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このブログで紹介する本が増えてきたのでまとめます。 【テーマ別一覧】 陰謀論、マスコミ、科学的認識論/科学方法論などに関する本 公害問題と食の安全に関する本 医療や生命、バイオテクノロジーなどに関する本 気候変動とエネルギー・資源問題に関する本の一覧 原子力と核兵器に関する本 地...

2022年12月23日金曜日

【おすすめ度○】石井哲也『ゲノム編集を問う』岩波新書, 2017年

ゲノム編集の規制に関する基本的論点をうまくまとめている 品種改良の話もあるが、医療への応用(主に生殖医療)の話が中心。ただし2017年の本なのでやや古い。そのためおすすめ度☆ではなく○にした。

出版社ページより紹介を引用
「ゲノム編集」とは何で,何が問題なのか.――〈狙った遺伝子を〉〈痕跡残さず〉改変できるこの技術は,生命のありようをどう変え,そしてどこまで変えることが許されるのか.規制と推進とで揺れる中,対話のために,作物や家畜の品種改良,そしてヒトの医療におけるその可能性と課題をあぶり出し,いかに向き合うべきかを真摯に問う.



【おすすめ度○】白輪剛史『動物の値段と売買の謎』ロコモーション, 2010年

著者は希少野生動物の貿易業者 希少野生動物の国際取引の実態を生々しく伝える良書


紀伊國屋書店ウェブサイトより紹介を引用
タブーを破る驚愕の話。原野や草原で捕獲された動物たちが動物園やペットショップに並ぶまで!世界中から珍種、希少種を輸入する動物商という仕事の中身がわかる本。



【おすすめ度◎】石渡正佳『食品廃棄の裏側』日経BP, 2016年

食品廃棄物を題材にして、廃棄物処理業界の実態を生々しく描いている。著者は千葉県庁職員で、県庁内の不法投棄摘発チーム「産廃Gメン」を率いていた(「Gメン」はGovernment menの略、取締官を意味する英語の隠語) 内容:消費者の胃袋が不法投棄現場に 肥料化の罠 食肉偽装事件 ダイコーはどういう会社だったか 廃棄物の撤去責任 食品廃棄物流出の背景 食品リサイクルの方法とその障害 食品リサイクルの新動向 不正発見には会計検査を 転売、不法投棄の誘惑 環境省と農水省 オフィシャル情報の利用 優良リサイクル業者登録制度の問題点 リサイクル率算定の問題 フードサイクルの全体最適化 循環産業から環境制御産業へ

出版社ページ



【おすすめ度◎】ジョン・ミッチェル『追跡・沖縄の枯れ葉剤』高文研, 2014年

米軍がベトナム戦争中に使用した化学兵器(枯葉剤)を追跡するルポルタージュ。枯葉剤は沖縄に備蓄、使用、廃棄されていた。

出版社ページから紹介を引用
ヴェトナム戦争で散布された枯れ葉剤は、沖縄でも使われていた!?
 ヴェトナム戦争時に用いられた軍用除草剤(枯れ葉剤)が沖縄で備蓄、使用、廃棄されたという事実を、枯れ葉剤の病害を被った退役米兵たちの証言を手がかりに突き止める。
四年に渡る取材からひた隠しされる〝エージェント・オレンジの闇〟とは何か?を明らかにする。
 これはいまだに枯れ葉剤の被害を認定しない米国政府と追従する日本政府に向けられた警鐘である。」


【おすすめ度○】村上朋子『激化する国際原子力商戦』エネルギーフォーラム, 2010年

福島原発事故以前のいわゆる「原子力ルネッサンス」のころの世界の原子力業界の動向に関する良書(この本は福島原発事故以前の本なので、現在では状況が変わっている)

【「TRC MARC」の商品解説】21世紀のエネルギー・環境潮流の中で、世界各国はどのように原子力を位置づけ、企業はどのように事業・技術選択を行っているのか。そして原子力の将来はどうなるのかを、他エネルギーとの関係という視点を入れて分析する。

版元ドットコムによる紹介
国を挙げての熾烈な「原子力サバイバル」が始まった!日本の産業競争力向上に原子力産業が果たすべき役割とは。

【おすすめ度○】原子力資料情報室『破綻したプルトニウム利用』緑風出版, 2010年

原子力発電所で使用された核燃料(使用済み核燃料)を「再処理」して、再び原子力発電所の燃料にすることを「核燃料サイクル」という。現実には、核燃料サイクルには莫大な経費が掛かり、使用済み核燃料を「再処理」して作られた核燃料は、通常の核燃料よりはるかに効果になる。そもそも、青森県で建設中の再処理工場は、建設開始から30年以上の時間と2兆円以上の費用を投じたにもかかわらず、トラブル続きでいまだにまともに運転できていない。それ以外にも核燃料サイクルの問題点は多数あるが、本書はこのような核燃料サイクル事業とプルトニウム利用の問題点を丁寧に紹介する良書である。
 この本は福島原発事故以前の本であるが、その時点で既にプルトニウム利用は破綻していたとしか言いようがないことを明らかにしている。

原子力資料情報室の本照会ページ
 日本のエネルギー政策は、依然として原子力を中心としています。そして、原発の使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で燃料として使用することを模索しています。本書は多くの科学者が疑問を投げかけている「核燃料サイクルシステム」が、すでに破綻し、いかに危険で壮大なムダであるかを、詳細なデータと科学的根拠に基づいて分析しています。そのうえで、このシステムを無理に動かそうとする政府に対して、政策の転換を提言しています。ぜひお読みください。



【おすすめ度○】嶋津暉之・清澤洋子『八ツ場ダム』岩波書店, 2011年

八ツ場ダム問題について多角的に検討している。利水(水資源開発)や治水(災害防止)など、ダム問題の基本書としても使える。

出版社ページより紹介を引用
2009年の国交相の中止発言,2010年11月の中止棚上げ発言などで日本中の注目を集める八ッ場ダム計画.58年にわたり住民を翻弄してきた経緯を振り返りつつ,この巨大なコストを伴うダムが治水にも利水にも不要であるばかりか,多大な環境負荷や地すべりの危険を持つことをデータで立証.地域がこれまでの断裂を乗り越え,歩むべき再生への道を模索する.



【おすすめ度◎】藤井良広『環境金融論』青土社, 2013年

環境金融の諸形態に関する概説書 環境格付け・ファイナンスの実例(滋賀銀など) 環境リスク 資産除去債務と環境会計 環境クレジット・ファイナンス 環境保険の展開 新たな環境金融市場づくり 紛争鉱物

出版社ページより引用「「環境」と「金融」の出会いが、未来を変える! いま環境をめぐる問題を考えるうえでのあたらしいスタンダードとなりつつある「環境金融」の理論を最新の具体例をあげながら解説。環境関連のビジネスにいかに金融ニーズを結びつけるか、そして、グローバルな環境問題の解決のためにいかに継続的な仕組みを構築できるか。環境税の課題から、環境金融商品の長短、企業の環境対策の意義、そして環境経済学との違いまで、すべてを網羅した決定版にして入門書。」


【おすすめ度○】可児滋『環境と金融ビジネス』銀行研修社, 2011年

「環境金融」の良い教科書的な本 良い本だがやや古いので☆ではなく○にした 環境問題と融資 環境プロジェクトファイナンス 環境ファンド 環境と預金 環境とBIS規制 環境とディスクロージャー 原油取引と原油デリバティブ 電力自由化と電力マーケット 排出権取引と金融 天候リスクと天候デリバティブ

出版社ページより紹介を引用
「環境と金融の接点は時を追うごとに緊密なものとなり、環境リスクに配慮した金融、環境保全への取組みに資する金融がいま問われています。例えば、融資業務では環境リスクが信用リスク管理の重要なファクターの一つとなっています。すなわち、金融機関が融資するにあたって、それが対象企業にとって環境面でどのような関連を持っているか、環境負荷を増やすことにならないか、環境負荷削減のための投資か、あるいは環境の改善・保全の促進に資する商品・サービス開発・販売のための資金かを検討、審査する環境リスクアセスメントが重要視されているのです。そこで本書は、金融機関の行動ないし金融マーケットが環境問題の改善に向けて大きく貢献するために必要なものは何かを、環境と金融の接点から総合的に解説しました。次世代金融マーケットを担う人材の必携書です。」

【おすすめ度○】藤井良広『金融で解く地球環境』岩波書店, 2005年

環境金融の全体像を丁寧に説明している。良い本だがやや古いので◎ではなく○にした。著者は新聞記者だが、この本は学者風のスタイルで書かれている。保険 CSR 環境報告書 プロジェクトファイナンスなど

出版社ページから紹介を引用
環境政策・対策・保全活動を効率的に推進するツールとして,金融機能をどう活用していけばよいのか.環境・社会的要請を,金融システムを媒介にして市場メカニズムにどこまで乗せることができるのか.企業の環境事業活動の現状をどう捉えるのか……環境金融が関わる幅広い事象を紹介しながら,問題点と可能性を明らかにする.

■著者からのメッセージ
 本書は日本ではまだなじみの薄い「環境金融」の世界を紹介するものです.環境と金融はこれまで離れた存在でした.今も多くの金融人は環境問題には,個人的な関心はあっても,自らの業務と絡めてとらえている機会は少ないのではないでしょうか.
 しかし,地球温暖化問題のようなグローバル規模の課題に対して,効果的,効率的な手を打つには,最適な費用効果分析が必要です.金融が持つ融資,投資,保険などの機能はそうした分析に最適です.金融がはじく環境の「価格付け」を前提にして,どう行動するか.その選択は,我々人類みんなが問われているわけです.
 日本の金融機関は,バブル崩壊後,不良債権問題で苦しんできました.ようやくトンネルを抜けたばかりですが,金融本来の機能が「地球」に役立つことをもっと意識してほしい,もっと知恵を出してほしい,といった思いで本書を執筆しました.
 NGO,NPO活動で環境に関心を持つ人たちも,金融機関を遠ざけずに,いかに活用するかという視点も必要だと思います.環境と金融の出会いは,結構,魅力的なのです.


【おすすめ度○】原川洋之『市街地再生の構想と戦略』日経BP企画, 2008年

天王洲アイル開発や苫小牧駅前再開発の事例を取り上げ、事業者の立場から見た再開発プロジェクトの進め方を説明している。参考になることも多いが、とりあげられているのが成功事例なので、失敗例や問題点の掘り下げが少ないという印象はある。

出版社ページから紹介を引用
昭和の時代ににぎわった中心市街地を、法律に基づく支援を受けて再生しようとする取り組みが全国各地で見られる。その一方で、大型ショッピングセンターをはじめ、大規模な集客施設が郊外に立地する流れは止まらない。中心市街地に人を呼び戻す試みはこのまま成果を上げることができるのか、こうした問題意識の下、東京・天王洲の倉庫街をオフィス街に生まれ変わらせたり、大型ショッピングセンターやスキー場センター施設などを開発したりしてきた経験を持つ元商社員の筆者が「不動産開発事業とは何か」という原点に立って、中心市街地の再生に向けた持論を展開する。中心市街地の再生に向けた7カ条として、「背景を読み取り、構想と戦略を打ち立てる」「地区計画を利用するなど、全体計画を立てる」「合意形成では、原則論を徹底して説得する」「行政は基盤整備と財政支援の後押しで協力」「街には全体としての運営・管理が欠かせない」「街づくりの主役はあくまで地域住民」「中心市街地の再生は不動産開発事業」という点を打ち出し、開発事業を成功へ導くためには、事業全体を統括するプロジェクトマネージャーの存在が欠かせないと説く。

【おすすめ度◎】濱田武士『日本漁業の真実』ちくま新書, 2014年

日本の漁業がどのような状況に置かれているかをわかりやすく書いた良書 過ぎた競争がもたらした矛盾 海外水域の漁業の現状 資源管理の誤解とその難しさ 養殖ビジネスの可能性と限界 漁業の在り方と漁業たたきの問題 地域と漁業

出版社ページから紹介を引用
国境紛争・資源管理・TPP問題・地域衰退・就労者の激減…。漁業は現代日本を象徴する「課題先進産業」である。いまや漁獲量はピーク時の半分以下になり、約40年間で漁業就業者は3分の1にまで減っている。縮小し続ける日本の漁業に、なにが起きているのか?本書は、漁業の歴史とデータを紐解きながら、その現状と問題点を大胆に描きだす。知られざる日本漁業の全貌を明かす決定版!


【おすすめ度○】中村啓一『食品偽装との闘い』文芸社, 2012年

著者は農水省食品検査官の中心人物で、食品偽装摘発の現場の雰囲気が良く伝わってくる 雪印食品の産地偽装 食品表示の不正 ミートホープ ウナギの産地偽装(一色食品事件) 事故米問題(業者名公表の是非) 食品表示Gメンなど

出版社ページから紹介を引用
2002年に雪印食品の産地偽装が発覚し、“パンドラの箱”が開かれてから、ミートホープ、事故米、ウナギ偽装へと続いてきた食品偽装摘発の緊迫の舞台裏を、元農水省『食品表示Gメン』トップ自らが激白。省内の葛藤、内部告発、裏社会の恐喝、そして個人の苦悩……。そこには、食の信頼を取り戻すために、命を削る闘いがあった!




【おすすめ度○】安部司『食品の裏側』東洋経済新報, 2005年

もと敏腕食品添加物セールスマンによる食品添加物業界の内幕

出版社ページから紹介を引用
「廃棄寸前のクズ肉も30種類の添加物でミートボールに甦る。コーヒーフレッシュは水と油と添加物。元添加物トップセールスマンが明かす加工現場の舞台裏。知れば怖くて食べられない。」



【おすすめ度●】名和小太郎『ゲノム情報はだれのものか』岩波書店, 2002年

シンプルで要点を押さえた優れた本だが、技術的には古くなっている。 研究とビジネス 特許とは 生物特許の歴史 ゲノムの特許 ポスト・ゲノムの特許 社会の中の特許など

出版社ページより紹介を引用
植物,微生物,そして動物やDNAにまで対象を広げてきた特許.それはいま大きな問題を抱えている.DNA配列は人類共有の財産か企業の私有物か.自由な研究活動の妨げにならないのか.倫理に反しないか.今までの生物特許の流れを追いつつ,訴訟や論争をひきおこした問題を紹介し,ヒトゲノム時代の特許のあり方を考える.


【おすすめ度◎】山根裕子『知的財産権のグローバル化』岩波書店, 2008年

先進国の新薬開発vs発展途上国のジェネリックの対立を軸にした世界の知的財産権の動向を分析した力作 医薬品アクセスとTRIPS協定など。古いが優れた本。

出版社ページより紹介を引用
 医薬品研究開発の高度化が進むにつれ,知財保護はグローバル化し,WTOのTRIPS協定に至った.ところが同協定は,エイズ薬アクセスをめぐる南北問題をきっかけに,予期しえなかった変容をとげつつある.それは先端分野のイノベーションが全地球に与える恩恵をめぐる争いでもある.知財立国日本の政策課題は何か.
 バイオ創薬時代といわれる今日,研究開発の高度化とともに,知的財産権はグローバル化し,TRIPS協定が採択された.一方,国連ではエイズ薬のアクセスをきっかけに,知財保護の功罪をめぐって議論が紛糾した.本書は,同協定が修正されてきた過程をたどり,解決の糸口はどこにあるのか,知的財産権をめぐる対立の根源は何かについて考察する.一体化していく経済のなかで,グローバルな知的財産権保護制度が目指すべき「公益」とは何か.権利に固執するだけでなく,非効率な産業利益の推進に偏ることなく,知的財産権が,イノベーションを起こすためには,いかなる協力を打ち立てるべきか.

【おすすめ度◎】石山徳子『「犠牲区域」のアメリカ』岩波書店, 2020年

アメリカ先住民居住区での放射性廃棄物問題を中心的な題材として、アメリカの環境正義と先住民問題を扱っている。この問題が、「単純な二項対立でない」ことを強調している。

出版社ページから紹介を引用
核開発を牽引する「偉大な国」で、安全保障や経済発展のために犠牲にされ、環境汚染の最前線で生きるアメリカ先住民の人びと。「最大多数の幸福」を名目に、いかに彼らの存在が不可視化されてきたか。セトラー・コロニアリズムによる支配の構造と、それに対する粘り強い抵抗の歩みを、長年の調査をもとに描き出す。


【おすすめ度☆】下川哲『食べる経済学』大和書房, 2021年

農業経済学のわかりやすい教科書 内容:「食べる」と「食糧生産」 食料市場が社会をつなぐ 食料市場の限界 飢える人と捨てる人 避けられない自然の摂理 市場が効率的でも発生する問題 市場の失敗 政治的思惑が引き起こす問題 「人間らしさ」の難しさ 未来に向けて

出版社ページより紹介を引用
「食」が、私たち自身と世界にどんな影響を与えているのか、経済学の枠組みを使って、分かりやすく解説します!



【おすすめ度○】稲垣憲治『地域新電力 脱炭素で稼ぐまちをつくる方法』学芸出版社, 2022年

地域での発電事業を通じた「地域おこし」の実践例 脱炭素で稼ぐまちをつくる方法、国のエネルギー政策の現状、動き出す自治体エネルギー事業 地域新電力の分析など

出版社ページより紹介を引用
自治体エネルギー事業を地域発展につなげる
ゼロカーボンシティを宣言している自治体は679。その実現に向け、自治体や地域企業、住民が一体となって地域エネルギー事業に取り組むことで、脱炭素だけでなく地域内経済が循環し、雇用にもつながる。本書では自治体のエネルギー政策、地域新電力について豊富なデータや事例をもとに紹介し、その可能性や課題をまとめた。



【おすすめ度○】ビー・ウィルソン『食品偽装の歴史』白水社. 2009年

イギリス・アメリカの食品偽装との戦いの歴史を描いた面白い本 最初に化学的に食品偽装を追求したフレデリック・アークム、顕微鏡の利用を始めたアーサー・ヒル・ハッサル、ハッサルと協力した雑誌ランセットの取り組み アメリカ(ハーヴィー・ワシントン・ワイリー) 食品偽装かイノベーションか(バターに対するマーガリン、食品添加物の使用) バスマティ米とDNA検査の有効性など

Hontoより紹介を引用
食品偽装の歴史は現代社会の歴史でもある−。混ぜ物、偽装、保存料・添加物、遺伝子操作、偽牛乳事件など、食品をめぐる暗黒の歴史を徹底的に検証。英国で活躍するフードライターによる警世の書。



2022年12月17日土曜日

【おすすめ度◎】リチャード・ハリス『生命科学クライシス』白揚社, 2019年

生命科学分野における再現性の危機(論文に掲載された実験結果が、他の研究者によって再現できないこと)の原因を科学的側面と科学社会学(研究組織)面の両方から追及する興味深い本 生命現象自体の変動性(実験条件によって結果が変わりやすい) 動物実験と人間との差 細胞株の問題(他細胞の混入が多発) 統計手法の誤用 詳細データを公開しない慣習 いきすぎたインパクトファクター至上主義 ほか

出版社ページより紹介を引用
効果を再現できない医薬研究、約90% 捏造や改ざんよりも根深い、科学のタブーを暴く
  製薬企業が53件の研究を追試したところ、結果を再現できたのはそのうちわずか6件。
再現失敗率、約90%――
 命を救うはずの研究が、低すぎる再現性のために、無用な臨床試験、誤った情報、虚しい希望を生みだし続ける。ずさんな研究はなぜ横行するのか? その影響はどこまで及ぶのか? 改革は可能か?
 トップ研究者から、政府組織の要人、業界の権威や慣習に立ちむかう「反逆児」、臨床試験に望みを託す患者まで、 広範な調査・取材を基に、ひそかに生命科学をむしばんできた「再現性問題」の全貌をあぶりだす。

【次々と明らかになる、ずさんな研究の実態】
・乳がん細胞と黒色腫細胞を間違えて、1000件以上の乳がん研究がおこなわれた
・糖尿病や心臓病などの疾患との関連が報告された遺伝子の98.8%が、のちに関連が否定された
・実験の結果が出た後に、それをうまく説明できるように仮説を立てなおすことが横行している
・わずか数匹のマウスの実験結果をもとに、人での臨床試験がおこなわれた
・マウスで開発された敗血症治療薬150種類すべてが人では効果がなかった
……生命科学では、いったい何が起きているのか?」



【おすすめ度●】萩原伸次郎『金融グローバリズムの経済学』かもがわ出版, 2020年

農学部の学生にはやや難しいが、格差拡大や金融危機の原因をグローバルな視点から解説している教科書的な良い本 内容:格差社会の形成と世界金融危機の勃発 多国籍企業の誕生 国際資本取引の自由化の進展 アメリカの金融覇権 金融グローバリズムと格差社会の形成 世界金融危機はなぜ起こるのか 新自由主義時代の世界金融危機

出版社ページより紹介を引用
このメカニズムを知らずして世界経済は語れない!
今私たちは、アメリカ金融覇権の下、金融グローバリズムの資本主義世界に生きている。巨大金融資本は、新自由主義と相まって、世界経済と国民生活に深刻な影響をもたらしている。
本書は、その形成の歴史を解説し、巨大金融資本封じ込め政策と新自由主義との決別によって、格差社会と世界金融危機を乗り越えるルールある経済社会の創生を展望する。


2022年12月16日金曜日

【おすすめ度○】吉川祐介『限界ニュータウン』太郎次郎社, 2022年

開発に失敗して(というか、そもそも最初からまともに開発する気がなかったのではないかと疑われる)、荒廃する超郊外の分譲地の現状と問題点を分析している。都市問題や住宅問題に関心のある人は読んでみると面白いだろう。

出版社ページより紹介を引用
千葉県北東部には俗に「限界住宅地」「超郊外住宅地」、あるいは「限界ニュータウン」と呼ばれるような分譲地が数多く存在する。そのほとんどが1970年代半ばから80年代にかけて、投機目的で分譲されたミニ住宅地である。
首都近郊にありながら、交通利便性は悪く、生活インフラもあまり整っていない。
家屋よりも更地のほうが多く、住民の新陳代謝もあまり起こらない。
無住区画はどんどん荒れ地化していき、共同設備は劣化。住宅地は管理不全に陥っていく。
これは千葉県だけの問題なのか。
だれがこの状況を作っているのか──。
「限界ニュータウン」を訪ね歩きつづける著者が、その誕生から現状をたどり、利活用と未来を考える。

2022年12月6日火曜日

【おすすめ度◎】リチャード・エバーシェッド『食品偽装を科学で見抜く』日経BP社, 2019年

興味深く読める食品偽装を見抜くための科学的技法の紹介。食用油、水産物、牛肉、ミルク、スパイス、ワイン、野菜などの偽装の手口と対策 分析化学 同位体分析 タンパク質組成(プロテオミクス) DNA(ゲノミクス) メタボロミクス

出版社ページより紹介を引用
ニセ食品を見破るプロが、本物を選ぶためのスゴ技伝授!
食べ物をめぐる信じられないほど多様で複雑な状況のなかで栄養を取るために、わたしたちは製品のラベルに表示されている情報を信用せざるをえない。
もちろん、理解できるかどうかは話が別だ。しかし、実際にわたしたちにできる行動もある。この本を開き、食品偽装の世界では何が可能なのか、偽装はどう実行され、どのように発見され、どうしたらだまされずに済むのかを知ってほしい。そうして、賢い消費者になってもらいたいというのが著者たちの願いだ。

何を口に入れるのか、よい選択をしよう!
私たちが複雑きわまる食文化の中で暮らしている、という事実は否定しようもないがだからといって無力なわけでは決してない。
道路を横断する前に左右をよく見たり、日焼けから身体を守ったりするように、食品選びでもリスクを最小化するために、主体的に行動することができる。
食品中に含まれる化学物質は、食べれば身体の一部となる。
私たちは自分の身体に入れるものについて、受け身でいてはいけない。
食品生産・流通システムには私たちに決められないことがたくさんあるが、
何を口に入れるかは自分たちで決めることはできる。
よい選択をしよう!


2022年12月5日月曜日

【おすすめ度☆】吉次公介『日米安保体制史』岩波新書, 2018年

日米安保体制の歴史が概観できる。ただし「集団的自衛権」容認後の日米安保体制の大きな変化については掘り下げられていない(新書だから仕方がないが、それ以外の点でも基本的なことが述べられており、深い掘り下げはされていない)。内容:サンフランシスコ講和と日米安保体制の形成 日米「イコール・パートナー」へ 沖縄返還と70年安保 日米「同盟」への道 冷戦後の課題 安保体制の「グローバル化」 集団的自衛権と安保体制 など

出版社ページより紹介を引用
厳しい批判を浴びながらも長期間維持されてきたのはなぜなのか.今後の方向性を考えるための基本の一冊.
いわゆる「安保体制」はどのように形成され,変容・維持されてきたのか.日本の対米協力,米軍基地の運用,米軍基地問題をめぐる日米関係史の三つの要点を軸に,内在する「非対称性」「不平等性」「不透明性」「危険性」に焦点を当て,その全歴史をたどる.大きな転換点を迎えたいま,今後の方向性を考えるための基本の一冊.


2022年12月4日日曜日

【おすすめ度●】山本晴太・川上詩朗・殷勇基・張界満・金昌浩・青木有加『徴用工裁判と日韓請求権協定』現代人文社, 2019年

著者が弁護士なのでアカデミックなスタイルの書き方ではないが、いわゆる徴用工裁判について背景事情から日韓請求権協定の法解釈(の変遷)まで、全体像を知ることができる。 内容:韓国大法院判決を読み解く 背景事情 日韓請求権協定の内容と解釈 日韓両国の請求権協定解釈の変遷

出版社ページより紹介を引用
被害者の人権を救済するという視点からこの問題を捉え、救済策を考える。
日本の植民地主義のもと徴用工として働かされた韓国(当時:朝鮮)の人々に対し慰謝料を払うよう命じた、2018年10月の韓国大法院判決は、大きな波紋を呼んだ。日本国内では、「日韓請求権協定で解決済みの問題を、蒸し返すな」といった取り上げられ方が目立った。
 しかし、本当に請求権協定で「解決済み」だったのだろうか。
 今回の大法院判決を読み解き、請求権協定の締結過程やその後の解釈の変遷を調べると、日韓両国の政府や裁判所の態度が変遷し、その狭間で救済を受けられなかった被害者の苦闘が見えてくる。
 本書では、何よりも、被害者の人権を救済するという視点からこの問題を捉え、救済策を考える。
 戦時下にだまされて日本に連れて来られ、給料も支払われずに過酷な労働を強いられた13歳の少女。戦後、韓国に戻ってからも、日本で被った苦痛を忘れることなどできず、無償労働を強いた日本企業を相手に慰謝料の支払いを求めつづけました。そしてそれがようやく裁判で認められました。
 この問題は日韓両国の国家間の問題として考えられがちですが、何よりも一番考えるべきことは、過酷な被害を受けた彼女らが、13歳から今日に至るまで救済されずに放置されてきたということではないでしょうか。韓国大法院は彼女らの訴えをどうして認めたのか、判決を読み解き、考えてみませんか。

2022年12月2日金曜日

【おすすめ度◎】明日香壽川『グリーン・ニューディール 世界を動かすガバニング・アジェンダ』岩波新書, 2021年

グリーンニューディール、すなわち気候変動問題への対処を通じて社会全体を変革(ニューディール)していこうとする取り組みについてまとまった知識が得られる。内容:環境も経済も正義も 科学から政治へ 政治への期待と幻滅 エネルギー革命に乗ろうとしない日本 グリーン・ニューディールの考え方と具体的内容 日本版グリーンニューディール グリーンニューディールの課題 現世代と未来世代の豊かさと幸せをめざして

出版社ページより紹介を引用
気候危機の回避とコロナ禍からの回復を果たすには。米バイデン政権発足で加速する世界的潮流を徹底解説。
気候危機をもたらした社会システムをチェンジし、コロナ禍からのリカバリーとジャスティスの実現をも果たす――米バイデン政権発足で加速する世界的潮流とは何か。その背景、内容、課題を解説すると共に、「二〇五〇年カーボン・ニュートラル」を宣言したものの政府も産業界も対応が大きく遅れている日本のとるべき道を提言する。



2022年12月1日木曜日

【おすすめ度◎】阮蔚『世界食料危機』日経プレミア, 2022年

阮蔚『世界食料危機』日経プレミア, 2022年 ロシアのウクライナ侵攻による世界の食料供給への影響をはじめとして、現在の世界の食料問題をコンパクトにまとめている。内容:食肉の消費拡大が飢餓を生む 主食穀物を圧迫する畜産飼料生産 地球温暖化がもたらす食料生産の危機 バイオ燃料が生み出した農産物争奪戦 飢餓を招く大国の論理 アフリカ農業を壊した米欧の穀物戦略 化学肥料の争奪 日本の食料安全保障


出版社ページから紹介を引用
<<ウクライナ危機が浮き彫りにする飢餓の構図>>
■肥沃な土壌「チェルノーゼム」(黒土)が広がり、世界的な穀倉地帯を抱えるウクライナ。広大な農地を抱え、農産物の増産に力を入れてきたロシア。両国は近年、安価な穀物の輸出をとおして、アフリカやアジアの途上国を中心に数億人の食料を支えてきた。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻により「世界のパンかご」とも呼ばれる豊穣な地域は破壊され、世界の食料事情は一変しつつある。すでにアフリカ東北部では、4季連続で雨季に降雨がわずかしかない過去最悪ともいわれる干ばつが続き、1300万人が飢餓に直面するなか、輸入食料の高騰に直面。「第2次世界大戦後、目にしたことのないような大惨事を地域の農業と世界の食糧・穀物供給にもたらそうとしている」(WFP)。
■著者はこうした危機的状況が、両国の戦争状態解消によってすぐに正常化するとは考えていない。世界の食料生産は構造的な問題を孕んでいるからだ。脱炭素の動きを受けたエネルギー価格の高騰とバイオ燃料生産の増加、大国の都合による穀物の低価格輸出、温暖化による干ばつや洪水の多発、地下水の枯渇、新興国での食肉の増加など、解決が困難な問題が山積している。
■足元では、経済制裁による化学肥料の流通減に加え、原料高にともなう化学肥料の大幅値上げが続く。肥料の使用抑制が広がり、来年以降の収穫減につながりかねない。気候変動などの中長期的問題に戦争の災禍が加わり、世界の食料生産は複合危機に陥る可能性が高まっている。日本も物価の高騰だけでは済まなくなることが懸念されている。
■本書は、ロシアによるウクライナ侵攻を端緒に、眼前に広がる世界規模の食料危機とその複雑な背景、さらには日本の食料安全保障など注目のテーマを、一般には知られていない情報を盛り込みつつ読み解く。日本にできる貢献についても触れる。著者は、ウクライナなど世界各地での現地調査も交えてリサーチしてきたベテラン研究者。



2022年11月23日水曜日

【おすすめ度○】阿部潔『東京オリンピックの社会学 危機と祝祭の2020JAPAN』コモンズ, 2020年

阿部潔『危機と祝祭の2020JAPAN』コモンズ, 2020年 新国立競技場問題、「オリンピック・レガシー」の問題、「1964年」というノスタルジー、1940年(皇紀2600年)の「幻のオリンピック」など2020東京オリンピックをめぐる論点を分析している。ただし、後半のナショナリズムを扱った章は、植民地支配の歴史や現在の東アジアの政治状況に対する分析が決定的に不足しており不適切。

出版社ページより紹介を引用
社会学の視点で東京オリンピックの意味を正面から問い直す本。
過去2回(1940年・1964年)の東京大会との比較と膨大な参照文献をとおして、日本社会の在り方=ナショナリズムの深層/未来のゆくえと五輪の政治的な意味を浮かび上がらせる。
新型コロナウイルスで延期になっても問題は何も変わらない。


2022年11月7日月曜日

【おすすめ度●】中川淳司・米谷三以 編著 『国際経済ルールの戦略的利用を学ぶ』文眞堂、2022年

著者は主に弁護士と官僚 実務的な観点から、国際貿易に関する様々な興味深い論点が論じられている。学部生にはかなり難しく、この問題によほど関心がないと理解できないだろう。 内容:国際経済ルールの形成と利用(総論的考察) 「質の高いインフラ」舷側の形成過程 商品(関税)分類の国際的な統一ルールの形成 先端技術製品に関する関税分類紛争と解決策としてのHS条約改正 WCO/WTOにおける関税問題と企業・産業団体 農業・農産物貿易のルール形成及び利用 内側からみたサービス貿易協定交渉 デジタル貿易の国際ルール形成 WTOにおける「上級委員会危機」について 日本の通商政策 WTOからTPPへ、「経済安保」と国際通商システムの行方 投資の保護・促進のためのルール形成 国際仲裁手続きの迅速化に向けたルール形成の動向 対内直接投資審査のあり方について 地球規模課題に関するルールメイキング及び実施について パリ協定とSDGs デジタル社会における国際課税 国際課税の分野における国際ルールの形成と利用 マネーロンダリング対策と弁護士に対する規制 宇宙資源開発に関する法形成過程

出版社ページより紹介を引用
国際経済法のさまざまな分野におけるルールの形成と利用の事例を取り上げ、いかなる主体がルールの形成・利用過程に関与するか、ルールの内容や法形式、交渉フォーラムがいかにして選択されたか、実際に関与した日本の当事者(政府当局者、私企業・業界団体、法曹など)が国際経済ルールの形成と利用の実態を解説し、課題を明らかにする本邦初の書。