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紹介する本が増えてきたのでまとめます。 【おすすめ度◎】の本(特におすすめする本、このページの下の方に) 【おすすめ度☆】の本の一覧はこちら (教科書あるいは入門書的な本) 【おすすめ度○】の本の一覧はこちら (読むことをおすすめする本) 【おすすめ度●】の本の一覧はこちら (専...

2023年8月30日水曜日

【おすすめ度☆】佐々木晶二『改訂版 いちからわかる都市計画のキホン』ぎょうせい, 2023年

都市計画制度の教科書。著者は元国土交通省の官僚(国土交通政策研究所所長で退職)。都市計画は頻繁に制度が変わるので、できるだけ新しい教科書で勉強する必要がある。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
都市計画を知りたい人が「いちばん最初に読む」本!
○多岐にわたる都市計画及び都市計画制度について、担当者として最低限知っておくべき知識が1冊でわかる!
○QA形式の解説で、気になった箇所・知りたい箇所から学べます。
○はじめて都市計画関係部署に配属された方や都市計画及び都市計画制度の概要についてやさしく学べる実務書をお探しの方におすすめです。

改訂のポイント
○Q&Aを見直し、解説に用いたデータや参考資料も更新した最新版。
○新規問答として、生産緑地や災害予防等の基礎に関する内容(「生産緑地とはどのような計画ですか?」「近年創設された災害予防のための土地利用規制はどのようなものですか?」)を追加。
○そのほか第2部第6章として「宅地造成及び特定盛土等規制法」(「宅地造成等規制法の一部を改正する法律」令和4年5月27日公布、令和5年5月26日施行)に関する押さえておくべき基礎の問答を新たに5問追加(問答内容は以下目次参照)。




【おすすめ度○】山中美智子・玉井真理子・坂井律子『出生前診断 受ける受けない誰が決めるの? 遺伝相談の歴史に学ぶ』生活書院, 2017年

「出生前診断」とは、妊娠中に、検査によって胎児に障害があるかどうかを判定する検査のこと。検査で胎児に障害が見つかると中絶する場合も少なくない。実際に遺伝カウンセリングに関わっている著者たちによる、出生前検査に関するさまざまな考察の本。 内容:日本の遺伝カウセリングの歴史と出生前検査 出生前診断について考えたいこと 「自己決定」の落とし穴


出版社ウェブサイトから紹介を引用
出生前診断を議論するとき金科玉条のように語られる「遺伝カウンセリングの充実」。
しかし、その内容はきちんと検証されてきただろうか?
検査のための手続きになってはいないだろうか?
長年にわたり遺伝カウンセリングを実践し、そのあり方を模索してきた先人たちに学び、技術ばかりが進展する出生前診断とどう向き合うかを、立ち止まって考える。

2023年8月28日月曜日

【その他の情報】ドイツ環境省が、福島原発事故の汚染水放出を批判

ドイツ環境省が、福島原発事故の汚染水放出を批判している。





【その他の情報】木材業界で相次ぐ大型倒産、危機感高まる

イタヤ(新潟県)、征矢野(そやの)建材(長野県)の(木材業界としては)大型倒産の取材を通して、現在の木材業界の構造的問題を明らかにする興味深い記事。征矢野建材の倒産の直接の原因が、ウッドチップを利用した再生エネルギー事業だった。FIT(Feed In Tarif、固定価格買い取り制)では太陽光発電が優遇されている(電力の買取価格が高い)ので大規模な太陽光発電所が各地に建設されているけど、木質バイオマスについては、現状の買取価格では「儲かるビジネス」として成立させることは容易ではないようです。

これは「新・ウッドショック」なのか?木材業界で相次ぐ大型倒産、危機感高まる(ダイヤモンドオンライン)
今年6月と8月、木材業界で発生した大型倒産が波紋を呼んでいる。新潟県に本社を置く(株)イタヤ(南蒲原郡田上町、負債35億8500万円)、長野県の征矢野(そやの)建材(株)(松本市、負債65億2000万円)の2社が相次いで民事再生法の適用を申請した。

2023年8月27日日曜日

【おすすめ度○】茅野恒秀・青木聡子 編『地域社会はエネルギーとどう向き合ってきたのか』新泉社, 2023年

エネルギーと地域社会の関係についての環境社会学の研究論文集 内容:薪炭利用の変遷とエネルギーの由来の不可視化 石炭産業の盛衰と地域社会 庄川流域の大規模ダム開発と地域社会 下北半島六ケ所村「原子力半島」の地域開発史と現在 茨城県東海村・原子力施設の立地点における生活の場の再創造 芦浜原発反対運動 反・脱原発の市民運動によるオルタナティブの創出(生活クラブ生協の事例) アメリカ先住民族と核汚染 地域分散型再生可能エネルギーの進展と障壁 エネルギー転換と社会イノベーションなど

出版社ウェブサイトから紹介を引用
〈エネルギーのあり方を問い直し、これからの社会のあり方を考える。〉
近代以降の燃料革命はエネルギーの由来を不可視化し、消費地と供給地の関係に圧倒的な不均衡をもたらし、農山村の社会と自然環境を疲弊させてきた。
巨大開発に直面した地域の過去・現在・未来を見つめ、公正なエネルギーへの転換を構想する。
〈本書が、望ましいエネルギー転換のあり方を問うにあたってまず行ったのが、私たちのエネルギー利用が誰のどのような犠牲の上に成り立つものであったのかを直視し直すことであった。そして、犠牲を強いられがちな人びとがエネルギー資源や施設といかに向き合ってきたのかについて、歴史をさかのぼりながらとらえ直す作業であった。
誰の健康も生活も犠牲にせずエネルギーを生み出すことは容易ではない。だからこそ、「公正なエネルギー」への転換は、世代内と世代間の双方において「公正な社会」への転換を要請する。——編者〉



2023年8月25日金曜日

【おすすめ度○】ダン・イーガン『肥料争奪戦の時代』原書房, 2023年

リンの発見から利用が拡大する歴史。肥料の話以外に、リンを含む洗剤とそれによる水質汚濁の話も多い。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
肥料として農業を支え、人類に不可欠な希少資源リン。そのリンの世界的な枯渇、争奪戦、海洋流出、食料ショックのリスクーーいま知っておかないと怖いリン問題について、ピューリッツァー賞ファイナリストが警鐘を鳴らす。


2023年8月21日月曜日

【おすすめ度◎】浅井基文「日中平和友好関係を願う立場からの問題提起」(ウェブ上の論文)

浅井基文氏(元外交官)による、現在の日中関係・米中関係の優れた分析とまとめ。本ではなくウェブ上の論文ですが、非常に重要なものなのであえて紹介する。

2023年8月18日金曜日

【おすすめ度☆】林宏『化学物質管理の法律 改訂版』第一法規, 2023年

化学物質管理の教科書 内容:化学物質管理とは何か 化学物質管理の国際的枠組み 化学物質管理の業務と法律 規制物質 労働安全衛生法の改正

出版社ウェブサイトから紹介を引用
製造業の化学物質管理担当者が、はじめに知っておきたい化学物質関連法令の基本事項を網羅した入門書。化学物質関連法令の基礎を図表等を用いてわかりやすく解説。労安法関連の改正のポイントもフォローした改訂版。
〇自社の業務がどのような法令に関係しているのか、初任者にもわかるように解説するため、業務起点で必要な法令を理解することができる。
〇化学物質に関する幅広い法令を把握するため、関連法令の第1条から解説するのではなく、化学物質の管理規則(登録、安全性評価、各国共通の事項等)の仕組み・枠組みといった全体像から解説する。また、化学物質管理の仕組みを図解等を用いてわかりやすく解説するため、時間がなくても手軽に法律の基礎を把握できる入門書となる。
〇各章のページ末尾には、法令の重要事項等をチェックリスト形式で登載するため、複雑な法令でも最低限の法令知識を簡単に確認できる。
〇労安法関連の改正と対応のポイントもフォロー。

【おすすめ度☆】花井荘輔『増補改訂版 リスクってなんだ?』丸善出版, 2022年

化学物質の「リスク」に関して、概説的な知識がわかる教科書。 内容:リスクとは何か ハザード管理とリスク管理 リスク評価のシナリオ 直接暴露 間接暴露 取り込み・吸収・体内動態 健康影響 環境生態影響 変動性と不確実性 リスクの判定 データベースとシステム リスクを超えて合理的な意思決定に向けて

以下に述べることはこの本だけの問題点ではなく、リスク論の教科書に共通する問題点であるけど、「リスクは人やグループによって異なる」という事実が、化学物質に対する「感受性」の個人差とされている。男性と女性の間でもリスクは異なるが(例えば子宮がんや卵巣がんのリスクがあるのは女性だけで、男性には子宮がんや卵巣がんのリスクはない)、これを「化学物質に対する個人の感受性の違い」だとするのは不適切であろう。
 個人のリスクの差は男性と女性の違いのような生理的な理由によって引き起こされるだけではなく、社会的・経済的な理由によっても引き起こされる。水俣病事件では、お金のある人は汚染された水俣湾の魚を買わず、他の地域でとれた魚を飼うことができたが、魚が売れなくなって困窮した漁民たちは、他の食物を買うためのお金がなかったので汚染されていることを知りながら水俣湾の魚を食べ続けるしかなく高リスクにさらされた。
 ジェンダーや社会的・経済的条件によってリスクが異なるというのは、「文系」のたわごとではなく科学的に十分証明できることである。それなのに、ジェンダーや社会的・経済的条件に基づくリスクの差を無視してしまうのは、本当の意味で科学的な態度とは言えない。個人(あるいはグループ)によってリスクが異なるということを認めるならば、リスクの「利害得失」を評価するときに、リスクの低い人(グループ)にとっては利得がプラスになるけど、リスクの高い人(グループ)にとってはマイナスになるということがあり得る。この点の配慮が不十分であることが、リスク論に基づいた「科学的」な議論が、必ずしも社会に受け入れられない原因ではないだろうか。
 社会全体の平均値としては利益が損失を上回る場合でも、個人やグループとしてはそうではないことはあり得るのである。損失が利益を上回る人やグループに対して、「社会全体の平均値としては利益が上回っているのだから、リスクを受け入れよ」と言っても説得できないのは当たり前で、それは科学を理解していないために非合理的に反発しているのではない。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
2006年に刊行した 『リスクってなんだ? ―化学物質で考える』 の増補改訂版
 SDGsが世界的な広がりをみせる中,地球温暖化や海洋プラスチックなど,私たちの日常生活をとりまく化学物質とのあり方について誰もが真剣に考えなければならなくなりました.不確かな未来にどう生きるか,どう決断するか,また,根拠のない情報が極大化する時代に対処するためにも,科学的な思考力,つまりリスクの考え方を養うことが非常に重要です.
  本書は “リスクってなんだ?” の発想で,化学物質のリスク評価の基本(利害得失を十分に吟味し,その過程と根拠を公開して一般的な判断の材料とする)を解説.初版の内容に,社会の変化と化学物質をめぐる世界的な動向を概観し,変化の大きい社会のあり方にも触れました.化学となんらかの関係をもつ人はもちろんのこと,日常生活において化学物質との接点をもつ一般の人にも大いに参考になる一冊です.

 

2023年8月17日木曜日

【おすすめ度◎】大沢真理 編『ジェンダー社会科学の可能性4 公正なグローバル・コミュニティを 地球的視野の政治経済』岩波書店, 2011年

やや古い上に簡単な本ではないが、ジェンダーの視点から社会科学の再検討に取り組んだ重要な本。 内容:グローバル社会政策の構想 主流派貿易理論・異端派貿易理論を超えるフェミニスト貿易理論 グローバリゼーションとジェンダーの政治経済学 交差的抑圧とジェンダー・ジャスティス/ポリティクス 人口・環境・開発のジェンダー課題 人身取引問題と国際協力 日本の政府開発援助(ODA)政策の課題 フードガバナンスの比較ジェンダー分析 国際法とジェンダー

出版社ウェブサイトから紹介を引用
グローバルなジェンダー公正の実現という難問に,経済学,社会学,政治学,国際法学が挑む.
日本の性別役割分業が途上国女性の出稼ぎを引き寄せ,WTOの知的財産権保護協定が途上国の,とりわけ女性のエイズ患者を苦しめている.グローバルなジェンダー公正を実現するにはどうすればいいのか.この難問に,経済学,社会学,政治学,国際法学が挑む.フェミニスト経済学の第一人者,ダイアン・エルソン氏(エセックス大学教授)が寄稿.




【おすすめ度☆】松永和紀『お母さんのための「食の安全」教室』女子栄養大学出版部, 2012年

やや古いがわかりやすいリスク論の入門書 内容:食品と放射性物質 食中毒・BSE・アレルギー 化学物質 思い込みのこわさ(中国産食品、遺伝子組み換え、有機農業、消費期限、健康食品、窒息) リスクの考え方など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
放射線、食品添加物、遺伝子組換え、ノロウイルス……ちまたには「○○を食べれば安全、××は危険」という食の安全にかんする情報があふれています。
しかし、それらは必ずしも真実とはかぎりません。手元にこの本を置いて、テレビや新聞で気になる話題が出てきたら、「あれ、どんな話だっけ?」とページを開いてみてください。
情報に惑わされずに、本当に心配しなければならないことを心配する。本書がその指針を示してくれます。

【おすすめ度☆】農文協編集部『今さら聞けないタネと品種の話』農山漁村文化協会, 2020年

タネと品種のQ&A、野菜のルーツと品種の入門的な話

出版社ウェブサイトから紹介を引用
タネや品種にまつわる今さら聞けない基本的かつ大事なポイントを、ギュッと一冊に。第1章は「タネと品種のQ&A」。「ソラマメ20mlって何粒?」「タネの寿命って何年?」など、タネ袋やカタログの情報の見方から、タネの生産・流通の仕組みまで紹介。第2章は「図解 野菜のルーツと品種の話」。人気の野菜15種について、原産地やおもな系統、品種の特徴や選び方などを図解に。第3章は、「農家・育種家の品種の見方」。ベテラン農家のカタログの読み方や、育種家による品種の特性の生かし方の解説など。



【おすすめ度○】岡本有佳・加藤圭木 編『だれが日韓「対立」をつくったのか』大月書店, 2019年

2019年の本なのでやや古くなっているが、徴用工問題、慰安婦問題などに関してQ&A形式で入門的な知識が得られる本 内容:韓国の歴史清算の取り組み メディアの責任 戦後生まれの責任と解決への道など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
徴用工問題に端を発し悪化する日韓関係。だが、そもそも問題の根はどこにあるのか? 日本人が抱く韓国への疑問や反発に答える。
「徴用工」問題に端を発し悪化の一途をたどる日韓関係。だが、そもそも問題の根はどこにあるのか? 「徴用工」「慰安婦」「少女像」の問題など、韓国への疑問や反発を解きほぐし、日韓の相互理解と対話へとつなぐ。


2023年8月13日日曜日

【おすすめ度●】白楽ロックビル『科学研究者の事件と倫理』講談社, 2011年

著者が(おそらく多大な労力を費やして)構築した「研究者の事件データベース」に基づいた事例分析。2011年の本なので古くなっている部分もある(なのでおすすめ度は○でなく●にした)。取り上げられている事件のタイプは盗用、捏造・改竄、研究費不正、アカハラ・セクハラ、産学協同、学位、兼業、名義貸し、試験に関する不正・贈収賄など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
日本には科学研究者の事件に関する客観的なデータがなく、改善のための政策・施策は根拠に基づいたものではなかった。データがなければ、「科学研究者の事件」を改善したり、改善されたかどうかを評価することはできない。著者は10年余りかけ、読売新聞の記事データベースから、明治・大正・昭和・平成時代の136年間の「科学研究者の事件データベース」を作り、それに基づいて科学研究者の事件・倫理の実態を分析した。「研究者倫理」や「研究者のキャリアパス」に興味がある大学院生はもちろん、大学院生を指導する立場の大学教員、企業技術者、大学・研究機関の管理者、メディア、行政官庁の方などに最適の1冊。


【おすすめ度○】栗原俊輔『ぼくは6歳、紅茶プランテーションで生まれて。』合同出版, 2020年

スリランカの紅茶プランテーションにおける児童労働の問題をテーマにして、発展途上国の現在の問題や植民地支配について書かれている。 内容:スリランカという国 紅茶の国・スリランカの歴史 紅茶プランテーションの労働者 社会から取り残される紅茶農園 農園のコミュニティが抱える6つの問題 植民地時代の遺物になっているプランテーション 紅茶農園の子供たちにも夢がある 子供たちが人生を選択できるようになるために わたしたちにできること フェアトレードの限界 スマートコンシューマーになる NGOの役割 など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
スリランカ・農園労働者の現実から見えてくる不平等
1杯の紅茶を通して見えてきた、あまりにアンフェアなこの世界の苦い現実。

1杯の紅茶を通して見えてきたのは、
19世紀から時がとまったような、
あまりにアンフェアなこの世界の苦い現実。

スリランカの紅茶プランテーションでは、
きょうも女性労働者は茶葉を手づみし、男性労働者は肉体労働に汗を流します。

封建的な労働環境・不衛生な住環境・社会からの差別的な待遇……
人生の選択肢は望まなくてもただ一つ。
母も父も祖母も祖父も、みんな同じように農園労働者になってきました。

閉ざされた社会のシステム、暮らしぶり、そして差別。
21世紀にもなって、あまりにアンフェアなこの世界の現実。

日本で紅茶を飲む私たちにできること。


【おすすめ度○】岸本聡子『水道、再び公営化』集英社新書, 2020年

世界的な公共サービスの「民営化」の流れのなかで、一部の国では水道も民営化が進められた。しかし、水道に関しては民営化に任せることによってさまざまな問題が発生し、「水道民営化」の象徴的存在だったフランスの首都パリ市を含めて「再公営化」に踏み切る事例が現れてきている。本書は、そのような水道「再公営化」に焦点を当てたルポルタージュ的な本。 内容:水道民営化という日本の危機 水メジャーの本拠地、パリの水道再公営化 資本に連携するための「公公連携」 イギリスの大転換(PFIの終了) 再公営化の起爆剤は市民運動 欧州のミニュシパリズムとフィアレス・シティ 地域政党バルセロナ・イン・コモンなど。
※この本が出版されたのは、著者の岸本氏が杉並区長選挙に立候補する(2022年)より前であり、選挙運動のための内容は一切書かれていない。現在政治家になっている人の本であっても、本が書かれたのが選挙に出る前であり、かつ選挙運動のための内容が書かれていない場合には「おすすめ」することがある。(そもそも、「おすすめ」した本の著者が選挙に出でいるかどうか、全てチェックするのは非現実的)

出版社ウェブサイトから紹介を引用
水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと

【日本の民主主義に新風を吹き込む、杉並区長・岸本さとこ。
欧州・市民運動のなかで育んだ「公共」再生のためのポリティックス!】
民営化の嵐で疲弊した欧州市民の怒りが、街を動かした。
「恐れぬ自治体」が立ち上がり、「ミュニシパリズム(地域自治主義)」の精神でつながった。
やがてその脱・民営化/再公営化の運動は、破綻していた地域経済や人々のつながりまでも「再生」していったのだ。
そのとき市民と自治体のブリッジを果たしたのは、NGOで働くひとりの日本人女性・岸本さとこ。
彼女が日本に伝えた新しいデモクラシーの方法とは? 
地殻変動が始まった、民主主義の最前線が、ここにある!

【斎藤幸平さん(『人新世の「資本論」』)も絶賛!】
「誰もが必要とする水やエネルギー。
それを大企業からみんなの手に取り戻し、<コモン>=(公共財)として再建する。
その方法を新・杉並区長が具体的に伝える、豊かで魅力的な一冊!」

【本文より】
「水のような<コモン>の管理を人々の手に取り戻すことこそが、形骸化しつつある民主主義を再起動させる鍵なのだ。
(略)私は小さな草の根の変化の積み重ねなしに、国や国際レベルの変化を望む近道はないと思っている。
地域から民主主義の練習と実践の運動を重ね、地域を越えて連帯することで力をつけていきたい。
再公営化、ミュニシパリズム、フィアレス・シティ運動は、これからも成長していくだろう。
(略)その胎動は日本でも始まっている。」




2023年8月12日土曜日

【おすすめ度●】グループ21『不良債権の正体』講談社, 1998年

バブル崩壊と不良債権に関する良い本はたくさんあり、私もかなり目を通したけど、この本はそれらの中で特に興味深かった本。不良債権の発生メカニズムを実践的に明らかにしている。 国土法の運用の問題点や日本的文化(企業共同体的関係、契約意識の不備)と不良債権の関係も書かれている。
著者の「グループ21」の正体は不明だが、内容的に見て新聞記者などのジャーナリストではなく、大学の研究者や弁護士なら匿名にする必要がないことを考えると、官僚(国家公務員)ではないかと想像される。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
不良債権隠しのカラクリがいま明らかになる
総額140兆円と言われる不良債権はなぜ発生したか。銀行はどのように問題を先送りしたか。地価再暴落で何が起こるか――。気鋭の研究集団が問う「日本経済“失敗の本質”」

【おすすめ度●】浜田康『粉飾決算』日本経済新聞社, 2016年

著者は公認会計士。公開資料を利用したバブル崩壊後の大型粉飾事件の詳細な調査。具体的に取り上げられているのは日本長期信用銀行(長銀)、三洋電機、東芝など。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
東芝事件は経営者だけの問題ではない。背景にある構造的課題に、ガバナンス時代の会計ルールの在り方という視点から鋭く切り込む。
東芝の不適切会計問題が浮き彫りにした会計システムの課題
企業統治、内部統制に潜むリスクは?
監査人は何を見ていたのか?
経営責任を司法は問えない?
長銀、三洋電機、東芝の粉飾決算問題を会計士の視点から徹底検証、組織ぐるみの「隠蔽」「責任逃れ」の連鎖の実態を明らかにし、日本が抱える構造的な問題をえぐり出します。



【おすすめ度●】大杉卓三, アシル・アハメッド『グラミンのソーシャル・ビジネス』集広舎, 2011年

バングラデシュで発祥したグラミングループのビジネスモデルと、その世界的展開の状況。良書だが10年以上前の本で内容は古くなっている(そのためおすすめ度は○でなく●にした)。 内容:ソーシャル・ビジネスの概念 グラミン銀行とグラミングループ グラミン・シャクティ(再生エネ事業) バングラディシュでの合弁企業(ダノン・ヴェオリア・雪国まいたけ他) グラミン・モデルの世界への展開(グラミン・アメリカ ウガンダ他)

出版社ウェブサイトから紹介を引用
 ソーシャル・ビジネスとは,社会的な課題をビジネスの手法を用いて解決に導く事業のことである。ソーシャル・ビジネスは一般的なビジネスとは異なり,利潤最大化を目的としない。その目的はあくまで社会的な課題の解決である。
 2006年にノーベル平和賞を受賞したバングラデシュのグラミン銀行およびグラミン・グループは,様々なイノベーションを起こし,革新的なビジネスモデルを生み出している。そのビジネスモデルに基づきグラミン・グループが世界で実践するソーシャル・ビジネスには,企業やNPO,また国際機関などから大きな関心が寄せられている。
 グラミン方式のソーシャル・ビジネスは「ユヌス・ソーシャル・ビジネス」と呼ばれ,グラミン銀行創設者ムハマド・ユヌス氏のグラミン哲学が刻み込まれている。これは今までの経済システムにはない「利他心によるビジネス」であり,事業の継続性を保ちながら「損失なし,配当なし」の運営をおこなうものである。
 本書によってグラミン・グループのソーシャル・ビジネスを理解し,社会の変革を目指す人たちが新たなソーシャル・ビジネスを考案し実践するための糸口を見つけ出して欲しい。



【おすすめ度○】小林雅一『ゲノム革命がはじまる』集英社新書, 2019年

ゲノム編集に関して、社会への影響を予測した良書(だがすでに古い。2019年の本なのに!) 内容:遺伝子検査ビジネスの現状と課題 ゲノム編集とは何か ゲノム編集への医療への応用の現状 ゲノム編集食品 科学捜査 遺伝子ドライブ 人間の「改良」と優生学など


出版社ウェブサイトから紹介を引用
「ゲノム技術」が当たり前になる時代。
私たちの生活には、どんな影響があるのか?
ゲノムとはDNAに記された全遺伝情報である。その解析と利用が今、急ピッチで進んでいる。
遺伝子検査サービスに、がんゲノム医療、ゲノム編集食品、さらには刑事事件の捜査や生態系の改変まで……。
それはまさに「ゲノム革命」とも呼べる劇的な展開だ。
特にゲノム編集では、画期的な治療法の開発や農作物の品種改良が進む一方で、安全性や倫理問題など深刻な懸念も噴出している。
本書は、その全貌を描き出し、生殖医療や食糧、環境問題など、さまざまな分野に波及するゲノム革命の光と影を論じる。


【おすすめ度☆】可児滋『異常気象と気象ビジネス』日本評論社, 2018年

異常気象が多発する中で、どうやってビジネスを異常気象から守り、また異常気象をビジネスチャンスにするかについて教科書的に述べた本。 内容:気象ICT革命がビジネスを変える 異常気象とは 気象とICT(気象庁・民間気象事業者) 機構リスクの産業界への影響と気象データの活用 天候デリバティブと保険 災害債権(キャットボンド) 気象ビジネス市場など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
頻発する異常気象は社会生活と企業活動に大きな影響を与えている。ICTの進展が気象データの利活用をどう変えていくのか?


2023年8月11日金曜日

【おすすめ度○】倉沢愛子・松村高夫『ワクチン開発と戦争犯罪 インドネシア破傷風事件の真相』岩波書店, 2023年

第2次世界大戦中、日本が占領していたインドネシアで、破傷風ワクチンの人体実験中に少なくとも98名が破傷風を発症して死亡する事件が発生した。当時、インドネシアを支配していた日本軍は、この事件をインドネシア人研究者による謀略であるとして研究者を死刑にしたが、冤罪であるという説が強い。本書ではこの事件の調査に基づき、やはり冤罪である可能性が高いことを示している。さらに、このインドネシアで行われた破傷風ワクチンの人体実験が、悪名高い731部隊と連携しながら行われていたことを指摘している。
 またこの本では、インドネシアの破傷風ワクチン事件とは直接の関係はないが、731部隊の細菌戦活動(事実上、日本の支配下にあった「満州国」の首都だった新京市の郊外でペスト汚染ノミを散布したため、新京市内とその郊外でペストが発生した事件を含む)や、米占領軍が731部隊関係者を免責した秘密取引、その結果としての戦後の731部隊関係者が国立予防衛生研究所(予研、現在の国立感染症研究所)を拠点として日本社会で復権したことも書かれている。いわゆる帝銀事件で名前が挙がった「松井蔚」が731部隊関係者であることや、さらに新型コロナ蔓延時のいわゆる「アベノマスク」の背景にも731人脈があったことが指摘されている。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
1944年8月、ジャカルタのロームシャ収容所で謎の破傷風事件が発生。事件の背景にあった日本軍の謀略とは。
1944年8月、ジャカルタの収容所で、ワクチンを接種したロームシャが破傷風で多数死亡した。この謎の事件の背景には何があったのか。犯人として処刑されたインドネシア人医師、破傷風で命を落としたロームシャ、そして遥か離れた中国大陸で七三一部隊の人体実験に供された〈マルタ〉をつなぐ日本軍の謀略が、いま明らかになる。

2023年8月9日水曜日

【おすすめ度☆】伊藤優志・難波良多・原田誠也『日本産品を世界へ! よくわかる食品輸出』日本食糧新聞社, 2023年

1テーマ2ページ形式の入門書。著者は農水省輸出・国際局の関係者なので、この本に書かれていることは農水省、というか政府の公式見解とみてよい。政府の公式見解を知ることは出発点として大事だけど、それだけでは限界がある。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
政府では、農林水産物・食品の輸出額目標を2030年5兆円に設定し、政府一体となって積極的に輸出拡大の取組を進めています。最近では、輸出拡大のための体制や仕組み創り、各種の補助事業、融資事業、税制特例措置など輸出に携わる事業者向けの支援措置も充実させてきています。
本書は、事業者の方々がそういったさまざまな支援を活用できるよう周知のための情報発信として、農林水産物・食品の輸出拡大に関する対外説明の資料を参考にしながらまとめたものです。食産業の海外展開を含む農林水産物・食品の輸出に関する全体像が把握できるようになっています。
本書を通じて、輸出を身近に感じていただき輸出にチャレンジしてみようと思われる方が増えること、既に輸出を実行されている方にとって拡大の一助となることを執筆者一同願っています。



2023年8月6日日曜日

【おすすめ度☆】国際協力機構『JICA×SDGs』山川出版社, 2023年

1テーマ2ページ形式で国際協力機構(JICA、「ジャイカ」と発音する)の取り組んでいることを紹介している。「JICAって何をやってるんだろう?」と思った人がとりあえず読んでみるのによい本。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
JICA(国際協力機構)とパートナーによる世界各地でのSDGsへの取り組みを凝縮した初めての本。小中校の学習指導要領に明記された「持続可能な社会の創り手」を育むヒントがこの1冊に凝縮。
JICAのSDGs(国連 持続可能な開発目標)への取り組みである20のグローバルアジェンダとそのプロジェクトを一挙収録。世界にはどのような課題があり、その解決に向けた取り組み事例が幅広くわかる。また児童・生徒や先生、これから国際協力を目指そうと考えている若者にも役立つ情報も。


【おすすめ度●】松野誠也『日本軍の毒ガス兵器』凱風社, 2005年

毒ガス兵器の研究と開発、毒ガス兵器の製造と教育、毒ガス使用禁止をめぐる国際的な動向と日本軍の対応、日中全面戦争と毒ガス戦の展開、アジア太平洋戦争期の毒ガス戦、なぜ日本軍は毒ガス兵器に依存した戦いを行ったのか、戦後史の中の日本軍毒ガス兵器問題など

紀伊國屋書店ウェブサイトから紹介を引用
〈貧者の核爆弾〉といわれる大量破壊兵器がなぜ開発されてしまったのか、日本国内や中国で今でもしばしば発生する被災事件をどう理解したらいいのか、戦後60年経っても形成されない日本人の歴史認識とこの問題はどう関連しているのか――日本軍が毒ガスという禁断の兵器に手を染めていった過程をモデルケースとして検証することによって、現政府が推進する憲法改正や戦争加担システム構築の持つ〈犯罪性〉も浮かび上がってくる。まずは事実の共有を、と著者は右傾化する日本に警鐘を鳴らす。


【おすすめ度☆】いのうえせつこ『ウサギと化学兵器 日本の毒ガス兵器開発と戦後』花伝社, 2020年

相模海軍工廠(神奈川県寒川町)、大久野島、陸軍登戸研究所と731部隊、中国大陸での日本遺棄化学兵器問題などのルポルタージュ。率直にいえば突っ込んだ取材はされていないが、そういう本の方がかえって読みやすい人もいるだろう。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
アジア太平洋戦争末期、父が連れ帰った一羽のかわいいウサギ。
「セッコのウサギ」と名付けられるものの、ある朝突然姿を消してしまう……
「私のウサギを返して!」
戦時下に消えたウサギを追いかけるうち、
思いがけず戦前日本の化学兵器開発とその傷痕を辿ることに――
知られざる化学兵器開発の「その後」と、現代にまで及ぶ被害の実相



2023年8月4日金曜日

【おすすめ度☆】江連恭弘・佐久間健 監修『13歳から考えるハンセン病問題』かもがわ出版, 2023年

若い人には信じられないかもしれないが、日本では、なんと1996年(平成8年)までハンセン病患者を原則として施設に閉じ込める政策がとられていた。この本は、この重大な人権侵害問題かつ医学的にも誤りについて入門的な知識が得られる本。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
コロナを含め感染症への差別をなくしていく道筋を考える
新型コロナ感染者やその家族に向けられたバッシング。それに対し、ハンセン病回復者の方たちから、自分たちがこれまで差別されてきたことと似ている点があると懸念が表明されました。
ハンセン病に対する偏見・差別の歴史と、その差別に抗してたたかった軌跡をふり返り、感染症への差別をのりこえる道筋を考えます。


【おすすめ度☆】黒栁正典『植物 奇跡の化学工場』築地書館, 2018年

光合成、菌との共生から有毒物質まで、植物による化学物質生産の概説。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
地球生命を支える光合成から、成長に関わるホルモンや、外敵・競争相手に対抗するための他感作用物質、繁殖のための色素や甘味物質の生産、私たちが薬品として利用する有毒物質など、植物が生み出す驚きの化学物質と、巧妙な生存戦略を徹底解説。
植物を化学の視点で解き明かす。

2023年8月2日水曜日

【おすすめ度○】太田昌克『日本はなぜ核を手放せないのか』岩波書店, 2015年

なぜ、福島原発事故を経ても日本が核(原子力発電を含む)を手放せないのか。その理由を、取材と資料に基づいて考察している。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
広島・長崎から福島.被爆と被ばくを経験した日本で,いまだ核武装の幻影を追う日米支配層の真相を問う。
広島・長崎の原爆投下から70年.日本は核保有とは決別し,「平和利用」に徹したはずだった.しかし,311の原発事故を受け,その虚構性が明らかになる.一方,核や原子力をめぐる日米支配層の危険な思惑が,新資料や新証言によって如実になる.「非核」を妨げているものは何か.過去5年におよぶ取材と調査が語る歴史の真相.

■編集部からのメッセージ
 311の東京電力福島第一原発の事故については,廃炉は決まったもののいまだに事故の原因がはっきりせず,溶け落ちた核燃料もどこにあるのかわかっていない.そして何より,事故から5年になろうとしている現在も,なお10万人におよぶ人々が自宅を追われ,避難を余儀なくされている.
 にもかかわらず,鹿児島にある九州電力の川内原発は再稼働に踏み切った.なぜか.なぜそこまで急ぐのか.
 電力の安定供給だとか,日本のエネルギー政策の一環としてというのは本当だろうか.それが,表向きの言葉でしかないことが本書に収録されている数々の証言から明らかになるだろう.
 そもそも使用済みの核燃料の処分が決まっていないで,事業が進むということは本来ありえない話だ.建造物から出るゴミや産業廃棄物・汚物の最終処理が何も決まらずに事業が進行するという,通常ではありえない話に加えて,その未処理の影響が何万年にもわたり,その被害の規模も,掛かる費用の規模もすべて推測の域を出ないというのが実態だ.そんなあってはならない原発事業に,そこまでの前のめりになるのは,何らかの理由があってのことにちがいない.
 じつは,原発と核兵器はどちらも原子力エネルギーの産物.その言葉を微妙に使い分け,前者は「平和利用」,後者は「戦争利用」というイメージ作りに邁進してきたのが,戦後の日米支配層の歩みだ.その真相を知ることから,「我々の一歩」が踏み出される.
 著者は福島原発の事故後,すぐにこの問題に取り組み,ほぼ5年におよぶ関係者への取材や調査から,核や原子力をめぐって日米支配層の隠された思惑を浮かび上がらせてきた.教科書には書かれていない誰もが知るべき現代史でもある.


【おすすめ度●】週刊ダイヤモンド取材班『神戸・都市経営の崩壊 いつまで山を削り海を埋め立て続けるのか』ダイヤモンド社, 2001年

かつて「都市経営」の模範だった神戸市が、震災と神戸新空港の失敗によって混乱に陥っている状況を描いている。古い本だが「都市経営」とは何だったのか知りたい人におすすめ。なお神戸市の都市経営がうまく行っていた(ように見えていた)時代に、それを紹介する本としては今給黎久『株式会社神戸市はいま』オーエス出版社, 1987年がよい。

紀伊國屋書店ウェブサイトから紹介を引用
バブル崩壊後も大規模開発を続け、財政破綻状態にある神戸市。なぜ、方向転換しないのか。岐路に立つ神戸を追う。
かつては「都市経営の教科書」と絶賛された神戸市。だが、バブル崩壊後も大規模な土地造成を続け、大量の不良資産と市債を抱える事態となっている。にもかかわらず、空港建設に邁進するその姿は、まるで制御不能となった巨大戦艦のようだ。継続か転換か―岐路に立つ神戸市を追う。

【おすすめ度●】松本創『誰が「橋下徹」をつくったか 大阪都構想とメディアの迷走』140B (イチマルヨンビー), 2016年

著者は元神戸新聞記者。大阪の新聞・テレビには政治部がなく、社会部が橋下を取材していた。その結果、テレビが橋下徹を育てた。

紀伊國屋書店ウェブサイトから紹介を引用
強権と弁舌を振りかざし、メディアを思うまま操る“テレビ政治家”。大阪を覆い尽くす異様な空気の正体を、橋下府政・市政8年間のメディア状況から検証する。


【おすすめ度●】能川元一・早川タダノリ『憎悪の広告』合同出版, 2015年

極右雑誌の広告を収拾することにより、それら極右雑誌自体が差別と憎悪を扇動するのみならず、広告そのものも差別と憎悪の扇動であることを明らかにしている。

出版社ウェブサイトから紹介を引用
これまで20年以上にわたって繰り出されてきた憎悪と妄言の数々を、新聞広告を通じて浮き彫りにします。



【おすすめ度●】中原聖乃・竹峰誠一郎『核時代のマーシャル諸島 社会・文化・歴史、そしてヒバクシャ』凱風社, 2013年

マーシャル諸島の経済・社会の概論。マーシャル諸島の歴史、アメリカの安全保障体制の影響、内政・外交・自治体・NGO、言葉・宗教・親族関係・土地制度などを扱っている。残念ながら統計が全く利用されていない。

紀伊國屋書店ウェブサイトから紹介を引用
戦前は日本の植民地、戦後は米国の核実験場としてずっと辛苦をなめさせられてきたが、人びとは相互扶助の精神と島嶼間ネットワークで培われた知恵を発揮して「被曝」という負の遺産と闘いつづけてきた。しかし超大国・米国の影響は社会生活の隅々にまで浸透し、近い将来に、自国の伝統文化を取り戻し、沖縄(日本)の米軍基地問題にも通じる差別的構造を解体することは容易ではない。放射能汚染、米国の傘の下―小国の歴史が3・11後を生きる私たちに反照するものは何か

【おすすめ度●】早川タダノリ『「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜』青弓社, 2016年

第2次世界大戦前~戦争中のプロパガンダを集めた本。労働関係のものが多い。

出版社ウェブサイトから紹介を引用

https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787220653/
「日本スゴイ」の大合唱があふれる現在だが、1931年の満洲事変後にも愛国本・日本主義礼賛本の大洪水が起こっていた。「礼儀正しさ」「勤勉さ」などをキーワードに、戦時下の言説に、自民族の優越性を称揚する「日本スゴイ」イデオロギーのルーツをたどる。
解説
「世界に輝く 日本の偉さはこゝだ」「日本精神に還れ」……これらは2016年現在の書籍ではなく、80年前に出版されたもの。アジア・太平洋戦争に向けた国民総動員体制をあおる書籍が次から次に出版された。中山忠直『日本人の偉さの研究』、三浦葦彦『神国日本の啓明』、服部教一『日本の大使命』、池崎忠孝『天才帝国日本の飛騰』……こんな勇ましい書名だけではない。平野増吉『日本精神とお墓』、笠原正江『働く婦人の生活設計』、上野摠一『み国のために働く小産業戦士の道しるべ』などの「決戦生活心得トンデモ本」も聖戦を支えた。
「我が軍」「八紘一宇」などと総理や政治家が平気で公言する現在、ルーツである80年前の「日本スゴイ!」キャンペーンを発掘して、思わず噴き出す陳腐な内容を白日の下にさらす。

【おすすめ度○】有本建男・佐藤靖・松尾敬子ほか著『科学的助言』東京大学出版会, 2016年

科学が重要な役割を果たす現代社会において、政策決定に科学者はどのように関わるべきかという問題を考察した良書。ただし、この本は良書なのだが、福島原発事故(原発事故を収拾する際、原子力の「専門家」の「助言」が役に立たず、政治家が素人判断で対処せざるを得なかった)の後の本であるにもかかわらず、原発事故あるいは原子力政策は扱われていない。一方で、原発事故そのものは扱われていないにもかかわらず、原発事故後に問題になった放射性物質の食品安全性は扱われており、政府あるいは政策の批判になりそうなテーマは避けられているように見える。 内容:現代社会と科学的助言 科学的助言者の役割 科学的助言のプロセスと原則 各国の科学的助言体制とグローバル化 食品安全とリスク評価の独立性 医薬品審査 地震予知 地球温暖化 科学技術イノベーション政策 21世紀の科学技術の責務と科学的助言

出版社ウェブサイトから紹介を引用
近年、ますます多くの政策分野で科学的根拠に基づく助言が不可欠になり、関連の議論が世界的に進んでいる。食品安全、医薬品審査、地震予知、地球温暖化などの事例を紹介しつつ、科学と政治・行政のよりよい協働に向け、科学的助言の課題と今後の展望を示す。


2023年8月1日火曜日

【おすすめ度●】岸政彦・梶谷懐 編著『所有とは何か』中公選書, 2023年

「所有」をめぐる論考集。この本全体としてのまとまりはないが、それぞれの論考は深く考えられていて興味深い。ただし、かなり高度な内容なので専門知識がない人が読んでも理解困難だろう。 内容:戦後沖縄の社会変動と所有権の再編 タンザニアのインフォーマル経済における所有・贈与・人格 中国におけるコンヴェンションとしての所有制度 経済理論における所有概念の変遷 世界システム論と「所有」 資本主義の有限性と所有 所有に関する思想など

出版社ウェブサイトから紹介を引用
本やスマホ、土地や家屋、雇用や資産。自分のモノとして持っていることが「所有」であり、衣食住や商品取引、資本主義の原点である。こんにちシェアやサブスクがあるのに、ヒトは所有せずにいられない。他方でヒトの生存を守る所有権が、富の偏在を生む元凶となっている。なぜだろうか? 経済学や社会学、人類学の第一線の研究者6人が、所有(権)の謎をひもとき、人間の本性や社会の成立過程、資本主義の矛盾を根底から捉えなおす。