注目の投稿

【まとめ】このブログ全体のまとめです。

紹介する本が増えてきたのでまとめます。 【おすすめ度◎】の本(特におすすめする本、このページの下の方に) 【おすすめ度☆】の本の一覧はこちら (教科書あるいは入門書的な本) 【おすすめ度○】の本の一覧はこちら (読むことをおすすめする本) 【おすすめ度●】の本の一覧はこちら (専...

2022年12月28日水曜日

【おすすめ度◎】小島道一『リサイクルと世界経済 貿易と環境保護は両立できるか』中公新書, 2018年

先進国(日本)と発展途上国(中国、東南アジア)の間での中古品や廃棄物の移動の現状と問題点を踏まえたうえで、適切な国際ルールの在り方を考察する本 内容:貿易と環境保護は両立できるか 国境を越えてリユースされる中古品 国境を超えてリサイクルされる再生資源 中古品や再生資源の越境移動に伴う問題 安全性と衛生 製造業の発展を阻害する可能性 発展途上国における廃棄物の増加 リサイクルに伴う環境汚染 国際リサイクルに関する国際ルール GATT/WTO バーゼル条約その他 適切な国際リサイクルに向けた日本の取り組み 国際リサイクルの将来展望

出版社ページから紹介を引用
「古紙やペットボトルなどの分別収集のイメージが強いリサイクル。だが、回収された使用済み製品は国内で再使用・再生利用されるだけではない。中古車や鉄スクラップなどは今や日本の主力輸出品である。一方、国際的なリサイクルは急速に拡大し、各国による再生資源の獲得競争や、環境汚染を生む有害廃棄物の輸出など、多くの問題も起こっている。二十世紀末から急拡大している知られざる現状と、問題点を明らかにする。」

https://www.chuko.co.jp/shinsho/2018/05/102489.html





【おすすめ度◎】宮田律『石油・武器・麻薬』講談社現代新書, 2015年

題名通り、「石油・武器・麻薬」に注目しながら中東紛争の本質を説明する。著者が研究成果を踏まえて「暴力で平和はつくれない、日本にできることは軍事活動ではない」という結論に至ったことは敬意を払うべき。 内容:紛争の陰で暗躍する軍産複合体 新シルクロード構想を掲げる中国の野望 石油争奪戦争と価格下落の影響 中東を破局に導いた米国の戦略 暴力の拡散と貧困・格差の連鎖など

出版社ページから紹介を引用
テロはなぜ「終わらない」のか。武力によって平和な社会をつくることはできない。もはや私たちも他人事ではいられない。パリ同時テロの背景にも通じる、世界でいま、起きていることとは。欧米「軍産複合体」の暗躍、中東における石油争奪戦、麻薬ネットワークの「闇経済」……。米・ロ・英・仏・中の思惑と、中東の現実から、「第三次世界大戦」とも形容される複雑な国際政治情勢をわかりやすく読み解く。

◆なぜテロは「終わらない」のか◆
武力によって平和な社会をつくることはできない。
もはや私たちも他人事ではいられない。
パリ同時テロの背景にも通じる、世界でいま、起きていることとは。
欧米「軍産複合体」の暗躍、中東における石油争奪戦、
麻薬ネットワークの「闇経済」……。
米・ロ・英・仏・中の思惑と、中東の現実から、「第三次世界大戦」とも形容される複雑な国際政治情勢を多角的かつわかりやすく読み解いた、決定版。



2022年12月27日火曜日

【おすすめ度○】全国霊感商法対策弁護士連絡会・佐高信『統一教会との闘い』旬報社, 2022年

統一教会問題(統一教会被害)の概要がわかる本。やむをえないことであるが、出版準備にあまり時間をかけていないので、やや雑に感じられるところも少なくない。途中の佐高信と山口広弁護士の対談は読み飛ばしてもよい。 内容:統一教会の歴史 霊感商法と人集め 統一教会と政治など

出版社ページから紹介を引用
中心的活動の全てが違法とされた特異な宗教法人
 著者らが所属する全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、統一協会による霊感商法の被害が多発したことを受け、1987年に、当時、300余名の有志の弁護士によって結成されました。その後、この会は、本当に長きにわたり、統一協会との戦いを続け、多くの裁判で成果を勝ち取り、被害救済に努めてきました。
 とくに注目すべきは、これらの裁判を通じて、統一協会が行ってきた信者に対する伝道活動、献金や物品購入に対する勧誘活動、そして統一協会の教義において救いの中核となる、原罪を脱ぐための祝福(合同結婚式)への勧誘のいずれについても違法であるとの判断が確立されている、ということです。すなわち統一協会は、こうした団体としての中心的活動の全てが違法であるとされた、極めて特異な宗教法人ということができます。

政治家の関与の疑い
 こうした実情から、我々はその被害根絶の一手段として、長年にわたり、所轄庁である文化庁宗務課に対し、統一協会に対する解散請求やその前提としての質問権の行使を求めてきましたし、名称変更に応じることのないように求めてもきました。それにもかかわらず名称変更が認められてしまったことについては、宗務課に対する信頼が大きく揺らいだものであるとともに、政治家の関与も強く疑われるところとなりました。また、これに先立つ2007年以降相次いだ統一協会関連会社に対する刑事摘発、とくに2009年の新世事件においては渋谷教会、豪徳寺教会に相次いで強制捜査が入ったにもかかわらず教会本体の責任までは追及されなかったことも、やはり政治家の圧力があったとしか思われませんでした。
 歴史を振り返ると、かつて統一協会が日本に渡り、日本で宗教法人として認証された1964年の直ぐ後から、世界的な情勢も相まって、共産主義をサタン的思想として敵視する統一協会と日本の政治家とが連携を図るようになり、その関係性は次第に深まっていきました。
 その後、国内では1980年代に統一協会による霊感商法が社会問題化し、1990年代には合同結婚式の問題が報じられるとともに、国外では冷戦終結とともに反共の機運も削がれた結果、政治家と統一協会との結びつきは、いったんは希薄になっていたかのように見えました。
 しかし、2000年頃からは、再び国会議員と統一協会の繋がりが見え隠れするようになり、2005年、2006年に安倍晋三元首相が連続して統一協会の関連団体であるUPF(天宙平和連合)のイベントに祝電を出すなどし、他の国会議員も統一協会関連のイベントに祝電を出したり、機関誌に登場したりということが増えていきました。2018年、2019年には全国弁連から、全ての国会議員に宛てて注意喚起を行いましたが、これによって政治家が統一協会と縁を切るということはなく、一層関与が加速しているような状態でした。その最たるものが、安倍元首相が2021年9月に統一協会関連団体であるUPFの大会にビデオレターの形で登壇し、統一協会トップである韓鶴子を賛美する言葉を述べたことでした。
 こうした政治家の統一協会への関与が、結果として安部元首相への銃撃事件を引き起こす一つの契機となってしまったことについて、統一協会問題について多くの情報を有していた我々としても、この問題への注意喚起が不足していたという反省があります。だからこそ、この機会に、多くの人に、統一協会による被害の悲惨な実態を知ってもらいたいと思うのです。


【おすすめ度○】倉橋正直『阿片帝国日本』共栄書房, 2008年

あまり知られていないが、実は重要な大日本帝国の阿片政策に関する本。日本が中国侵略していたときに、日本が実効支配していた台湾・満州で日本政府がアヘンの専売制を敷いて、アヘンを大量に売りつけて儲けていたこと。のみならず、中華民国が実効支配していた地域にもアヘンを密輸出してばらまいていたこと。当時、日本と中華民国の間には不平等条約があり、中華民国は日本人のアヘン密輸業者を逮捕しても、裁判にかけて処罰することができなかった。テーマがテーマだけに史料が少なく、推測に頼らざるを得ない部分はあるが、中国にいた日本人の大半が、何らかの形で阿片密輸・密売に関わっていたという。 内容:阿片を用いた日本の中国侵略 阿片密売関係者(「祇園坊」と名乗る正体未詳の人物)による中国阿片密売レポート 満州国における阿片政策 後藤新平と台湾における阿片政策 阿片禁止運動家・菊池酉治

版元ドットコムより紹介を引用
今日、薬物汚染が世界的に問題になっている。日本もまた例外ではなく、すでにその害は軽視できない段階に至っているが、日本国民の多くは、日本が薬物汚染問題では被害者の立場にあるとだけ考えている。たしかに、現在、あるいは戦後の時期に限定すれば、日本は被害者である。しかし、戦前まで視野に入れれば、当時、日本は恐るべき加害者であった。すなわち、日本は世界一の麻薬生産国であって、阿片・モルヒネ・ヘロインなどの毒物を大量に、かつ長期間にわたって中国や朝鮮をはじめとするアジア諸国に密輸した。その結果、アジア諸国民は、はかりしれない害毒を被った。しかも、戦後の日本は、そういった恥ずべき行為を真摯に反省するどころか、ひたすら隠蔽し続けてきたのだ。


2022年12月25日日曜日

【おすすめ度◎】中村洋子『フィリピンバナナのその後』七つ森書館, 2006年

『バナナと日本人』のグループによる、問題の掘り下げをした本。本の後半にある国際的なレベルでの消費者運動に関する説明の部分がとても有用。 内容:マルコス政権下のバナナプランテーション 包括的農地改革計画下のバナナプランテーション 多国籍企業の規制 有害製品の国際的規制による多国籍企業の規制 多国籍企業の環境破壊に対する規制 国連多国籍企業行動基準の策定 グローバリゼーションと多国籍企業の規制 国連の機構改編と多国籍企業に対する規制の後退 IOCUの方針転換

版元ドットコムより紹介を引用
鶴見良行氏が名著『バナナと日本人』を出版してから20余年。その後、フィリピンバナナはどうなったか…。本書は多国籍企業の反公共的行為が過去のものではないことを示す。


【おすすめ度◎】石井正子編著『甘いバナナの苦い現実』コモンズ, 2020年

バナナを媒介にして、先進国(日本)と発展途上国(フィリピン)の関係の在り方を問題提起する。14年前の『フィリピンバナナのその後』と比較して、状況がどう変わったのかを確認するのも興味深い。 内容:意外と知らないバナナの話 ミンダナオ島で輸出用バナナが作られるようになるまで バナナ栽培に関わる企業と人々 高地栽培バナナの発見と山間部の変化 バナナ産業で働く人々の現実 労働者の闘い バナナ栽培と農薬 農薬空中散布問題 多国籍アグリビジネスの再編と新たな「規制」枠組み バナナのサプライチェーン エシカルな食べ方

出版社ページより紹介を引用
「日本人がもっとも多く食べている果物バナナ。安さの一方で、主な輸入先のフィリピン・ミンダナオ島では、農薬の空中散布による健康被害や不公正な多国籍企業の活動が目立つ。栽培・流通の知られざる現状を調査に基づいて詳細に描き、エシカルな消費の在り方を問いかける。」


なお、PARCによるこの本の動画販もある。サンプル動画↓
http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/banana_new.html

【おすすめ度○】橋本毅彦『安全基準はどのようにできてきたか』東京大学出版会, 2017年

一見、単純に見える「安全基準」が、じつは複雑なプロセスを経て決められていることが分かる面白い本 内容:身の回りの安全基準 航空機と運行システム 船舶 保険業界・船級協会による評価 消防 治水(日本とオランダ) 原子力分野における確率論的安全評価の導入 食品の安全性と水銀中毒・生活習慣と行政基準 災害予防と心理学(労働と適性検査) 医療機器の国際規格作り 臨床試験と適性実施基準 欧州のCEマーク制度の取り組み

出版社ページより紹介を引用
「堤防の高さはどのようにして決まるのか? どのレベルであれば食品を安全に食べられるのか? 消防・原子力・医療機器など現代社会を支える9つの技術の安全基準について、その成り立ちの歴史的経緯や、背景にある技術的考察について解説する.」


【おすすめ度○】田口理穂『なぜドイツではエネルギーシフトが進むのか』学芸出版社, 2015年

ドイツでの再生可能エネルギー普及の取り組みの紹介 内容:パッシブハウス(エコ建築) 自治体がサポートする再生可能エネルギー事業(シェーナウ電力会社) 収益と持続性を両立する企業の取り組み(GLS銀行) 課題が山積する原発廃止 など

出版社ページより紹介を引用
「国民の総意により脱原発を宣言したドイツ。再生可能エネルギーが電力消費量の約3割を占めるまでに普及しているのはなぜか。それは人々の環境意識が高いだけでなく、投資が報われる仕組みや法制度が支えている。市民、企業、行政がどんな取り組みをしているのか、ドイツ・ハノーファー在住の著者が、市民目線で最前線を紹介する。」



【おすすめ度☆】中西優美子『概説EU環境法』法律文化社, 2021年

題名通り、EUの環境法の概説書。入門書ではない。一人の著者がこれだけの広範な内容をカバーしているのは非常に驚嘆すべきことである。 内容:EU環境法の発展 EU法的枠組み 環境に関する権限 環境政策の目的 環境に関する原則(予防原則・未然防止原則・根源是正優先の原則・汚染者負担の原則) 環境法の策定及び実施 下部機関(欧州環境機関、ECHA、EFSA) EU環境法の解釈と適用の確保(EU司法裁) EU措置による環境保護強化(環境損害責任指令) 環境分野における市民・環境保護団体の参加 EU環境法と構成国 個別分野(気候変動・生息地及び動植物種保護、動物福祉、化学物質、遺伝子組み換え、水、大気、廃棄物) エネルギーと原子力など

出版社ページより紹介を引用
「EU環境法の歴史、構造、原則、手続をおさえ、エネルギー法を含む個別分野を詳細に解説。EU判例・規則等のほか、独仏等、構成国の法律・裁判の動向にも言及。一次資料、詳細な索引(事項、判例、措置別)、資料の読み方まで解説する、この分野の必読文献。」


【おすすめ度○】秦正樹『陰謀論』中公新書, 2022年

ポリティカル・サイエンスの手法でいわゆる陰謀論を分析している。この本に書かれている分析は参考になるが、残念ながらこの本では、政府自身が陰謀論を垂れ流す、あるいは少なくとも政府が陰謀論を阻止しようとしないことの危険性が全く見落とされている(著者はまだ若い研究者なので厳しいことを要求するのは酷だが)。政府の側が陰謀論を垂れ流すのと、政府を批判する側が陰謀論を垂れ流すのでは社会に対する悪影響のレベルがまるで違うのだけど、この本では「保守の陰謀論」と「リベラルの陰謀論」が「どっちもどっち」のような扱いになってしまっている。実際には、今の政府と緊密な関係がある「保守の陰謀論」の方が社会に及ぼす悪影響ははるかに深刻。 内容:「陰謀論」の定義 陰謀論とソーシャルメディア 「保守」の陰謀論 「リベラル」の陰謀論 「政治に詳しい人」と陰謀論 民主主義は「陰謀論」に耐えられるのか

出版社ページより紹介を引用
「ネット上の陰謀論「Qアノン」を妄信する人々によって引き起こされたアメリカ連邦議会襲撃は、世界を震撼させる事件であった。21世紀の今、荒唐無稽な言説が多くの人に信じられ、政治的影響力すら持つのはなぜか。本書は、実証研究の成果に基づき、陰謀論受容のメカニズムを解説。日本で蔓延する陰謀論の実態や、個人の政治観やメディア利用との関連、必要なリテラシーなどを交え、「民主主義の病」への対抗法を指南する。」


【おすすめ度○】アレックス・ニコルズ、シャートット・オパル『フェアトレード』岩波書店, 2009年

やや古い本であるが、フェアトレードの取り組みを通じて、現在の先進国と発展途上国の関係の在り方を論じている。フェアトレードを(主流派)経済学的に分析しているところが面白い。内容:フェアトレードの経済学 フェアトレードと倫理的(エシカル)消費 フェアトレード業界の構造と戦略 資金調達 フェアトレード認証 フェアトレードのマーケティングなど

出版社ページより紹介を引用
「途上国の作り手との「公正な貿易」により,貧困問題解決を推進するフェアトレード.コーヒーやバナナを中心に始まった取り組みは,いまや急激に拡大している.その先駆的研究者と実践者が,フェアトレードのビジネスとしての実際と魅力を,豊富な事例とともに紹介.消費者の選択が変えうる未来を提言する.
■訳者からのメッセージ
 本書の原書は,二〇〇四年にイギリスで出版された.(中略)サブタイトルに “Market-driven ethical consumption”とあるように,本書はフェアトレードの経済学的側面,マーケティング,資金面など,他の書籍が扱っていない分野を多く取り上げた,アカデミックな内容となっている.特に経済学的側面については,農業という産業自体が持つリスクの分析や,途上国の農村地域における資本の流れと資金アクセス,また世界の商品市場の特性とフェアトレードの整合性などが書かれている.
 編著者のアレックス・ニコルズ氏はオックスフォード大学サイード・ビジネススクールで社会的起業について教鞭をとるフェアトレード研究者である.同じく編著者のシャーロット・オパル氏は,本書執筆時はトランスフェアUSAの新製品開発担当スタッフであった.また第五章は,NEF(新経済団体)のスタッフで,ツイントレーディングの共同事業者でもある,ホイットニ・トーマス氏の執筆がした.研究者と実践者がともに書いた数少ないフェアトレード本として,本書の存在は大きい.
 フェアトレードを研究する学生や研究者,またフェアトレードに関心を持ち,深く知りたいという一般の消費者の方々に読んでいただければ幸いである.」


2022年12月23日金曜日

【おすすめ度○】デイヴィッド・ヒーリー『ファルマゲドン 背信の医薬』みすず書房, 2015年

製薬会社の宣伝活動の問題点 製薬会社主導の臨床試験とEBMの問題点 論文ゴーストライター問題などを取り上げている。基本的に参考になる本だが、精神科医療について否定的に書かれ過ぎているように感じる。

出版社ページより紹介を引用
「抗うつ薬が自殺を惹起するという深刻な副作用を暴いた『抗うつ薬の功罪』の著者ヒーリーが、薬物治療依存の時代に産官学を巻き込んで拡大する背信の構造を告発する。なかでも、臨床試験データの隠匿や改竄などの不正操作、医学論文のゴーストライティングの問題を徹底して追及している。そこからは、科学への信頼を逆手にとったマーケティングが、学者や医師のコンセンサスを乗っ取って特許薬の需要をつくりだし、医療と医薬のあらゆる側面が人間よりもその経済に奉仕させられているという、ディストピア的様相が浮かび上がる。
これに対してヒーリーは、濃霧を晴らすような抜本的な改革案を提示している。臨床試験の生データの公開、医薬品の特許制度および処方箋薬制度の見直し、ユーザーが持つ副作用情報のグローバルな集積と活用など──いわば、医薬に関する知識と権限をユーザーに解放し、ボトムアップでディストピアを解体するという構想である。」


【おすすめ度○】ジョン・ジェラルド・ラギー『正しいビジネス』岩波書店, 2014年

著者は国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を作成した「人権と超国家企業およびその他のビジネス活動の問題に関する国連事務総長特別代表」を勤めた国際政治学者。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の成立までの経緯とその内容が書かれている。良書だがやや古いのでおすすめ度○にした。

出版社ページから紹介を引用
多国籍企業が各地で繰り返す人権侵害に対して,何ができるのか.国連事務総長の特別代表となった著者は,六年にわたる調査や協議を経て,国家の義務,企業の責任,被害者の救済を柱とする「ビジネスと人権に関する指導原則」を取りまとめた.その経緯をたどりながら,ビジネスの「常識」とすべきこのアプローチの意義を説く.

■編集部からのメッセージ
 多国籍企業が進出先で人権侵害を行うケースが後を絶ちません.低賃金労働や児童労働,開発に伴う土地の強制収用,環境破壊や公害,政治腐敗や反対運動弾圧への関与などです.こうしたことが起きたとしても,国境を超える企業活動を規制したり,海外の企業に責任をとらせて被害者を救済したりすることは非常に困難です.
 こうした問題について,国連のアナン事務総長は,2005年にハーバード大学の政治学者ジョン・ジェラルド・ラギー氏を「ビジネスと人権に関する事務総長特別代表」に任命し,多国籍企業に対する取り組みと被害者救済を目指す枠組みの作成を委託しました.その難しい課題を引き受けたラギー氏は,6年にわたる様々な調査を経て,「ビジネスと人権に関する指導原則」という文書をまとめました.人権を保護する国家の義務,人権を尊重する企業の責任,被害者の救済へのアクセス,という三つの柱から成るものです.
 本書は,ラギー氏が,「指導原則」に到達するまでの紆余曲折をたどりながら,この画期的なアプローチの内容や意義,その実効性について解説するものです.
 国連という場で,各国政府や企業,人権NGOといった様々なアクターとのやり取りを重ねながら,それらをどのように巻き込んで国際的なルールを作り上げていったのか,そのダイナミズムを感じさせる叙述になっています.プラグマティズムに根差した粘り強い行動にも学ぶことが多いはずです.
 これからのビジネスの〈常識〉とは何かを知ることのできる最適の本です.ぜひご一読いただきたく思います


【おすすめ度○】坪井ひろみ『グラミン銀行を知っていますか』東洋経済新報, 2007年

バングラデシュでの農村貧困削減やジェンダー平等を目指す取り組みであるグラミン銀行の学術的研究。グラミン銀行の仕組みや実態が詳しくレポートされている良書。

出版社ページより紹介を引用
バングラデシュの貧しい女性たちに無担保で融資し、自立を促す「グラミン銀行」。その活動を8年にわたって調べてきた著者が、女性たちの奮闘する様子を活き活きと描く。




【おすすめ度○】スーザン・ドウォーキン『地球最後の日のための種子』文藝春秋, 2010年

ベント・スコウマンの生涯を軸にして、ジーンバンク(遺伝子資源を保管する施設)の現状と問題点を詳細に描いている。

出版社ページより紹介を引用
凍土の地下に科学者が作った「ノアの箱舟」がある
植物の多様性を守る「種子銀行(ジーン・バンク)」。食糧と環境の危機に備え、世界中の種子を収集、計画を実現させた科学者達を描くノンフィクション
担当編集者より
北極圏の永久凍土の島の地下150メートル。「地球最後の日のための貯蔵庫」と呼ばれるその施設に収められているのは300万点を超える作物の種子だ。もし地球の作物が滅亡しても、そこの種が農業復興の「種」となる……。本書は植物の多様性を守るために世界中をめぐり、無数の作物のサンプルを収集・貯蔵して、遺伝情報を寡占しようとする企業と対立しつつ、遺伝資源を守った科学者たちの物語。秋に名古屋で開かれるCOP10の議題でもあるホットな問題にも迫る科学ノンフィクションです。(NS)


【おすすめ度☆】米本昌平『バイオポリティクス』中公新書, 2006年

やや古い本であるが、欧米でのバイオポリティクス(生-政治)の(当時の)最新動向 人体部品産業 移植ツアーなど

紀伊國屋書店ウェブサイトより紹介を引用
人の命はいつ始まるのか―この問いがアメリカで大統領選挙の争点となり、ヨーロッパで法制化が急がれる原因となっているのはなぜか。臓器移植や人体商品の売買が南北問題を激化させ、韓国で起きた科学史上稀に見るスキャンダルも、そうした動きの一例として位置づけられる。今や生命倫理は政治問題となったのだ。生命をめぐる急速な技術革新と人類の共通感情との間にあるギャップを埋めるために必要な視座を提示する。


【おすすめ度○】日比野由利『ルポ 生殖ビジネス』朝日新聞出版, 2015年

インド、タイ、ベトナムでの代理出産ビジネスのルポ 著者は金沢大学医学部助教だが、まるで新聞記者のようなスタイルで関係者に丁寧にインタビュー(取材)している。このスタイルのおかげで問題の社会的な側面(貧困)が掘り下げられているが、逆に個別事例に深入りしすぎで全体像が見えなくなっているように感じられる面もあるように感じる(その点も新聞記者の本のようだ)。

出版社ページより紹介を引用
子どもがほしい──この願いが生殖技術の進展によってかつては考えられなかったレベルまで可能になった。卵子・精子の提供にとどまらず、子宮を借りることによって子を持てるようになったのだ。「親」になるのは不妊カップルだけでなく、独身者、同性愛カップルにまでおよぶ。一方、親子をめぐる法律や社会風土は各国それぞれで異なり、代理出産を許容する国には世界から「子づくりツアー」がやってくる。代理母先進地のインド、タイ、ベトナムの現地で代理母、依頼者、仲介者、医師にインタビュー調査した著者が、代理出産の今と将来をリアルに描き出す。他人の子を代わりに産むこと、他人に子を産んでもらうこと、などさまざまな境遇の人びとの生の声からは、その社会の家族観や子ども観、さらに南北問題や貧困問題までが浮かびあがってくる。


【おすすめ度◎】谷山博史編著『「積極的平和主義」は、紛争地になにをもたらすか』合同出版, 2015年

NGOが経験してきた紛争現場の現実を踏まえ、第2次世界大戦後に国外で「日本軍」が一人も殺していない日本にはどこの国にも果たせない役割があることを主張している 内容:アフガニスタン イラク 南スーダン カンボジア ソマリア 紛争現場の現実を無視した自衛隊派遣の危険性 作られる戦争と人道支援

紀伊國屋書店ウェブサイトより紹介を引用
戦争や紛争は、武力では決して解決できない。
安倍首相は「紛争地の日本人を自衛隊で守る」と言うが、それが決して出来ない理由を、紛争地で人道支援活動をしてきたNGOが、具体的な事例で明らかにする。
平和憲法が、日本の武力行使を許してこなかったからこそ、紛争地で日本人は現地の人々から厚い信頼を得て、危険な時にも協力してくれる関係ができていた。
現政権の積極的平和主義の間違いが、よく理解できる本。


【おすすめ度○】石井哲也『ゲノム編集を問う』岩波新書, 2017年

ゲノム編集の規制に関する基本的論点をうまくまとめている 品種改良の話もあるが、医療への応用(主に生殖医療)の話が中心。ただし2017年の本なのでやや古い。そのためおすすめ度☆ではなく○にした。

出版社ページより紹介を引用
「ゲノム編集」とは何で,何が問題なのか.――〈狙った遺伝子を〉〈痕跡残さず〉改変できるこの技術は,生命のありようをどう変え,そしてどこまで変えることが許されるのか.規制と推進とで揺れる中,対話のために,作物や家畜の品種改良,そしてヒトの医療におけるその可能性と課題をあぶり出し,いかに向き合うべきかを真摯に問う.



【おすすめ度○】白輪剛史『動物の値段と売買の謎』ロコモーション, 2010年

著者は希少野生動物の貿易業者 希少野生動物の国際取引の実態を生々しく伝える良書


紀伊國屋書店ウェブサイトより紹介を引用
タブーを破る驚愕の話。原野や草原で捕獲された動物たちが動物園やペットショップに並ぶまで!世界中から珍種、希少種を輸入する動物商という仕事の中身がわかる本。



【おすすめ度◎】石渡正佳『食品廃棄の裏側』日経BP, 2016年

食品廃棄物を題材にして、廃棄物処理業界の実態を生々しく描いている。著者は千葉県庁職員で、県庁内の不法投棄摘発チーム「産廃Gメン」を率いていた(「Gメン」はGovernment menの略、取締官を意味する英語の隠語) 内容:消費者の胃袋が不法投棄現場に 肥料化の罠 食肉偽装事件 ダイコーはどういう会社だったか 廃棄物の撤去責任 食品廃棄物流出の背景 食品リサイクルの方法とその障害 食品リサイクルの新動向 不正発見には会計検査を 転売、不法投棄の誘惑 環境省と農水省 オフィシャル情報の利用 優良リサイクル業者登録制度の問題点 リサイクル率算定の問題 フードサイクルの全体最適化 循環産業から環境制御産業へ

出版社ページ



【おすすめ度◎】ジョン・ミッチェル『追跡・沖縄の枯れ葉剤』高文研, 2014年

米軍がベトナム戦争中に使用した化学兵器(枯葉剤)を追跡するルポルタージュ。枯葉剤は沖縄に備蓄、使用、廃棄されていた。

出版社ページから紹介を引用
ヴェトナム戦争で散布された枯れ葉剤は、沖縄でも使われていた!?
 ヴェトナム戦争時に用いられた軍用除草剤(枯れ葉剤)が沖縄で備蓄、使用、廃棄されたという事実を、枯れ葉剤の病害を被った退役米兵たちの証言を手がかりに突き止める。
四年に渡る取材からひた隠しされる〝エージェント・オレンジの闇〟とは何か?を明らかにする。
 これはいまだに枯れ葉剤の被害を認定しない米国政府と追従する日本政府に向けられた警鐘である。」


【おすすめ度○】村上朋子『激化する国際原子力商戦』エネルギーフォーラム, 2010年

福島原発事故以前のいわゆる「原子力ルネッサンス」のころの世界の原子力業界の動向に関する良書(この本は福島原発事故以前の本なので、現在では状況が変わっている)

【「TRC MARC」の商品解説】21世紀のエネルギー・環境潮流の中で、世界各国はどのように原子力を位置づけ、企業はどのように事業・技術選択を行っているのか。そして原子力の将来はどうなるのかを、他エネルギーとの関係という視点を入れて分析する。

版元ドットコムによる紹介
国を挙げての熾烈な「原子力サバイバル」が始まった!日本の産業競争力向上に原子力産業が果たすべき役割とは。

【おすすめ度○】原子力資料情報室『破綻したプルトニウム利用』緑風出版, 2010年

原子力発電所で使用された核燃料(使用済み核燃料)を「再処理」して、再び原子力発電所の燃料にすることを「核燃料サイクル」という。現実には、核燃料サイクルには莫大な経費が掛かり、使用済み核燃料を「再処理」して作られた核燃料は、通常の核燃料よりはるかに効果になる。そもそも、青森県で建設中の再処理工場は、建設開始から30年以上の時間と2兆円以上の費用を投じたにもかかわらず、トラブル続きでいまだにまともに運転できていない。それ以外にも核燃料サイクルの問題点は多数あるが、本書はこのような核燃料サイクル事業とプルトニウム利用の問題点を丁寧に紹介する良書である。
 この本は福島原発事故以前の本であるが、その時点で既にプルトニウム利用は破綻していたとしか言いようがないことを明らかにしている。

原子力資料情報室の本照会ページ
 日本のエネルギー政策は、依然として原子力を中心としています。そして、原発の使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で燃料として使用することを模索しています。本書は多くの科学者が疑問を投げかけている「核燃料サイクルシステム」が、すでに破綻し、いかに危険で壮大なムダであるかを、詳細なデータと科学的根拠に基づいて分析しています。そのうえで、このシステムを無理に動かそうとする政府に対して、政策の転換を提言しています。ぜひお読みください。



【おすすめ度○】嶋津暉之・清澤洋子『八ツ場ダム』岩波書店, 2011年

八ツ場ダム問題について多角的に検討している。利水(水資源開発)や治水(災害防止)など、ダム問題の基本書としても使える。

出版社ページより紹介を引用
2009年の国交相の中止発言,2010年11月の中止棚上げ発言などで日本中の注目を集める八ッ場ダム計画.58年にわたり住民を翻弄してきた経緯を振り返りつつ,この巨大なコストを伴うダムが治水にも利水にも不要であるばかりか,多大な環境負荷や地すべりの危険を持つことをデータで立証.地域がこれまでの断裂を乗り越え,歩むべき再生への道を模索する.



【おすすめ度◎】藤井良広『環境金融論』青土社, 2013年

環境金融の諸形態に関する概説書 環境格付け・ファイナンスの実例(滋賀銀など) 環境リスク 資産除去債務と環境会計 環境クレジット・ファイナンス 環境保険の展開 新たな環境金融市場づくり 紛争鉱物

出版社ページより引用「「環境」と「金融」の出会いが、未来を変える! いま環境をめぐる問題を考えるうえでのあたらしいスタンダードとなりつつある「環境金融」の理論を最新の具体例をあげながら解説。環境関連のビジネスにいかに金融ニーズを結びつけるか、そして、グローバルな環境問題の解決のためにいかに継続的な仕組みを構築できるか。環境税の課題から、環境金融商品の長短、企業の環境対策の意義、そして環境経済学との違いまで、すべてを網羅した決定版にして入門書。」


【おすすめ度○】可児滋『環境と金融ビジネス』銀行研修社, 2011年

「環境金融」の良い教科書的な本 良い本だがやや古いので☆ではなく○にした 環境問題と融資 環境プロジェクトファイナンス 環境ファンド 環境と預金 環境とBIS規制 環境とディスクロージャー 原油取引と原油デリバティブ 電力自由化と電力マーケット 排出権取引と金融 天候リスクと天候デリバティブ

出版社ページより紹介を引用
「環境と金融の接点は時を追うごとに緊密なものとなり、環境リスクに配慮した金融、環境保全への取組みに資する金融がいま問われています。例えば、融資業務では環境リスクが信用リスク管理の重要なファクターの一つとなっています。すなわち、金融機関が融資するにあたって、それが対象企業にとって環境面でどのような関連を持っているか、環境負荷を増やすことにならないか、環境負荷削減のための投資か、あるいは環境の改善・保全の促進に資する商品・サービス開発・販売のための資金かを検討、審査する環境リスクアセスメントが重要視されているのです。そこで本書は、金融機関の行動ないし金融マーケットが環境問題の改善に向けて大きく貢献するために必要なものは何かを、環境と金融の接点から総合的に解説しました。次世代金融マーケットを担う人材の必携書です。」

【おすすめ度○】藤井良広『金融で解く地球環境』岩波書店, 2005年

環境金融の全体像を丁寧に説明している。良い本だがやや古いので◎ではなく○にした。著者は新聞記者だが、この本は学者風のスタイルで書かれている。保険 CSR 環境報告書 プロジェクトファイナンスなど

出版社ページから紹介を引用
環境政策・対策・保全活動を効率的に推進するツールとして,金融機能をどう活用していけばよいのか.環境・社会的要請を,金融システムを媒介にして市場メカニズムにどこまで乗せることができるのか.企業の環境事業活動の現状をどう捉えるのか……環境金融が関わる幅広い事象を紹介しながら,問題点と可能性を明らかにする.

■著者からのメッセージ
 本書は日本ではまだなじみの薄い「環境金融」の世界を紹介するものです.環境と金融はこれまで離れた存在でした.今も多くの金融人は環境問題には,個人的な関心はあっても,自らの業務と絡めてとらえている機会は少ないのではないでしょうか.
 しかし,地球温暖化問題のようなグローバル規模の課題に対して,効果的,効率的な手を打つには,最適な費用効果分析が必要です.金融が持つ融資,投資,保険などの機能はそうした分析に最適です.金融がはじく環境の「価格付け」を前提にして,どう行動するか.その選択は,我々人類みんなが問われているわけです.
 日本の金融機関は,バブル崩壊後,不良債権問題で苦しんできました.ようやくトンネルを抜けたばかりですが,金融本来の機能が「地球」に役立つことをもっと意識してほしい,もっと知恵を出してほしい,といった思いで本書を執筆しました.
 NGO,NPO活動で環境に関心を持つ人たちも,金融機関を遠ざけずに,いかに活用するかという視点も必要だと思います.環境と金融の出会いは,結構,魅力的なのです.


【おすすめ度○】原川洋之『市街地再生の構想と戦略』日経BP企画, 2008年

天王洲アイル開発や苫小牧駅前再開発の事例を取り上げ、事業者の立場から見た再開発プロジェクトの進め方を説明している。参考になることも多いが、とりあげられているのが成功事例なので、失敗例や問題点の掘り下げが少ないという印象はある。

出版社ページから紹介を引用
昭和の時代ににぎわった中心市街地を、法律に基づく支援を受けて再生しようとする取り組みが全国各地で見られる。その一方で、大型ショッピングセンターをはじめ、大規模な集客施設が郊外に立地する流れは止まらない。中心市街地に人を呼び戻す試みはこのまま成果を上げることができるのか、こうした問題意識の下、東京・天王洲の倉庫街をオフィス街に生まれ変わらせたり、大型ショッピングセンターやスキー場センター施設などを開発したりしてきた経験を持つ元商社員の筆者が「不動産開発事業とは何か」という原点に立って、中心市街地の再生に向けた持論を展開する。中心市街地の再生に向けた7カ条として、「背景を読み取り、構想と戦略を打ち立てる」「地区計画を利用するなど、全体計画を立てる」「合意形成では、原則論を徹底して説得する」「行政は基盤整備と財政支援の後押しで協力」「街には全体としての運営・管理が欠かせない」「街づくりの主役はあくまで地域住民」「中心市街地の再生は不動産開発事業」という点を打ち出し、開発事業を成功へ導くためには、事業全体を統括するプロジェクトマネージャーの存在が欠かせないと説く。

【おすすめ度◎】濱田武士『日本漁業の真実』ちくま新書, 2014年

日本の漁業がどのような状況に置かれているかをわかりやすく書いた良書 過ぎた競争がもたらした矛盾 海外水域の漁業の現状 資源管理の誤解とその難しさ 養殖ビジネスの可能性と限界 漁業の在り方と漁業たたきの問題 地域と漁業

出版社ページから紹介を引用
国境紛争・資源管理・TPP問題・地域衰退・就労者の激減…。漁業は現代日本を象徴する「課題先進産業」である。いまや漁獲量はピーク時の半分以下になり、約40年間で漁業就業者は3分の1にまで減っている。縮小し続ける日本の漁業に、なにが起きているのか?本書は、漁業の歴史とデータを紐解きながら、その現状と問題点を大胆に描きだす。知られざる日本漁業の全貌を明かす決定版!


【おすすめ度○】中村啓一『食品偽装との闘い』文芸社, 2012年

著者は農水省食品検査官の中心人物で、食品偽装摘発の現場の雰囲気が良く伝わってくる 雪印食品の産地偽装 食品表示の不正 ミートホープ ウナギの産地偽装(一色食品事件) 事故米問題(業者名公表の是非) 食品表示Gメンなど

出版社ページから紹介を引用
2002年に雪印食品の産地偽装が発覚し、“パンドラの箱”が開かれてから、ミートホープ、事故米、ウナギ偽装へと続いてきた食品偽装摘発の緊迫の舞台裏を、元農水省『食品表示Gメン』トップ自らが激白。省内の葛藤、内部告発、裏社会の恐喝、そして個人の苦悩……。そこには、食の信頼を取り戻すために、命を削る闘いがあった!




【おすすめ度○】安部司『食品の裏側』東洋経済新報, 2005年

もと敏腕食品添加物セールスマンによる食品添加物業界の内幕

出版社ページから紹介を引用
「廃棄寸前のクズ肉も30種類の添加物でミートボールに甦る。コーヒーフレッシュは水と油と添加物。元添加物トップセールスマンが明かす加工現場の舞台裏。知れば怖くて食べられない。」



【おすすめ度●】名和小太郎『ゲノム情報はだれのものか』岩波書店, 2002年

シンプルで要点を押さえた優れた本だが、技術的には古くなっている。 研究とビジネス 特許とは 生物特許の歴史 ゲノムの特許 ポスト・ゲノムの特許 社会の中の特許など

出版社ページより紹介を引用
植物,微生物,そして動物やDNAにまで対象を広げてきた特許.それはいま大きな問題を抱えている.DNA配列は人類共有の財産か企業の私有物か.自由な研究活動の妨げにならないのか.倫理に反しないか.今までの生物特許の流れを追いつつ,訴訟や論争をひきおこした問題を紹介し,ヒトゲノム時代の特許のあり方を考える.


【おすすめ度◎】山根裕子『知的財産権のグローバル化』岩波書店, 2008年

先進国の新薬開発vs発展途上国のジェネリックの対立を軸にした世界の知的財産権の動向を分析した力作 医薬品アクセスとTRIPS協定など。古いが優れた本。

出版社ページより紹介を引用
 医薬品研究開発の高度化が進むにつれ,知財保護はグローバル化し,WTOのTRIPS協定に至った.ところが同協定は,エイズ薬アクセスをめぐる南北問題をきっかけに,予期しえなかった変容をとげつつある.それは先端分野のイノベーションが全地球に与える恩恵をめぐる争いでもある.知財立国日本の政策課題は何か.
 バイオ創薬時代といわれる今日,研究開発の高度化とともに,知的財産権はグローバル化し,TRIPS協定が採択された.一方,国連ではエイズ薬のアクセスをきっかけに,知財保護の功罪をめぐって議論が紛糾した.本書は,同協定が修正されてきた過程をたどり,解決の糸口はどこにあるのか,知的財産権をめぐる対立の根源は何かについて考察する.一体化していく経済のなかで,グローバルな知的財産権保護制度が目指すべき「公益」とは何か.権利に固執するだけでなく,非効率な産業利益の推進に偏ることなく,知的財産権が,イノベーションを起こすためには,いかなる協力を打ち立てるべきか.

【おすすめ度◎】石山徳子『「犠牲区域」のアメリカ』岩波書店, 2020年

アメリカ先住民居住区での放射性廃棄物問題を中心的な題材として、アメリカの環境正義と先住民問題を扱っている。この問題が、「単純な二項対立でない」ことを強調している。

出版社ページから紹介を引用
核開発を牽引する「偉大な国」で、安全保障や経済発展のために犠牲にされ、環境汚染の最前線で生きるアメリカ先住民の人びと。「最大多数の幸福」を名目に、いかに彼らの存在が不可視化されてきたか。セトラー・コロニアリズムによる支配の構造と、それに対する粘り強い抵抗の歩みを、長年の調査をもとに描き出す。


【おすすめ度☆】下川哲『食べる経済学』大和書房, 2021年

農業経済学のわかりやすい教科書 内容:「食べる」と「食糧生産」 食料市場が社会をつなぐ 食料市場の限界 飢える人と捨てる人 避けられない自然の摂理 市場が効率的でも発生する問題 市場の失敗 政治的思惑が引き起こす問題 「人間らしさ」の難しさ 未来に向けて

出版社ページより紹介を引用
「食」が、私たち自身と世界にどんな影響を与えているのか、経済学の枠組みを使って、分かりやすく解説します!



【おすすめ度○】稲垣憲治『地域新電力 脱炭素で稼ぐまちをつくる方法』学芸出版社, 2022年

地域での発電事業を通じた「地域おこし」の実践例 脱炭素で稼ぐまちをつくる方法、国のエネルギー政策の現状、動き出す自治体エネルギー事業 地域新電力の分析など

出版社ページより紹介を引用
自治体エネルギー事業を地域発展につなげる
ゼロカーボンシティを宣言している自治体は679。その実現に向け、自治体や地域企業、住民が一体となって地域エネルギー事業に取り組むことで、脱炭素だけでなく地域内経済が循環し、雇用にもつながる。本書では自治体のエネルギー政策、地域新電力について豊富なデータや事例をもとに紹介し、その可能性や課題をまとめた。



【おすすめ度○】ビー・ウィルソン『食品偽装の歴史』白水社. 2009年

イギリス・アメリカの食品偽装との戦いの歴史を描いた面白い本 最初に化学的に食品偽装を追求したフレデリック・アークム、顕微鏡の利用を始めたアーサー・ヒル・ハッサル、ハッサルと協力した雑誌ランセットの取り組み アメリカ(ハーヴィー・ワシントン・ワイリー) 食品偽装かイノベーションか(バターに対するマーガリン、食品添加物の使用) バスマティ米とDNA検査の有効性など

Hontoより紹介を引用
食品偽装の歴史は現代社会の歴史でもある−。混ぜ物、偽装、保存料・添加物、遺伝子操作、偽牛乳事件など、食品をめぐる暗黒の歴史を徹底的に検証。英国で活躍するフードライターによる警世の書。



2022年12月17日土曜日

【おすすめ度◎】リチャード・ハリス『生命科学クライシス』白揚社, 2019年

生命科学分野における再現性の危機(論文に掲載された実験結果が、他の研究者によって再現できないこと)の原因を科学的側面と科学社会学(研究組織)面の両方から追及する興味深い本 生命現象自体の変動性(実験条件によって結果が変わりやすい) 動物実験と人間との差 細胞株の問題(他細胞の混入が多発) 統計手法の誤用 詳細データを公開しない慣習 いきすぎたインパクトファクター至上主義 ほか

出版社ページより紹介を引用
効果を再現できない医薬研究、約90% 捏造や改ざんよりも根深い、科学のタブーを暴く
  製薬企業が53件の研究を追試したところ、結果を再現できたのはそのうちわずか6件。
再現失敗率、約90%――
 命を救うはずの研究が、低すぎる再現性のために、無用な臨床試験、誤った情報、虚しい希望を生みだし続ける。ずさんな研究はなぜ横行するのか? その影響はどこまで及ぶのか? 改革は可能か?
 トップ研究者から、政府組織の要人、業界の権威や慣習に立ちむかう「反逆児」、臨床試験に望みを託す患者まで、 広範な調査・取材を基に、ひそかに生命科学をむしばんできた「再現性問題」の全貌をあぶりだす。

【次々と明らかになる、ずさんな研究の実態】
・乳がん細胞と黒色腫細胞を間違えて、1000件以上の乳がん研究がおこなわれた
・糖尿病や心臓病などの疾患との関連が報告された遺伝子の98.8%が、のちに関連が否定された
・実験の結果が出た後に、それをうまく説明できるように仮説を立てなおすことが横行している
・わずか数匹のマウスの実験結果をもとに、人での臨床試験がおこなわれた
・マウスで開発された敗血症治療薬150種類すべてが人では効果がなかった
……生命科学では、いったい何が起きているのか?」



【おすすめ度●】萩原伸次郎『金融グローバリズムの経済学』かもがわ出版, 2020年

農学部の学生にはやや難しいが、格差拡大や金融危機の原因をグローバルな視点から解説している教科書的な良い本 内容:格差社会の形成と世界金融危機の勃発 多国籍企業の誕生 国際資本取引の自由化の進展 アメリカの金融覇権 金融グローバリズムと格差社会の形成 世界金融危機はなぜ起こるのか 新自由主義時代の世界金融危機

出版社ページより紹介を引用
このメカニズムを知らずして世界経済は語れない!
今私たちは、アメリカ金融覇権の下、金融グローバリズムの資本主義世界に生きている。巨大金融資本は、新自由主義と相まって、世界経済と国民生活に深刻な影響をもたらしている。
本書は、その形成の歴史を解説し、巨大金融資本封じ込め政策と新自由主義との決別によって、格差社会と世界金融危機を乗り越えるルールある経済社会の創生を展望する。


2022年12月16日金曜日

【おすすめ度○】吉川祐介『限界ニュータウン』太郎次郎社, 2022年

開発に失敗して(というか、そもそも最初からまともに開発する気がなかったのではないかと疑われる)、荒廃する超郊外の分譲地の現状と問題点を分析している。都市問題や住宅問題に関心のある人は読んでみると面白いだろう。

出版社ページより紹介を引用
千葉県北東部には俗に「限界住宅地」「超郊外住宅地」、あるいは「限界ニュータウン」と呼ばれるような分譲地が数多く存在する。そのほとんどが1970年代半ばから80年代にかけて、投機目的で分譲されたミニ住宅地である。
首都近郊にありながら、交通利便性は悪く、生活インフラもあまり整っていない。
家屋よりも更地のほうが多く、住民の新陳代謝もあまり起こらない。
無住区画はどんどん荒れ地化していき、共同設備は劣化。住宅地は管理不全に陥っていく。
これは千葉県だけの問題なのか。
だれがこの状況を作っているのか──。
「限界ニュータウン」を訪ね歩きつづける著者が、その誕生から現状をたどり、利活用と未来を考える。

2022年12月6日火曜日

【おすすめ度◎】リチャード・エバーシェッド『食品偽装を科学で見抜く』日経BP社, 2019年

興味深く読める食品偽装を見抜くための科学的技法の紹介。食用油、水産物、牛肉、ミルク、スパイス、ワイン、野菜などの偽装の手口と対策 分析化学 同位体分析 タンパク質組成(プロテオミクス) DNA(ゲノミクス) メタボロミクス

出版社ページより紹介を引用
ニセ食品を見破るプロが、本物を選ぶためのスゴ技伝授!
食べ物をめぐる信じられないほど多様で複雑な状況のなかで栄養を取るために、わたしたちは製品のラベルに表示されている情報を信用せざるをえない。
もちろん、理解できるかどうかは話が別だ。しかし、実際にわたしたちにできる行動もある。この本を開き、食品偽装の世界では何が可能なのか、偽装はどう実行され、どのように発見され、どうしたらだまされずに済むのかを知ってほしい。そうして、賢い消費者になってもらいたいというのが著者たちの願いだ。

何を口に入れるのか、よい選択をしよう!
私たちが複雑きわまる食文化の中で暮らしている、という事実は否定しようもないがだからといって無力なわけでは決してない。
道路を横断する前に左右をよく見たり、日焼けから身体を守ったりするように、食品選びでもリスクを最小化するために、主体的に行動することができる。
食品中に含まれる化学物質は、食べれば身体の一部となる。
私たちは自分の身体に入れるものについて、受け身でいてはいけない。
食品生産・流通システムには私たちに決められないことがたくさんあるが、
何を口に入れるかは自分たちで決めることはできる。
よい選択をしよう!


2022年12月5日月曜日

【おすすめ度☆】吉次公介『日米安保体制史』岩波新書, 2018年

日米安保体制の歴史が概観できる。ただし「集団的自衛権」容認後の日米安保体制の大きな変化については掘り下げられていない(新書だから仕方がないが、それ以外の点でも基本的なことが述べられており、深い掘り下げはされていない)。内容:サンフランシスコ講和と日米安保体制の形成 日米「イコール・パートナー」へ 沖縄返還と70年安保 日米「同盟」への道 冷戦後の課題 安保体制の「グローバル化」 集団的自衛権と安保体制 など

出版社ページより紹介を引用
厳しい批判を浴びながらも長期間維持されてきたのはなぜなのか.今後の方向性を考えるための基本の一冊.
いわゆる「安保体制」はどのように形成され,変容・維持されてきたのか.日本の対米協力,米軍基地の運用,米軍基地問題をめぐる日米関係史の三つの要点を軸に,内在する「非対称性」「不平等性」「不透明性」「危険性」に焦点を当て,その全歴史をたどる.大きな転換点を迎えたいま,今後の方向性を考えるための基本の一冊.


2022年12月4日日曜日

【おすすめ度●】山本晴太・川上詩朗・殷勇基・張界満・金昌浩・青木有加『徴用工裁判と日韓請求権協定』現代人文社, 2019年

著者が弁護士なのでアカデミックなスタイルの書き方ではないが、いわゆる徴用工裁判について背景事情から日韓請求権協定の法解釈(の変遷)まで、全体像を知ることができる。 内容:韓国大法院判決を読み解く 背景事情 日韓請求権協定の内容と解釈 日韓両国の請求権協定解釈の変遷

出版社ページより紹介を引用
被害者の人権を救済するという視点からこの問題を捉え、救済策を考える。
日本の植民地主義のもと徴用工として働かされた韓国(当時:朝鮮)の人々に対し慰謝料を払うよう命じた、2018年10月の韓国大法院判決は、大きな波紋を呼んだ。日本国内では、「日韓請求権協定で解決済みの問題を、蒸し返すな」といった取り上げられ方が目立った。
 しかし、本当に請求権協定で「解決済み」だったのだろうか。
 今回の大法院判決を読み解き、請求権協定の締結過程やその後の解釈の変遷を調べると、日韓両国の政府や裁判所の態度が変遷し、その狭間で救済を受けられなかった被害者の苦闘が見えてくる。
 本書では、何よりも、被害者の人権を救済するという視点からこの問題を捉え、救済策を考える。
 戦時下にだまされて日本に連れて来られ、給料も支払われずに過酷な労働を強いられた13歳の少女。戦後、韓国に戻ってからも、日本で被った苦痛を忘れることなどできず、無償労働を強いた日本企業を相手に慰謝料の支払いを求めつづけました。そしてそれがようやく裁判で認められました。
 この問題は日韓両国の国家間の問題として考えられがちですが、何よりも一番考えるべきことは、過酷な被害を受けた彼女らが、13歳から今日に至るまで救済されずに放置されてきたということではないでしょうか。韓国大法院は彼女らの訴えをどうして認めたのか、判決を読み解き、考えてみませんか。

2022年12月2日金曜日

【おすすめ度◎】明日香壽川『グリーン・ニューディール 世界を動かすガバニング・アジェンダ』岩波新書, 2021年

グリーンニューディール、すなわち気候変動問題への対処を通じて社会全体を変革(ニューディール)していこうとする取り組みについてまとまった知識が得られる。内容:環境も経済も正義も 科学から政治へ 政治への期待と幻滅 エネルギー革命に乗ろうとしない日本 グリーン・ニューディールの考え方と具体的内容 日本版グリーンニューディール グリーンニューディールの課題 現世代と未来世代の豊かさと幸せをめざして

出版社ページより紹介を引用
気候危機の回避とコロナ禍からの回復を果たすには。米バイデン政権発足で加速する世界的潮流を徹底解説。
気候危機をもたらした社会システムをチェンジし、コロナ禍からのリカバリーとジャスティスの実現をも果たす――米バイデン政権発足で加速する世界的潮流とは何か。その背景、内容、課題を解説すると共に、「二〇五〇年カーボン・ニュートラル」を宣言したものの政府も産業界も対応が大きく遅れている日本のとるべき道を提言する。



2022年12月1日木曜日

【おすすめ度◎】阮蔚『世界食料危機』日経プレミア, 2022年

阮蔚『世界食料危機』日経プレミア, 2022年 ロシアのウクライナ侵攻による世界の食料供給への影響をはじめとして、現在の世界の食料問題をコンパクトにまとめている。内容:食肉の消費拡大が飢餓を生む 主食穀物を圧迫する畜産飼料生産 地球温暖化がもたらす食料生産の危機 バイオ燃料が生み出した農産物争奪戦 飢餓を招く大国の論理 アフリカ農業を壊した米欧の穀物戦略 化学肥料の争奪 日本の食料安全保障


出版社ページから紹介を引用
<<ウクライナ危機が浮き彫りにする飢餓の構図>>
■肥沃な土壌「チェルノーゼム」(黒土)が広がり、世界的な穀倉地帯を抱えるウクライナ。広大な農地を抱え、農産物の増産に力を入れてきたロシア。両国は近年、安価な穀物の輸出をとおして、アフリカやアジアの途上国を中心に数億人の食料を支えてきた。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻により「世界のパンかご」とも呼ばれる豊穣な地域は破壊され、世界の食料事情は一変しつつある。すでにアフリカ東北部では、4季連続で雨季に降雨がわずかしかない過去最悪ともいわれる干ばつが続き、1300万人が飢餓に直面するなか、輸入食料の高騰に直面。「第2次世界大戦後、目にしたことのないような大惨事を地域の農業と世界の食糧・穀物供給にもたらそうとしている」(WFP)。
■著者はこうした危機的状況が、両国の戦争状態解消によってすぐに正常化するとは考えていない。世界の食料生産は構造的な問題を孕んでいるからだ。脱炭素の動きを受けたエネルギー価格の高騰とバイオ燃料生産の増加、大国の都合による穀物の低価格輸出、温暖化による干ばつや洪水の多発、地下水の枯渇、新興国での食肉の増加など、解決が困難な問題が山積している。
■足元では、経済制裁による化学肥料の流通減に加え、原料高にともなう化学肥料の大幅値上げが続く。肥料の使用抑制が広がり、来年以降の収穫減につながりかねない。気候変動などの中長期的問題に戦争の災禍が加わり、世界の食料生産は複合危機に陥る可能性が高まっている。日本も物価の高騰だけでは済まなくなることが懸念されている。
■本書は、ロシアによるウクライナ侵攻を端緒に、眼前に広がる世界規模の食料危機とその複雑な背景、さらには日本の食料安全保障など注目のテーマを、一般には知られていない情報を盛り込みつつ読み解く。日本にできる貢献についても触れる。著者は、ウクライナなど世界各地での現地調査も交えてリサーチしてきたベテラン研究者。