

欧州グリーンディールについて、多角的に分析する良書。やや難しい。 主要内容:欧州グリーンディールの射程 欧州グリーンディールの法的基盤 ウクライナ戦争と脱ロシア依存 産業戦略としての欧州グリーンディール グリーンディールと欧州中央銀行の役割 サステナブル・ファイナンスの拡大に向けたEUの金融制度改革 EUタクソノミーが与えるEU域内の金融・経済活動への影響 グリーンディールの前提としての再エネ政策 経済安全保障としてのグリーンディール

出版社ウェブサイトから紹介を引用
カーボンニュートラルを目指す世界で最も体系的な政策=欧州グリーンディール
EUは、新たな成長戦略として欧州グリーンディールを打ち出した。これは、再エネや水素を基礎とした産業への構造転換、マネーをESG投資へと誘導するサステナブル・ファイナンスを通じて、経済復興を実現しようとする世界で最も体系的な政策である。本書は、その全体像と基本構造を明らかにした必読書である。

【おすすめ度☆】木下理仁『チョコレートを食べたことがないカカオ農園の子どもにきみはチョコレートをあげるか?』旬報社, 2024年

開発援助について、子どもたちに問題を投げかけて考えさせる本。子ども向けで踏み込んだ考察はされておらず、この本のような問題を子どもたちに投げかけても「貧しい人たちはかわいそう」という程度の感想になってしまうのではないかと思うけど、そういう本の方が読みやすいという人もいるだろう。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
カカオ農園の貧しい子どもにチョコレートをあげるべきか? 
学校に通わずに働いている少女の作った洋服を着るべきか? 
転校してきた外国人の友達に校則違反だがらとピアスを外すように言うべきか? 

国際協力と多文化共生をテーマにした“読むワークショップ”。
本文に登場するさまざまなディスカッションを通じて、新しい自分を発見できる本。